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…あ。
光にきらりと反射して見つけた、小さなそれに見覚えがあってしゃがみ込む。
「…これ、」
「どうかしたのか?」
前からの声に顔を上げる。書類を片手に持ったフランスさんの姿。…やっぱり!

「ふ、フランスさん!」
「何?」
「脱いでください!」
青い瞳が、まん丸になって、それから楽しそうに細められた。

「積極的だなぁカナダ…そういう子もお兄さん大好きだよ?」
「…へ?あっ、や、そういうのじゃなくって!」
ぱたぱた手を振るのに遠慮しない遠慮しない、ってああもうほんとに脱ぎ出さないでくださいよ!

「腕!」
「腕?」
ここ!と左手の手首のあたりを指せば、ん?と見てくれた。
「あらま。」
シャツのボタンが、一つなくなっているのだ。糸がひょろりと出ているだけで。フランスさんはボタン閉めないで着るから、気づかなかったみたいだけど、朝からずっと。
そのボタンを、今拾ったのだ。

「これ、ですよね?」
「ああ。縫いつけとかないとな…」
やれやれ、とため息をついた彼に、やりたいです!と言ってみる。
「…これ?」
シャツを指されてこくり、とうなずけば、じゃあお願いしようかな、と言ってくれた。やった!と思いながら笑う。
この間やってもらったから、そのお礼に。
縫い物は…あんまりしないけれど、でも。

『危ないから触っちゃダメだぞ』

幼い頃、そう言いながら僕の服を縫ってくれた彼をしっかりと覚えているから。
大丈夫。できる。…と思う。


さて、と。シャツを受け取って、ボタンと、裁縫道具を抱えてどうしようかな、と思う。
何が、かというと、糸。
ボタンと同じ黒、で縫うか、シャツの色に近い白、で縫うか。
どっちでも大丈夫だと思うんだけど…うーん…
どっちにしようかな?



黒にしよう
白にしよう