※自分設定による学園パロディなのでご注意ください。



五限、音楽

澄んだ歌声が、2つ。
ピアノに合わせて奏でられるそれは、最後の一音を響かせて。
わあ、と歓声。拍手。
「はい、見本ありがとうございました。ですが、ロマーノ、やると決まったのなら最初からやる気を出してくださいね。後半の伸びはいいですが、前半ぼろぼろでしたよ」
譜面を片付けながら、オーストリアが言うと、ロマーノは明らかに面倒くさそうに、返事をした。
「…ふあい」
「返事ははい、でお願いします」
「…はい」
「それとハンガリー、あなたは二回目の繰り返しのところが苦手ですね?」
ここから、ですが、と手に持った楽譜を指差されて、ハンガリーは、近い距離に頬を少し赤くした。…オーストリアが気づいた様子はまったくなかったが。
「あ、はい…」
「自覚しているなら、かまいません。デモテープを聞いて、しっかり練習してくださいね。」
「はい!」
明るい返事を聞いて、じゃあ、二人は席に戻ってください、とオーストリアは言った。

がたがたと二人が座る。オーストリアは、では次に、説明を続けていた。
「…このあと、どうせ居残り練習するんだろ?」
小声のロマーノの声に、ハンガリーは何を今更、という表情で返す。
「当然。だって唯一の二人きりタイムなのよ?」
「もの好きだな。」
後ろからの声に振り返ると、イギリスが覗き込んでいて。
「…それが、私に対する侮辱だったら許すけど、先生に対するのなら、後で調理室呼び出しね。」
にこ、と笑われて、やべ、と小さく呟いたイギリスが慌てて言う。
「俺より先にフランスの野郎だろ。」
「あら。フランス先生なんか呼び出すまでもないわよ。」
こっちから中華鍋持って行ってやるわ、と微笑んだハンガリーの笑顔が絶対零度を下回っていて、思わずイギリスとロマーノは顔をそらした。
「私のオーストリア先生に手出そうとするなんてホント度胸あるわよねえ。うふふふ…。」

ハンガリーに勝てる人物など、この学校には、とうのオーストリアと日本、(とある意味イタリア)くらいしかいない。
それがわかっている生徒達に、オーストリアに告白しよう、なんて輩は皆無。(先生の中には例外もいるが。)

つまりは、学校中が、ハンガリーの片想いを知っているわけで。

唯一知らないオーストリアは、こそこそと楽しげに(他の人には、ハンガリーの笑顔が氷の笑顔だとわかっているので、ロマーノとイギリスが脅されているようにしか見えない)話す三人に、…楽しげ、ですね、やっぱり、同じ年代の子の方が、一緒にいて楽しいんでしょうね。
なんて大きな勘違いをして落ち込んでいたりするのだった。




六限、社会準備室

がたがたん!とたてつけの悪いドアが音を立てて、
「悪いカナダ匿ってくれ!」
と、フランス先生がこの社会準備室にやってくるのは、いつものこと。
「またですか?フランス先生。」
苦笑して、入れている途中だったコーヒーを、いつのまにか常備されるようになってしまったフランス先生用のカップに入れた。

この社会準備室は、職員室から一番遠くにあるからだろうか、存在さえ忘れられていることが多い部屋だ。生徒達の中には、こんな部屋があることすら知らない子もいるかもしれない。
つまり、知っている人が逃げ込むには、とても丁度いい場所なのだ。
例えばハンガリーさんにおいかけられてるフランス先生とか。

「はい。」
コーヒーを出すと、ぐったりと机に突っ伏していたフランス先生が顔を上げ、ありがとな。と微笑んだ。
綺麗な笑顔に、どきっと心臓が高鳴る。

フランス先生は、僕にだけ手を出さない。他の人にはいろいろ、してるくせに。(それで、いつもハンガリーさんに追い回されてるくせに)

幼いころからの知り合いだから、だろうか。フランス兄ちゃんが、近所に住んでいて、いつも遊んでくれていたのは、小学校低学年のころまで。そのあと、僕が転校になって、ずっと会っていなくて、再会したのは、この学校に赴任してきたときだ。

驚いた。そして、うれしかった。
幼心に、ずっと、好きだった、初恋の人。忘れられなくて、ずっと夢に見ていた人。
…でも、彼にとって、僕は弟みたいなものらしくて。
……対象外、なの、かな。そう思うと、ぎゅう、と胸が苦しくなって、どうにもできなくなってしまう。
くるくると、コーヒーをかき混ぜて、ため息をひとつ。


…まーたどっか飛んでるな?カナダのやつ…。
コーヒーを両手で持ったまますとんと向かいに座って、何もしゃべらなくなったカナダをながめて、小さくため息。
さら、と風に流れる金糸が、鮮やかで美しい。

