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「…う…」
うめいて、ゆっくり瞳を開く。まぶしい。今何時だろう?片手で目をこすり、時計、そのまえに眼鏡、ともう片方を動かす
「起きた?」
何か声が聞こえた。そう思って、そっちを見る。目と鼻の先に、何かあった。肌色の、後、青の。
…人の顔、だよなあと、考えるけど寝起きの頭ではうまく考えられないし眼鏡無いからよく見えない。
しばらくぱちぱちと瞬いて、おはようございます、ととりあえず言ってみる。
すると、ぶはっと噴き出した。


びっくりして今度こそ完全に意識が覚醒した。…あれ、この声、フランスさん?何でフランスさんがいるの!?
「のんびりしたやつだって聞いてたけど…まさかここまでとはなあ。」
ソファから体を起こすと、はい、眼鏡、と差し出されて、ありがとうございます、と受け取ってかける。立ち上がった彼を見上げる。鮮やかな金髪と楽しげに細められた青い瞳。…フランスさんだ、間違いなく。
久しぶりに会う姿は、変わらず元気そうでよかった、とため息をつく。
そして、お久しぶりです、と声をかけようとしたら、先にフランスさんが口を開いた。


「初めまして、だな。」
「……え?」

思わずつぶやいたら、あれ、前に会ったことあるか?と不思議そうな顔。…え?何言ってるの?
混乱した頭にふとよぎる、夢でアメリカが、(あれ、アメリカじゃないんだっけ?)言った言葉。


『ここから先は、君の愛しい人が君と出会わなかった世界。』


…まさか。本当な訳ない。
そう思いながら彼を見上げる。…いぶかしげな、顔……まさか、そんな。
さ、と血の気が引いた。冗談だと、否定してくださいよ、フランスさん、ねえ?

「…ああ。そうか。初対面じゃないな。悪い。」
そう言われてほっと息をついたら、ずい、と顔をのぞきこまれた。囲い込むように両手がソファの背もたれに伸ばされる。
「え。」
「こんな可愛らしい子に、夢とはいえあったこと忘れてたなんて…愛の国失格だ。ごめんな。お詫びに熱いベーゼを受け取ってくれ。」
甘く囁かれて、近づいてくる顔に思わず声を上げて突き飛ばした。
どさ、と音を立ててしりもちをつくフランスさんから、離れて部屋の壁に背中をつける。

今のセリフの後半聞いたことある!ごめんな、お詫びに〜って!からかい半分に他の人に言ってるの何回も!
僕には言わないんですねって聞いたら、うーん…反応おもしろいやつからかう用だからなぁ…カナダには言う気にならないよ、って言ってたの、に…。

今目の前にいるこの人にとっては、僕も、他の人たちも一緒、なんだ。そう悟って愕然とする。


「逃げられちゃった。」
残念。と明るいセリフ。これから一緒に住むから、仲良くしときたいのになあ。と、続けられて、は、い?と思わず呟いた。
何?一緒にすむ?
「そうだ。…おまえは、俺の属国になったんだよ。」
その言葉に、くらり、と。
意識が回って、暗くなった。

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