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※この話は、ロマーノが生まれつき女の子なお話なので、苦手な方はご注意ください。



どん、と足元にぶつかってきたのは、小さな男の子だった。

「う、わ。」
「っと。」
バランスを崩しかけたところを、スペインに支えられて事なきを得る。
「大丈夫か?」
「う、うん…ありがとう。」
よし、ちゃんとお礼言えた。とか思っているうちに、スペインの興味は、ぶつかってきた男の子の方に移っていた。
「だいじょぶか?立てる?」
スペインがしりもちをついてしまった少年に話しかけると、少年は、一瞬びくっとして、いきなりうああああと泣き出した。
「な、何!?」
慌てていると、あー、ごめんな、びっくりしたな、とひょい、とスペインが抱き上げる。
「なんも怖くないから。泣かんでええよ?な?」
平然とあやす様子が、ものすごく手馴れていて、そう言ったら、そら泣き虫なわがまま娘ひとり育てたからなあ、と返ってきた。それは私のことか!!

「な、泣き虫じゃない!」
「嘘や〜。ことあるごとにわんわん泣いとったくせに。」
からかうような口調に、にらみつけると、ひく、と肩を震わせた少年と、目が合った。
なんだか、幼い頃の弟を見ているような気分になって、手を伸ばして、よしよし、と頭をなでると、その伸ばした手をぎゅうう、とつかまれた。
「な、何よ、バカ!」
慌てていると、のんびりとスペインが言う。
「あー…気に入られたみたいやね。」
ほい、と軽々しく子供を渡されて、おそるおそる抱き上げてみると、何故だかしっかりしがみついてきて、どうしていいやら困ってスペインを見上げると、やっぱ女の子がええんやねーとかうれしそうにこっち見てて。

「す、スペイン。」
「大丈夫大丈夫。落とさんようちゃんと抱いとったらええから。」
うん、とうなずいてしっかり抱え直したとき、小さい声でまま、と呼んだのが聞こえた。
そういえば、と見渡すが、親らしき姿は見えない。
「…迷子?」
「みたいやね」
どないする?と聞かれて、こんな小さい子放り出すほど鬼じゃない、と言ったら、さすがロマーノ、と頭をくしゃくしゃなでられた。

近くの公園からきた、というその子の親を探して、公園までやってきたが、それらしい人は見つからない。
降りたがらない、むしろしがみついて離れない少年を抱き上げたままの私に代わって、スペインが公園にいる人に聞いて回ってる。
その後をゆっくり(じゃないと体力がもたない)歩きながら、ながめる。
…他人のことに、あそこまで必死になれるのも、スペインのいいところだと、思う。
滅多に見れない真剣な表情に、少し表情がほころんで。

ぐう、と音がした。


「…。」
「…おなかすいた」
見下ろすと、じいい、と大きな瞳が見上げてきて、あー、とあたりを見回すと、すぐ近くにチュロスの売ってる店を発見。
スペイン、と呼びかけて、結構離れてしまった距離に、やっと気づいた。でもまあ、そのうち気づくか、と、チュロス食べる?と尋ね、こくん、とうなずくのを見て、そっちに向かって歩き出す。
屋台のおじさんに、チュロスを三つ(一個はスペインの分であって別に二つも一人で食べるつもりはまったくない!)頼んで、チュロスを受け取るときになって、ようやっと降りてくれた少年に、かなり腕がしびれているので、すごいな、母親って、と思っていると、んん?とおじさんが少年を見て首をかしげた。

「どうかした?」
「…その子、」
「!知ってるの!?」
迷子になってたんだと話すと、ああ、じゃあやっぱり彼女の子か、と言うので、彼女って?と勢いづいて聞く。
「さっき、この子探しとって…ああほら、あそこ。」
ひょい、と指差されて振り返ると、そこには、確かに誰かを探している女の人がいて、その近くにいたスペインを大声で呼んでその人、と指差すと、(まったくこういうときの勘はいいんだから…)その人をつれてきてくれた。

「ママ!」
ぱっと駆け出すその子が、同じく走ってきた女の人に抱きつくのを見て、ほっとため息をつく。
それから、受け取るのをすっかり忘れていたチュロスをおじさんにもらって、お礼を言って、あの子のお母さんと話すスペインの方へ歩き出す。
「本当にありがとうございました。」
「気にせんといてください。」
スペイン語を聞きながら、お母さんに、私にしていたみたいに(それより強い、かな)ぎゅう、と抱きついた少年の前に、しゃがみこんで、チュロスを出す。
「はい。」
そうしたら、お母さんにすりつけていた顔を上げて、へにゃ、と笑った。
「おおきに、お姉ちゃん。」
うれしそうな笑顔に、よかった、と微笑むと、お母さんが、こっちをむいて、

