Load Test & レビュー
(テストマシン:PM9500/120)


トレースソフト
URW SYSTEM IKARUS TRACE MASTER light


 雑誌で「IKARUS TRACE MASTER」の発売記事を見つけ、
「IKARUS]といえば「フォントベンダーが字母のトレースに使用している高額な専用フォント作成システム」という記憶が頭の中をよぎった。

 価格を見て、¥158,000-と個人で買うには高価すぎて簡単に購入出来る代物ではないが、私のイメージからすると何百万もするソフトだと思っていたので「ずいぶん安いな。」というのが第一印象であった。

 仕事でスキャンデータからアウトラインデータを作成する必要があり、けっこう苦労させられた経験があるのでこのアプリケーションの発売には非常に興味を示していた。(ベジェ曲線を使ってトレースされたデータから余計なポイントを減らそうと修正するとラインがとんでもない方向へねじくれ曲がったり、最初からポイントを少なくトレースすると目的とはかけ離れたトレースになったっり、最後には諦めて手でトレースし直したり。ウ〜ン!結局仕上がりでは手でトレースするのが一番納得出来るのだが、今度は時間が・・・(^-^;))

 そしてつい最近、「IKARUS TRACE MASTER light」が発売された。価格は何と¥59,000-(実売¥50,000-程度)と3分の1の値段、これなら少し踏ん張れば個人でも手の出る値段である。

 ただ、気になるのは正式版とlight 版の違いであるが、これだけ値段が違うとなると、どの機能が省かれているのか非常に気になる所だ。肝心要のトレース機能が制限されてしまってはいくら安くたって意味がないし。ウ〜ン、どこが違うのかはっきり知りた〜い!


 という事で雑誌記事やホームページ、さらには店頭のセールス資料等を手当たりしだい調べまくった結果、結論として「light版ではアウトラインデータの書き出しがEPSのみに制限されており、フォントの書き出し(TTフォント)の機能が省かれている。トレース機能及びアウトライン修正機能は正式版とまったく同じ。」という事が判明。
 これならトレースしたデータをIllustratorへ持ち込んで使用するという私の目的には十分である。何せフォントの字母をトレースするというあの噂の「IKARUS」である。トレース能力、修正機能は従来のトレースソフトと雲泥の差であろうと期待がどんどん膨れ上がるばかり。

 ついにボーナス片手にエイヤッ!と勢い付けて、「IKARUS TRACE MASTER light」を購入してしまった。興味を持っていろいろ調べているうちに、どうしてもほしくなってしまったのだ。

 以下に使用レポートを掲載したので、トレースでお悩みの方は是非参考にしていただきたい。


 「IKARUS TRACE MASTER light」をインストールすると、「IKARUS TRACE MASTER」と「IKARUS IKEditor」という2つのアプリケーションが出来上がる。

 使用方法は「IKARUS TRACE MASTER」を起動して、TWAIN対応スキャナからの直接スキャンあるいはモノクロ2階調TIFFを読み込んでスキャンを行い、「IKフォーマット」に書き出し作業を行う。この作業はあっと言う間に完了してしまう。G3/500MHのCPUのおかげもあるだろうが、本当にこの作業は早いのだ。(スクリーン表示用の「SCファイル」とアウトラインの「IKファイル」が出来上がる。)

 次に「IKARUS IKEditor」を立ち上げて、スキャンしたIKファイルを読み込んで修正作業を行い、その後にEPSに書き出す。必要があればSCファイルをバックグラウンドに読み込んでスキャン元を表示した上で作業が可能である。(修正したIKファイルは別に保存出来るので、後から何度でも修正、変更が可能。)

 書き出したEPSファイルはそのままIllustrator等で開けるので、あとは色を付けるなりレイアウトに張り付けるなり拡大縮小するなり、自由自在である。



 
 使用してみて、最初は従来のようにいきなりEPSにしてしまうのではなく、一度ネイティブフォーマットの「IKフォーマット」に書き出した上でさらに専用エディタアプリケーションで修正を行い、そこからEPSへ書き出すという方式が何となく面倒くさいと感じた。

