寂然法門百首 92

2025.5.27


 

 

 

遊化鹿苑

 

きゝそめしかせぎがそのの法(のり)の声世をあきはつるつまにぞ有りける

 

半紙

 

【題出典】『法華玄義』一・上
 

【題意】鹿苑に遊化す。

 鹿苑寺で教化する。


【歌の通釈】

聞き始めた鹿の苑の法の声は、世を飽き果てるきっかけであったのだよ。

【考】

鹿苑時。まだ理解の浅い凡夫に対し小乗の教えを説く段階。『阿含経』がこれに当たる。歌は、この段階での教えが世を出離するきっかけであると、次の大乗の段階への移行の心を詠む。

(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)

------------------------

「鹿苑寺」といえば、金閣寺のことがすぐに思い浮かびますが、なるほど、「鹿苑時」には、そのような意味があったのかと初めて知りました。金閣寺は、創設者である足利義満の法号、鹿苑院殿(ろくおんいんどの)から名付けられたとのことですが、足利義満の法号が「鹿苑院殿」だったということは、まだまだ自分は「理解の浅い凡夫」に過ぎないとの思いからだったのでしょうか。あるいは、義満に法号を与えた方のそのような思いだったのでしょうか。


 

 

 

Home | Index |Back | Next