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…よくわかんなかったけど、ドイツが、俺の宗主国、になったらしい。
つまり、俺は今、ドイツのとこの召使い、ってことか。そんなの久しぶりすぎる…ってそれどころじゃなくて!

「…ええと、ポーランドなんて言ってたっけ…。」
あれ、ポーランドじゃないんだっけ?まあいいや。…たしか、元の世界に戻る、には。
「鍵の、欠片。」
そう、それがいるって言ってた。それに、一緒にいれば、いつか集まるって。…いつかっていつ?
「ヴェー…。」
ため息。不安で胸が押しつぶされそうだ。
…ドイツ。ドイツと一緒にいれば、いいの?…でも、それってすごく難しいと思う…。
だって役に立たないし。最初のころは投げられたり。したし。一緒にいたいって言っても。よくドイツに友達になろうよって言ったよな俺って思うもん。怖くなかったのかな?…なかったかも。友達になりたいってそれだけだったもんな…

はふ、ともう一度ため息。それから、よし!と立ち上がる。
「パスタ作ろう!」
思い悩んでるのなんて性に合わない!こういうときは料理とか作るに限る!だからパスタ!トマトソースのパスタ!
あ。でも鍋とか無かったらどうしよう。気付いて、ヴェーとキッチンに向かう。
がちゃり、と戸棚を開けると。
「…あ。」
真新しいパスタ鍋が一番前にでん、といた。他のところをのぞいても、パスタは作れるような道具が揃ってる。
冷蔵庫は、と開ければ、トマトにバジルにオリーブオイル!しかも封を切ってない。…あっ肝心のパスタは!?
しゃがみこんで戸を開ければ、そこにも封を切ってないパスタ。
…そういえばさっき、準備は完璧にしてある、ってドイツ言ってたっけ…。
何だかうれしくなって、よおし作るぞ!ととりあえずパスタ鍋を取り出した。


「何を作っているんだ?」
いきなり声をかけられてびっくりした。顔を上げると、キッチンをのぞきこむドイツの姿。
「パスタだよ〜」
にこ、と笑うとそうか、と少しほっとしたような表情。
「ドイツ仕事は?」
「……おまえ自分の立場わかってるか?」
呆れたようにそう言われて、ヴェ?と首を傾げる。
立場…立場?あそっか、俺ドイツの属国なんだっけ今…てことは敬語、使わなきゃいけないの…?えー苦手…後なんて呼べばいいんだろ…ドイツさん?ドイツさん!?今更?ああでもここでは今更じゃないんだっけうーん…
考えているとわかったわかった、と声。
「普通でいいから。…そんな困り果てた顔をするな。」
さっきより呆れた声。おそるおそる、ドイツ、と呼んでみると、何だ、と返ってきた。ちょっとほっとする。
「…ありがと。」
「いや。」
そういえばどうしたの?いや、水を。言われてちょっと待ってね、とコップに注ぐ。
「はい。あ、ドイツ味見する?」
「すまない。…いや。後の楽しみにしておこう。」
言われて、ぱちりと瞬いて笑う。
「じゃあ絶対おいしいの作るよ!」
ぐ、と手を握ると、それは楽しみだな、と笑ってくれた。

ドイツがまた仕事に戻っていった後、気合いを入れ直して、ソース作りに戻ろうと歩くと、ポケットの中に何か入ってた。
「…?」

中から取り出すと。
「何これ。……鍵?」
呟いて、あっ!と気がついた。



『鍵のかけら』を手にいれた!



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