「奥さんも、ありがとう。」
と言った。

奥さん!と衝撃を受けてぴし、と固まっていると、それじゃあ、と親子は背を向けて、ちょっと歩いてから、男の子が走って戻ってきた。
「、どうか、した?」
何とか衝撃を振り払ってそう尋ねると、ちゅ、と左右の頬に一回ずつキスをして、じゃあね!と元気に走っていった。
「…かわええなあ。」
スペインの声が聞こえて、上を見上げて、また、さっきの奥さん、と言われたときの衝撃が戻ってきた。
かああ、と体中が熱くなる。
「…ロマーノ?どないしたん?」
疲れた?としゃがみこんでくるスペインの顔が見れなくて、顔をそらしながら、聞いてみる。
「……ふうふに、見える、のかな、」
「ん?」
「だって、奥さん、って…。」
「…嫌やった?」
頭をなでられて、首を横に振る。まさか!嫌だったんじゃない。ただ、びっくりして。
今までは、妹とか、小さいころには、娘さんですか、なんて言われて、え、俺そんな年に見える?とスペインがショックを受けていたことさえあって。
なのに。

…奥さん、だって。

にやけて止まらない頬を、元に戻せなくて、困る。
「…俺は、いつでも準備できてるで?」
なあ、俺の未来の奥さん?なんていきなり言われて。
「…だから三食昼寝とパスタ付きだったら考えるってば、バカ。」
なんとかそう返すと、えー、と抗議の声。
「たまにはロマーノの手料理食べたい〜。」
……別にたまになら作ってあげてもいいんだけど。そう思って、少しだけ考えて、それを口にする。
「……じゃあ、」

その後。
いつになく、かっこいい服を着たスペインが、かわいらしいワンピース姿のロマーノに、大きな薔薇の花束をプレゼントして、(大きすぎだバカ!と家に置きに帰るハプニングはあったが)一緒に映画を見て、それから海を散歩して、お洒落なレストランでディナーを食べて、実は、もうとっくの昔に用意しててん、とシルバーリングを差し出して、俺と結婚してください、とプロポーズをした、その返事は。


二人だけの秘密。


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2222hitリクで、先天性女体化なロマーノの西ロマでした。
ロマーノが奥さん、て言われておおおお奥さん!?ててんぱってるのが書きたかっただけです。

こんなんですが、気に入っていただけたらうれしいです
リクエストありがとうございました!

















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これは、先天性女体なロマの西ロマの話です。苦手な方はご注意下さい。





『じゃあ、もう一回、プロポーズして。それが、気に入ったら、……(超小声)結婚、か、考えてやってもいいわ!』

そう言ったのは、このあいだのこと。
わかった、と真剣に言ったスペインは、しばらく私を呼ばなくなって、不安になっていたら、いきなり電話がきて、『デートせえへん?』ときた。どきどきした。 だってそのあとでスペインが、『やっとロマーノに気に入ってもらえそうなプロポーズ方法思いついてん!』なんて付け足すから!

ついつい、新しい服買って、スペインに会うときは滅多にしない(だってしたって気づきやしない)化粧をして、待ち合わせ場所に向かった。待ち合わせ、というのも初めてだ。だいたい、どっちかの家に行って、そこから出かけるし。

化粧に時間をかけてしまって、待ち合わせ時間をちょっと(30分くらい)遅刻してしまった。まあでも別に、気にはしない。だってスペインだし。先になんて来ているわけがないし。見慣れた街並みをゆっくり歩く。
なのに、待ち合わせ場所には、すでにスペインが、いた。
というか、スペイン…だよ、ね?人違いか、と思うけれど、ずっと一緒に暮らしていたんだ。今更見間違うわけもなく。
見たことのないようなちゃんとした服を着て、花束を持って立っている。…正直、ちょっと、かっこいい、かも。

そんなことを思いながら立ちすくんでいると、スペインがこっちを向いた。途端に浮かべるへら、とした笑顔がいつも通りで、なんだか少しほっとする。
「おはよーさん、ロマーノ」
「おはよう。…いつから、待ってた?」
「えーと、待ち合わせ時間のちょい前くらい?」
待ちきれへんかった、と笑うスペインに、瞬いた。あのスペインが待ち合わせ時間までに来た?
「明日は雪か槍か…」
「それちょっっとひどくない?」
日頃の行いが悪いからよ、ばか。と返すと、それもそうやね、と困ったように笑った。
「あ、そや。はいこれ。」
ばさ、と渡されたのは、手に持っていた大きな花束。真っ赤な薔薇だ。両手で抱えきれないくらいのそれに、思わず絶句して、なにこれ、と尋ねる。
「薔薇の花束」
「いやそれは見ればわかる」
問題はその大きさだ。いくらなんでも大きすぎる!これから出かけようというのに、ものすごく邪魔だ。
そう指摘すると、あ、そうか!と今更気づいた顔をしていた。まったくもう…
「…置きに帰ろか」
ちぇー、カンペキな計画立てとったのに初っぱなから崩れたわ〜
そう、悔しそうに言うスペインの隣を、花束をもったまま歩く。
「…何でこんな大きさにしたの?」
スペインを見上げると、ん〜?と、のんきな声。
「ああ。少しでもロマーノに俺がどれだけ好きかが伝わるとええなぁって。」

かあ、と頬が熱くなった。不意打ちはほんとにやめてほしいのに!もちろん、こんなに小さいわけもないんやけどな、なんて笑ってる本人は知りもしないだろうけど!