 しかし操作をマスターするにしたがい、この「IKフォーマット」がいかに優れたアウトラインの中間フォーマットであるかが解り出してきた。従来のようにいきなりベジェ曲線にされたのではこれほどスムーズに修正が出来ない事を身をもって解っているだけに、「IKARUS」の神髄はIKフォーマットにあり!とこの優れたフォーマットの素晴らしさが徐々に解って来たのである。

 間違えてトレースされたデコボコは不要なポイントを削除すれば簡単に直ってしまうし、余計なポイントは単純に削除しちゃえばそれで十分。削除しすぎたらアンドゥーは19回までOK。エッジなのに丸まっちゃったら、カドのポイントを切り替えて余計なポイントを削除するだけ。慣れれば非常に簡単、かつ正確に修正が可能なのだ。そして、ポイントを削除しても不自然さ無しに線が繋がってくれる。本当に不思議としか言いようがないのがIKフォーマットである。

 これは、IKフォーマットがベジェ曲線ではなく直線と3次スプライン曲線を利用しているからなのだが、ポイント上を不自然無くなめらかに通過するというスプライン曲線の特性を非常にうまく利用している。

トレースの済んだIKフォーマットを、「IKARUS IKEditor」で開いた状態。

青で囲んだ部分にトレースのズレが生じたので拡大してみる。

ズレた部分の余計なポイントを選択して、削除してしまえば修正完了である。

ベジェ曲線では単純にポイントを削除しようものなら線がとんでもない状態になってしまうのだが、IKフォーマットの3次スプライン曲線なら、ポイントを削除しても線がきれいに繋がってくれるのだ。

ご覧のように修正が完了して、自然な弧を描いたトレースが完成した。

このままEPSに書き出してIlluatratorで開けば、IKフォーマットがベジェ曲線に置き換えられるので、あとは通常の操作を行うだけである。

 さらに「IKARUS TRACE MASTER」でトレーススキャンする際、パラメータを細かく設定する事でトレースの精度をかなり思い通りに操る事が出来る。オートトレースで上手く行かない場合には、パラメーター設定値を変更して納得するまでトレースを繰り返してみるのも手だ。トレースにかかる時間はほんの一瞬なので、納得できるまで繰り返しても大した時間はかからない。


 フォントの字母をトレースするというIKARUSの精度を試すために、100ポイントの文字を2階調TIFFに書き出してパラメーターを変えながらトレースし、そのままEPSに書き出してIllustratorで開いてみた。

●「オートトレース」では細かいカーブをコーナーとして認識してしまい、今回のケースでは思い通りのトレースが出来なかった。
●「推奨パラメータ」でかなり改善されるが、まだ細かいカーブがコーナーとして認識されてしまう。
●「カーブパラメータ」(独自に設定)でかなり思い通りのトレースが出来たが、今度は余計なポイントが増えてしまった。

 今回の「カーブパラメータ」は最低半径と角度の設定を変更しただけなのでポイントが増えてしまう結果となったが、もう少しパラメータを細かく設定してやるか、スキャン元の画像サイズを変更して最適値を絞り込めばより思い通りのトレースが可能になると思う。
 ただ、この状態まで正確にトレースしてくれればあとは「IKARUS IKEditor」での修正はそれほど大変な作業ではないし、フォントのように極力ポイントを減らす必要が無い通常使用であれば、そのままIllustratorへ持ち込んでしまっても問題はなさそうである。
 何せ「IKARUS TRACE MASTER」がトレースに費やす時間がほとんど無に等しいほど早いのが、最大の魅力である。

 そして今回一番やりたかった事!友人に描いてもらった私の似顔絵を、綺麗なアウトライン処理にして私のキャラクタとして活用する事である。
 下が「IKARUS IKEditor」でトレースデータを開いた状態であるが、今まで手を換え品を換え苦労して作ったアウトラインとは雲泥の差。感動するほど完璧な出来上がりである。(1200dpiモノクロ2階調TIFF画像よりオートトレース後、一部IKEditorにて修正処理)


 「IKARUS TRACE MASTER」のパラメータの最適値と「IKARUS IKEditor」の3次スプライン操作には多少慣れが必要だが、慣れてしまえば本当に納得の行くトレースがいとも簡単に素早く完成してしまう。

 あの手この手で苦労して、結局納得出来ずに手で時間をかけてトレースするはめにはまっている皆様、是非一度「IKARUS TRACE MASTER light」を検討してみる価値は十分あると思いますよ。<(_ _)>


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