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それじゃあ。

ドイツに笑って言おうとするのに、どうしてもいえなくて、うつむく。またすぐに会えるとわかっていても、どうしても、嫌だ。

さよなら、なんて。やっぱり笑顔ではいえない。

「イタリア?」
どうした?心配げな声に、何でもない、と顔を上げる。
でも、どうしても笑顔が引きつってるのか、心配げな表情は消えなくて。
「…ちょっとだけ、不安、で。」
ダメだね、俺。そう言いながら笑ってみせると、彼は瞬いて、小さくため息。
それから。

ごん。
「痛!」
拳骨が降ってきた。痛い、と頭を押さえる。手加減、はだいぶしてくれたみたいだけど。やっぱり痛い!
「馬鹿。…一人じゃないんだ。心配するな。」
「…うん。」
兄ちゃんがいる。俺達は、二人でイタリア、だから。わかってる。大丈夫だよ、ドイツ。そう言おうと口を開けて。

「それと!…あー…困ったことがあったら、どうしても解決できなかったら、俺を頼りに来い。」
大きな声に口をつぐんだら、ぐしゃぐしゃ、と上から押さえつけるくらいの力で、頭を撫でられる。
「迷惑じゃ、ないから。いつでも来い。」
「えっじゃあ明日でもいいいたいいたい…!」
「困ったらだと、言っただろうが…!」
ぎりぎりと締め付けられる頭にばたばたしながら痛いってばー!と訴えたら、やっと離してくれた。涙目になりながら見上げる。
ふい、とそらされる視線。

「…まあ、困ってなくても、節度を守ってなら、遊びに来ればいい。…仕事中は相手してやれんが。」
「行く行く行く!」
両手を挙げて主張すると、わかったわかった、と仕方ないやつだなとばかりに呆れた笑顔。

「じゃあねーえっとねー、明日遊びに来るから!」
うきうきしながら言うと、でこぴんされた。
「馬鹿、仕事を終わらせてからだ。」
「え〜…。」
やだなー…仕事ちゃんとするの疲れるんだもん…そう思ったのが顔に出ていたのか、ドイツが少し考え込んで。
「ちゃんと終わらせてきたら、そうだな、アプフェルクーヘンでも作ってやる。」
「ほんと!?やたー!俺がんばる!」
ドイツの作るお菓子食べたい!と言ったら、ちゃんと終わらせたら、だぞ?と言われて、了解であります隊長!と敬礼。

「…じゃあ、またね、ドイツ。」
「ああ。また、な。イタリア。しっかりやれよ。」
「うん。」

そう言って、最後に握手をして。
笑った顔は、うまく作れていたの、かな?
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