「メイプルシロップ入れたらおいしいかも。」 うん。いいかも。ケーキが甘いのはいいこと、だし。 よし、と笑って、砂糖の代わりに、甘いそれに手を伸ばした。 ぱく、と口に消えるそれを見送って。 「うん、おいしいおいしい。」 ちょっと甘いけど、と言われて息をついた。 「よかったあ…」 「上手になったな。」 にこりと笑って言われ、ありがとうございます、とお礼を言う。ちょっと照れる。 フランスさんは、フォークをケーキに沈め、もう一口、口に運んで。 「…ふむ。これ砂糖じゃないな?」 メープルシロップ、かな。視線で尋ねられてこくん、とうなずく。 「…まずかったですかね…?」 「いや?ただ、せっかくの香りが飛んでしまってるのはもったいないなあって。」 「あー…そうですね…。」 「入れるタイミングか、いっそのこと上からかけた方がいいかもなあ。」 「なるほど…」 ううん、難しいんだなあ。考えていると、奥が深いだろ?と楽しそうな笑顔。 「ま。少しずつなれていけばいいのさ。」 困ったらいつでも言えばいい。電話でもなんでも、アドバイスならしてあげられるからさ、と優しい声。 優しい、んだけど… 電話、か。それは、これから二人の間に横たわる距離の象徴のようで。 「ありがとう、ございます」 沈みそうになる声をなんとか保って、微笑んで見せた。 次へ |