昔近所にすんでいたカナダを初めて見たとき、天使かと思った。それが人間だと知って驚いて、それが男だと知ってまた驚いた。
俺が行くところ行くところ、ぱたぱた走ってついてくるカナダがかわいくて仕方が無くて、いつも一緒に遊んだ。
…引っ越す、と聞いたとき、もちろん悲しかったが、同時に安堵もした。
自分の中の感情が、とっくに、弟みたいなカナダにたいする好き、ではなく、恋愛感情の好きに変わっていたのをわかっていたから。

これでもう会うこともないだろう、と思っていたら、去年赴任してきた世界史の教師がカナダで、本当に驚いた。
これは、運命か、とも思った。
けれど、他の連中にはやる、遊び半分で尻に触ったり服脱がせたり、ができないのは、未だにカナダをどこかで天使だと思っているからか、はたまたただの根性なしか。
…俺がこんなに本命には慎重派だったとは、お兄さんびっくりだよ。
そっと苦笑して、ため息を一つ。

二人のため息が準備室に溶けて、消えた。





放課後

行きが10分で無理矢理学校まで飛ばすが、帰りは三十分以上かかることの方が多い。
歩みの遅いイタリアにあわせて、自転車を押して帰るから、だ。たまに、買い物にもよるので、それでもっと遅くなる日もある。
「ドイツー今日の晩御飯何食べたい?」
何でもいい、と答えかけたら、なんでもいいなしね、と先手を打たれた。
そうだな、と考えてから、魚、と答えると、わかった、と笑顔が返ってくる。
「じゃあ、スーパー寄って買い物してー。ご飯作って、食べてー、あ、ジェラート欲しい!」
元気なイタリアに、小さくため息をついて宣言一つ。
「夕飯が終わったら、宿題やるからな。」
「えええええ〜!」
「……手伝わなくてできるんだな?」
明日あたってたろ、数学、と指摘してやると、うっ、とイタリアは黙って。
「…教えてください。」
「よし。」
いいだろう、とうなずくと、ちぇ、ドイツとジェラート食べてのんびりする予定だったのに、とすねるイタリアに苦笑して、ふと、クラスの女子が話していたことを思い出した。

「…そうだな、今度の日曜、駅前のデパート行くか?」
ジェラート展やってるらしいぞ、とつけたすと、イタリアの表情がみるみるうちに輝いて。
「ただし、明後日の国語の小テストで80点とれたらな。」
「ええええ!って、明後日テストだっけ!?」
存在すら忘れていたらしい。まったく、とため息をついて、80点だからな、と念押しすると、も、もうちょい下げてほしいであります!といわれた。
「…何点なら自信があるんだ。」
「えー……10点?」
えへ、なんて小首をかしげて言ってもか……わいいのはかわいいが。
「…50。」
「えええええ」
「えーとか言う前に勉強しろ!」
怒鳴ると、ドイツが怒った〜とか言いながら走っていくイタリア。
仕方の無いやつ、と苦笑して、ドイツ早くーと手招きするイタリアの元へ、走った。


後日、イタリアがまさかの90点台をたたきだし、日本は感涙してドイツは病気か何かかと心配して、俺だってやればできるの!とイタリアを怒らせるのは、また別のお話。


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アンケートリクより、「学園パロ」でした。
先生もいる設定はどうですか、と言われて一番に浮かんだのが白衣の仏兄ちゃんでした。
なので仏が化学教師で、あと独伊は生徒同士がいいな、と考えていくうちに楽しくて結局こうなりました。

独と伊はこれでも付き合ってません!たぶん文化祭とかで未成年の主張とかやらされて告白します。きっと。
西ロマは、大学生になって西のうちにころがりこんでなんやかんやかな!(つまりそこまでは何も無い)
仏加は、なんか一波乱あってからくっつくかな?というかなんか事件ないとくっつかなそう…
英日は、ベタに卒業式の日告白で!
墺洪が一番告白はやそうです。洪さんが、音楽室で告白する感じ。

と、わくわくしながら想像してました。ちなみに、二年にはまだ米とか韓とかいます。3年には露とか希とかいます。
土さんは校務員さんか体育の先生で、中さんは保健室の先生なイメージです。

こんなかんじですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
リクエストありがとうございました!


ついでにどうでもいい設定集
2年3組
日本の担当するクラス。ドイツとイタリアがいる。ほかは、フィンランドとかリトアニアとかリヒテンシュタインとか、比較的常識人の集まるクラス。学級委員はドイツとリヒテンシュタイン。イタリアに何かあると、ドイツ指揮でてきぱきと統制がとれる、そんなクラス。

3年1組
スペインの担当するクラス。イギリス、ロマーノ、ハンガリーがいる。頼りない担任の代わりに、生徒会長のイギリスや、学級委員のハンガリー、エストニアがまとめている、個性豊かなクラス。イギリス、ハンガリー、ロマーノの先生に片想い組の恋を応援している、そんなクラス。

先生ず担当教科
古典 日本
化学 フランス
体育 スペイン
音楽 オーストリア
世界史 カナダ
数学 スウェーデン