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なんだか体の上に重いものが乗っている。
そんなに苦しくはないんだけど、自由が利かない感覚が嫌で身じろぎしようとするけれど、体は動かなくて。
なんだろう、と体を固定するものにぺたぺた触れる。暖かくて、柔らかいけどがっしりしてて…もしかして。

ゆっくり、と目を開ける。眼鏡がないからぼやけてるけど…腰に巻き付いた、肌色。人の腕、だ。
顔だけで後ろを振り返ると、眠る彼の姿。
「フランス、さん。」

僕がうつ伏せがちに眠っていたからか、ほぼのしかかるような体勢。そりゃあ重いわけだ。
小さく笑っていると、ぴく、と瞼が動いた。
ゆっくり開いていく瞼。それと一緒に、しっかり回されていた腕が少し緩んで。
彼の体がベッドに戻っていって、ようやく自由の戻ってきた体を捻り、彼の方を向いた。
「おはようございます、フランスさん。」
「んー…おはよ、カナ。」
柔らかい笑み。ああ、やっぱり好きだな、と思って。

…好き、好き?あれ、そういえば僕、告白して抱きついて…?
「あれ?」
ぱちぱち瞬いて、首を傾げる。ベッドに入った記憶がない…いや、いや、ある。扉が開く前、なんだかわけのわからないことが始まる、その前、に。
じゃあ、あれは。あの、僕のこと知らないフランスさんと過ごした日々は。
「…夢…?」
「何だ、長い夢でも見た?」
尋ねられ、ため息をついてうなずいた。
長い夢、長すぎる、夢。ああ。そうか夢だったのか。…そりゃあそうだよなあ…他の世界で、フランスさんは僕のこと知らなくて、なんて…。

「どんな夢?」
優しい声に、顔を上げる。のぞきこんでくる綺麗な青。ふわりと彼の、においがした。
どんな、夢。うーん…説明、しづらいけど…
「フランスさんの、出てくる夢、です。」
答えると、うれしいねえ。夢の中でも俺のこと思ってくれてたの。だって。
一度緩んでいた腕がまた、抱きしめてくる。その強さにすり寄って。

「夢の中のお兄さんはかっこよかったかい?」
おどけて言われたセリフに、目の前にいる方がかっこいいです。と笑ってみせた。


『いつも一番は目の前に』End!



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