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白にしよう。

そう決めてちくちくと縫う。…までに時間かかった…。針に糸は入らないし糸は絡まるしボタンはどっか転がっていっちゃうし(なんとか見つけたけど)。
それでやっと縫いはじめたはいいけど…

「うう…」
うまくできない…。

そりゃあ、あまり経験がないのだから、当たり前といえば当たり前なんだけど…。
元々不器用だし、それに僕はただでさえ時間がかかるから。慎重にやろうやろうと思えば思うほど、どんどん時間が経って、焦って。ただボタン縫い付けるだけなのに!
そんなことを思いながら針を刺したら。
「痛っ!」
指に刺さった…もう…じん、と痛む指を見る。血は出ていない。ならいいか。とシャツを抱え直す。

深呼吸、ひとつ。ちょっと落ち着こう。フランスさんのなんだから、大失敗とかしたくない。下手なんだから、時間かかったってゆっくり丁寧にやればいいじゃないか。そう自分に言い聞かせて、目を閉じてもう一度、深呼吸。
「…よし。」
もう一度、輝く針の先を、見つめた。


「ふ、らんすさん、えっと、これ…」
おそるおそる差し出すと、お。できた?とフランスさんは嬉しそうに笑った。ああそんな顔しないで、そんな期待しないで!
そう思いながら、自分の手を離れて彼の手に渡るシャツを見つめる。顔なんて上げられない!
彼は、僕がつけたボタンを見て、裏返して縫い目も見て。
思わず、ごめんなさい、下手で、と声をかけたら、何で謝るんだ?と不思議そうな声。

「顔上げて、カナダ。」
そう言われておそるおそる顔を上げると。
「ありがとう。一生懸命やってくれたんだな。とても嬉しいよ。」
そう優しく微笑んでくれて。
ほっとして、でもなんだか恥ずかしくてむずむずしながら頬を緩めると、あれ、とフランスさんが僕の手をつかんだ。
「どうしたの、これ」
「あ…」
さっき針で刺してしまった指だ。刺したときはどうもなかったのに、今になって血がにじんできている。
「ちょっと刺しちゃって…」
平気です。そう言って手を引こうとしたら、顔が近づいてきて。

べろり、と指を。

「!?!?!?」
かっと一瞬で顔中、と言わず体中が熱くなり、何にも言えなくなって固まってしまう。
ちゅ、と傷口に軽くキスして離れた彼は、血は止まったかな。と言いながら僕の顔を見て、噴き出した。

「なんて顔してるんだ、カナダ!」
「〜っだって、フランスさんが!」
「俺はただ消毒しただけ、だけど?」
からかうような声色と、その後に続いた笑い声に、恥ずかしいやらなんやらで、もう、フランスさん!と思わず叫んだ。

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