薔薇の花束はとりあえずスペインの家において、デートを再開する。
前から見たかった映画を見て、昼ご飯を食べて。

昼から、どこにいくのかと聞いてもまあええからええから、とつれて来られたのは、昔よく遊びに来た海だった。
「昔ようここで一緒に遊んだの、覚えてる?」
こくん、とうなずく。
あまり…いい思い出はないかも、しれない。例えば、せっかく素直になったのに全然聞いてなかったとか、告白したのにそれをトマトが、だと勘違いされたり、スペインが逆ナンされて泣きそうになったり、……本当に悪い思い出ばっかりだな…
でも、小さい頃はここから夕日を眺めるのが好きで、よく連れてきてもらった。
スペインは、トマトみたな夕日やな、と言うけれど、私はずっと、スペインみたいな夕日だと思っていた。
明るくて、まぶしくて、直視できない輝き。
それが、同じだと思っていた。
だから、好きだったのかもしれない。
ここから眺める夕日は、まるでスペインに抱きしめられているよるに感じさせるから。
…だから、ながらでも、妹のついででも、結婚の約束をしたときはうれしかったし、スペインがそれを覚えていたときも、…まあそれはついでだったのが嫌で、いじわるな条件付けたけど、それでも、うれしかったのはうれしかった。

ああ、私、本当にスペインと、けっこん…

「あ、ロマーノ覚えてる?イタちゃんと三人で海来たとき!」

…私、本っっっっ当に!こいつとでいいのかしら!?

デート中に他の女の名前を出され、かつ、三人で出かけて、なのに妹に構いっぱなしのスペインにキレて一人で遊んで、挙げ句の果てに私を忘れて帰って行くところだった(イタリアが指摘して事なきを得た。)嫌な思い出を思い出してしまって、むかむかしながら、ロマーノ、何怒っとるん? なあ〜と声をかけてくるスペインを完全無視で道をずかずかと歩く。

ああもう!KYも大概にしなさいよほんとにもう!馬鹿馬鹿バーカ!

ひとしきり怒って、やっと気が済んで、スペインと、レストランに向かう。
なんだか行ったことのない雰囲気に、少しおびえてスペインの服の袖をつかむと、しっかりと手を握ってくれた。
「大丈夫やで」
にこ、と笑って言ってくれるのが、かっこよくて、顔を伏せて、きゅ、としっかり握った。

料理は、もう本当においしかった!ぺろっと食べてしまった。あっというまに時間が過ぎた。さっきまで不機嫌だったことなんて忘れるくらい!
「幸せそうやねえ」
「悪い?」
「全然!俺好きやもん、ロマーノの幸せそうな顔。」
にこ、と笑うその顔の方が幸せそうで、少し恥ずかしくなる。
うつむいていると、ロマーノ、と呼ばれて、顔を上げる。
光る、何か。…指輪?
「実は、ずっと前に用意してあったんやけど。」
渡されへんでここまで来てもうたな。
そう言って、つい、とテーブルの上をすべらせてくる。

シンプルな、シルバーリング。
細かい細工なんかはないけれど、文字が入っていた。スペイン語とイタリア語で、愛しい人へ。

「…俺と、結婚して下さい。」

たった一言。それが、本当にうれしくて!
ぼろぼろと涙が止まらなくなる。
「んー…ロマーノは泣き顔も綺麗なんやけど、笑ってほしいな」
泣かせたいわけやないねん。なんていうけど、だって、スペインが。
ああ、絶対メイク落ちてひどい顔になってる!なのに、スペインは、ロマーノは何してても綺麗やね、なんて、言うし。
「ロマーノ、俺のプロポーズは合格?」
にこ、と笑顔。

空気読まないし、基本貧乏だし、未だに子供扱いしてくるし、そんなスペインだけど。
…そんなスペインだからこそ。

「ギリギリ合格。仕方がないから結婚してあげるわよバーカ!」
泣きながら、それでも笑って見せて、左手を差し出すと、スペインは薬指にキスをして、指輪をはめてくれた。

「大好きやで。ロマーノ」
「私だって…すき、よ」

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3000hitリクエストより柚葵様のリクエストで「どうぞよろしく、の最後部分」でした。
プロポーズ!とテンション高く書きました!ちょっとロマの口調とか定まってなかったりするかもですがご勘弁を…

こんなですが、少しでも気に入っていただけるとうれしいです。
リクエストありがとうございました!