寂然法門百首 74
2022.10.27
事与願違
何事も思うふすぢには違ひつつそむけとなれるこの世なりけり
半紙
【題出典】『往生要集』大文二
【題意】 事与願違
事と願と違ひ
実際の事と願う事は違う。
【歌の通釈】
何事も思い通りにはいかなくて、出家せよと言っているようなこの世のありさまだよ。
【考】
願うことは叶わぬばかりの世の中から離れ、浄土を求めようという歌。左注は、『往生要集』の文を踏まえながら、いかに我々の世の中が思い通りにいかないものであるか、富貴であっても貧しくても、長寿であっても、楽があってもなくても、必ず難点があることを執拗に説き、浄土に心を向けようとする。『方丈記』の「すべて世の中のありにくく」以下の一節に通うような筆の跡。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)