日本近代文学の森へ(1) はじめに   2018.4.17

 


  「源氏物語」をとうとう読み終わったわけだが、正直、けっこうしんどかった。途中、何回も休憩はしたものの、ほぼ毎日読んで、なにがしかのことを書いて、となると、毎回1時間半から2時間はかかった。夕方になると、疲れて眠くなってしまうので、なるべく午前中に読み書きをしたが、それがおわるとたいていはお昼で、一日の半分はそれで終わりという日々。

 いったん、読み始め、書き始めると、楽しいのだが、「始める」のがめんどくさい。ああ、今日は休もうと何度思ったことか。実際に休んでしまった日も多いが、それでも「連休」はなるべく避けることにした。続けて休むと、二度と立ち上がれない気がしたから。

 まあ、それでもなんとか読了できたのは、やはり「読者」がはっきりといて、コメントもいただけたからだろう。ちょっとした読書会をやっている気分を味わうことができて楽しかった。

 おわってしまうと、なんだかもの足りない。源氏も終わりかかってきた頃には、次は、何を読もうとかいろいろ思ったけれど、2014年の大手術以来、世界の長編小説読破計画と称して、プルーストやら、ドストエフスキーやら、スタンダールやら、セルバンテスやら、大西巨人やらを次々と読んできた流れの中で、最後の大物というつもりで源氏を選んだわけだ。だから、長編はもういいか、って思うのだ。

 で、いろいろ考えてきたのだが、手元に全巻揃っている筑摩書房の「日本短編文学全集」全48巻を中心に、日本の近代文学の主に短編小説を読んでみようかということに一応なった。

 「近代文学」というときには、文学史などでは、だいたい明治から終戦(昭和20年)までの文学を指すのだが、まあ、戦後も入れてもいいだろう。その辺をぽつぽつと読んでいこうかと思っている。

 全体の題をどうしようかと迷ったが、「日本近代文学の森へ」と銘打った。日本の近代文学は、決して傑作・名作だらけの森ではない。むしろ、しょうもない、惨めったらしい、貧乏くさい作品に満ちあふれている。けれども、だからといって魅力的でないということではない。そういう小説は、しょうもない自分、みじめな自分、貧しい世界など、マイナーな現実に正面から取り組む作家の姿勢がはっきりと現れている。そうした作家の死に物狂いの「闘い」は、いまの世の中では、かえって貴重なものにも思える。

 源氏のときのように、丁寧にあらすじを書くなどということはしないが、読んだ証拠に、勝手な感想を書いてみたい。(書かないときもあると思います。)ぼくは研究者でもなんでもないから、見当外れのこともたくさん書くだろうけど、大目にみていただきたい。

 「毎日」ということもしないつもりだ。もう残り少ない人生なので、あまり自分を縛り付けたくない。

 そういいながら、実は、もう一つのシリーズも考え中だ。「詩歌の森へ」がそれ。古典詩歌から、近代・現代の和歌・俳句・詩などの「お気に入り」の鑑賞をしたいとも思っている。近々始めるつもりだが、共倒れにならなければいいんだけれど。

 それから、媒体としては、ブログに連載して、それをFBにリンクするという形をとる。そのほうが、後々整理や検索がしやすいので。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

 


 

 「日本近代文学を読む」というシリーズをブログで始めたのは、上の日付けのとおり2018年4月だった、ということを、今やっとつきとめた。

 本文中にもあるように、FBより、ブログの方が検索が簡単だと思ったわけだが、このシリーズも160回を越えると、その検索も実にやっかいなことであることが日々痛感されるようになった。とにかく、この「日本近代文学の森へ(1) はじめに」という文章も、たどり着くまで数分を要する始末である。

 斎藤緑雨から始め、岩野泡鳴へと進み、そこから徳田秋声、そして志賀直哉という風に読んできたのだが、自分がいったいどういうことを書いてきたのか、いやそれよりも、何を読んできたのかを振り返ろうにも、ブログは時系列に並んでいるので、順を追ってゆっくり読むことができない。

 そういうわけで、ブログもやはり「流れゆくもの」であり、後でゆっくり読み返すにはまことの不便なものだと実感したのである。

 で、この際、ブログ掲載の文章を、ホームページのほうへ「アーカイブ」しておこうと思ったわけだ。これは何も初めてのことではなく、既に「源氏物語」や「細雪」ではやっていることではあるが、なにか面倒なのでやる気にならなかったのだ。

 今回、やってみて、案外時間がかからなかったので、今後も、なるべく、文章の方はこちらの方に「アーカイブ」しておこうという気持ちになった。「詩歌の森」(これは更新が稀になっているが)、「木洩れ日抄」などにもいずれ手をつけようと思っている。

2020.7.29記

 


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