.


「わあああ!」

がばっと飛び起きたら、そこは見覚えのありまくりな俺の家…
じゃ、なかったけど。安心してほう、と息を吐く。
シックな色合いのソファ。重厚な雰囲気を持った家具。…ドイツの家のリビングだ。
「俺寝ちゃったのかー…。」
まあいつものことだけど。仕事してるドイツ待ってて寝ちゃうのなんて。だってほったらかしにするドイツが悪いと思うんだ!
起き上がって、んーと伸びをする。そろそろドイツ仕事終わったかなあ。

『ここから先の世界は、君がいる世界に、似てるけど違う世界。』
「…そんなわけ、ない、よ。」
脳裏をよぎった言葉に、呟いて、うなずく。そうだ。ドイツと俺が、出会わなかった世界、なんて。そんなの。
…夢、だよね、うん。夢だ。ただの。
そう思うのになんだか不安が拭えなくて、胸が苦しくて、ぱっと仕事部屋に向かって駆け出す。

いつも通りの部屋。きっちりと閉められたドアの前に立って、ドアノブを握って開けそうになって、あ。ノック、と珍しく思い出した。
こんこん、と控えめに叩くと、入れ、と声。
その声だけでほっとして、ドアを開く。目に入る金色。書類に目を落とすドイツの姿。ああ、いつもどおりだ。大丈夫。

ドイツ、そう声をかけようとして、上がった視線に思わず、足を止めた。
「おまえがイタリアか。」
鋭く光る青は、俺のよく知ってる、優しいドイツのじゃ、なくて。
まるで、初めて会ったころの、ような。

『君が、一番好きな人が、君に出会わなかった、世界。』
嫌な予感が、確信に変わる。


「俺はドイツ。今日からおまえの宗主国だ。」
…何、どういう、こと…?



次へ