寂然法門百首 19
2020.3.28
内謂涅槃如石泉水
すみはつる心のうちの涼しさを山井(やまい)の清水汲みてこそ知れ
半紙
【題出典】『止観輔行伝弘決』一・三
【題意】 内謂涅槃如石泉水
内は涅槃を謂う。石泉水の(中より生ずるが)如し。
内楽は涅槃という。それは泉から湧き出る水のようだ。
【歌の通釈】
澄みきった心の中の涼しさ(涅槃の楽)を、山の井の清水を汲んで知るよ。
【考】
内楽(涅槃楽)は、石泉のように自らの心の中から湧き出て、外から汚されることなく澄んでいる。この「石泉」を「山の井の清水」という歌ことばに置き換えて詠んだ。山から湧き出る清らかな水の姿に、澄みきった心に湧き出る涅槃楽のあり様を知る。
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「涅槃楽」の意味は難しくてとても説明できませんが、簡単に言えば、悟りの一つの境地でしょう。
こんな清らかな境地に到達できれば幸せですね。「自らの心の中から」湧き出る澄みきった水──それを発見するには、おそらく長い修行が必要なのでしょう。
「涼しさ」が、悟りのキーワードであることは確かなようで、ここにも仏教の独特な世界がありますね。