「…ちょっと甘さ控えめで…。」 うん。僕の基準で作ったらきっと、甘すぎるだろうし。 砂糖の量を減らすことにして、手を進めた。 「いただきまーす」 「ど、どうぞ。」 僕が作ったケーキを口に運ぶフランスさんをじっと見ていると、口に近づけかけた手が止まった。 「そんなに見られてると食べづらいんだけどな。」 笑いながらの言葉にす、すみません、と謝る。だって怖いんだ、どんな反応が帰ってくるか! 「そんなに緊張することじゃないぞ?」 「だ、だって…」 …ちょっと失敗もした、し。うまくできてないかもしれないし。…味見はしたけど、食べれたけど、そりゃあフランスさんの作るのの方がおいしくて。 考えていると、ぱっと手が動いた。口に入るケーキに思わずあ!と声を上げる。 もぐもぐと咀嚼するフランスさんは、何も言ってくれなくて。 「…ど、どう、ですか…?」 意を決して聞くと、真剣な視線が返ってきて、思わず背筋を伸ばした。 しばらくの沈黙。 「…ぷっ」 いきなり噴き出した彼に、ぱちぱち、と瞬いて。 はじけるような笑い声をしばらく聞いて、やっと笑われてる、と気づいて笑わないでくださいよ!と叫んだ。 「だってあんまり真剣だからさあ…!」 「もう!」 声を上げたら、おいしいよ、と静かな声。 「え、ほ、ほんとですか?」 「ああ。もちろん。」 本当においしいよ。言いながらもう一つ。まっすぐな視線が、本当、っぽくて。 ほっと息を吐く。 「よかった…」 「大丈夫だよ、普通に料理上手なんだから。」 お兄さんが教えたんだから、絶対!ばっちりウィンクしてそう言われて、ありがとうございます、と微笑んだ。 ふ、と、手の中に感じた重み。あ。これ、知ってる。 『鍵のかけら』を手に入れた! 次へ |