第1章

18才になった。免許を取った。親父は歳のくせに妙に若いスポーティクーペに乗っていて、それを借りて乗り回した。だるなエンジンとATに満足できずに、5年落ち前型式のクーペを中古で手に入れた。購入当時から約7年前にはそれなりに人気もあった車だが、排ガス規制のためライバルを指した台詞「名ばかりのGT」が、自身にも当てはまっていた。

第2章

社会人になって中古のスポーツカーを手に入れた。デビュー当時一世を風靡した車だ。足を固めLSDを入れて随分走り回った。パワーアシストのないステアリングはロック・トゥ・ロックが4回転くらいあって重かった。AE86が片手でステアリングを操っているのを見て羨ましく思った。5年位乗り続け後輩に譲った。

第3章

日常の使い勝手を考えて、4Dr.FF Sedan に乗り換えた。車は便利な日常の道具にもなるのだと、当たり前のことに気づいた。落ち着いた走りで、高速道路を長距離走るのがとても楽になった。左膝の調子が悪くなり、クラッチを踏むのが辛くなってきた。約5年位乗り続けた。

第4章

ATの4Dr.FF中型Sedanに乗り換えた。スタイリッシュで運転が楽で、ボディが大きいので結構荷物も積める。オートクルーズもあり長距離は更に楽になった。最初は大きなボディに戸惑ったが、そのうち意識せずに使えるようになるとお気楽極楽で、自分の車をあまり意識しなくなった。最近、「すごく楽だけど、それだけ」と思い始める。何か不満になってきた。ほんの少し前まで、今年の夏の終わりを6年間目に入るこの車で迎えるつもりだった。

第5章

「1台目は憧れや好みに偏る。2台目は反動がでる。3台目で自分の好みと折り合いがつく」という台詞を聞いたことがある。私は何代目で折り合いがつくのか未だ分からないが、5台目はどうだろう?