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ケーキ作る前に下拵えしておいたのが幸いしたのか、夕食作るのも何とか間に合って。
そこそこ、のできなんじゃないかなあ。と思っていたのだけれど(だって焦げてないし。生焼けでもないし。)、やっぱりちょっと不安で。

「うん!上手だな、おいしいよ。」
でも彼はもう手放しで誉めてくれた!
「ほんとですか?」
「もちろん!」
俺この味好きだなあ。だって!うれしくなって、はにかむように笑う。
「あれ、カナダは食べないの?」
「あっ、食べます」
ついついフランスさんの反応が気になって、つい自分の手が泊まってた。
フォークヘ手を伸ばすと、つ、と目の前に差し出されるフォークに乗った料理。
「あーん。」
「!じ、自分で食べれます!」
「いいじゃんいいじゃん照れない照れない」
そんな目の前で笑わないでくださいよ!かっこいいなあ…
「ほら、カナ。」
うながされて、ゆっくり、口を開ける。
優しく運ばれてむぐむぐ食べると、目の前に楽しそうな顔。
「おいしい?」
「…まあ」
味なんかわかんなったけど、そう答えるとくすくす笑われた。もう!

食べ終わって片づけをしていると、背中に視線。
「何ですか?」
「うーん、いいなあ、と。」
「何がですか?」
顔を上げると、小さな笑み。

「こんなにかわいいカナダが。是非お嫁さんに欲しいよ。」
「ありがとうございます」
いつもの冗談だと聞き流して。
「冗談じゃないよ、ほんとうさ。」
愛しいカナダ。
その声が、冗談みたいな軽いものには聞こえなくて。
「え。」
思わず声を上げ、彼の顔を見ると、彼は、やば、とばかりに、口元を押さえていた。
「ふ、らんす、さん…?」
「あー、いや。その。」
…どうしようかな、と困る彼に、あれ。あれ?どうしてそんなに困る必要があるの?フランスさん?
だってそれじゃあ、愛しい、と言ったそれが、それの含む意味が。
友愛でなくて、恋愛みたいじゃ、ないですか!

「…言う気、なかったんだけどな。」
本気になるまえに、手放すつもりだったんだけど。
そんな風に、…言われたらまるで、ねえ、期待してもいいんですか?

近づいてくる彼を、真っ赤になって、動けずただ見上げる。
彼はまだ、困ったような笑みを浮かべたまま。
「好きだよ、カナダ。…家族、とか属国、じゃなく…恋人になりたいんだ。」
ダメ?頬に触れる手は温かくて、…夢じゃない、みたいで。
「う、そ…」
「ほんと。…しかも困ったことに、相当本気。」
だから、離せなくなる前に手放そうと思ってたんだけど…無理そうだ、ごめん。
「それで?返事は?」
こつんと額をぶつけて言われた。…知ってるけどって顔しないでくださいよ、もう!
「僕も、大好きです!」
そう言って抱きついた。

そのとき、きん、と小さな金属がぶつかるような音と。


扉が開く、音がした、気がした。