4.陸上と.水中での距離の違い
空気中から水中を見た場合、屈折率の関係から物体は大きく見えます。(逃がした魚は大きいと良く言いますね!)
どのくらい大きく見えるかというと、約1.33倍に拡大されて見えます。
これは私たちが水中メガネを使用した場合でも同じです。(間に空気が存在するためです。)
また水中カメラも、レンズからフィルムまでの間に空気が存在するため、同じように拡大されます。
つまり、陸上で私たちが目測で距離を測る場合と、水中で目測で距離を測る場合とでは条件は同じなのです。(水中では目測もカメラも1.33倍に拡大されます。)
それでは、水中写真を撮るに当たって、なぜ陸上と水中での距離の違いに注意しなければならないのでしょうか。
水中写真を始めたばかりの頃、皆さんはおそらく最初はちゃんと目測で測った距離でそれなりの写真が撮れたはずです。(もし違っていたらゴメンナサイ!)
これは、一つには最初に撮る写真には風景写真的な物が多く、距離が約1m前後が中心であるため、被写界深度の関係からそれなりにピントが合って撮れる事。
もう一つは、あまり水中ということを意識せずに撮影しているため、陸上の感覚で距離を把握し、かなり正確な目測が出来ているせいだと思います。
おそらく皆さんはそのうちにピントの壁にぶち当たる事となるはずです。
いくら自分がこれはこのレンズの最短撮影距離だと思って撮っても、一向にピントが合ってくれない。たまたま通りすがった被写体以外の魚の尻尾に、ジャストピント!てな事を繰り返しているうちに、だんだん嫌気がさして来るはずです。
これは水中での撮影に慣れて来ると、水中の浮遊物による乱反射を避けたいがため、だんだんと被写体に近寄って撮影するようになり被写界深度を狭めている事と、マスクの死視界のため近距離での目測に誤差を生じる為です。
この様な症状がでてきた場合には、奥の手を使いましょう。水中に距離を測るためのゲージを持ち込むのです。
ただし、このゲージには陸上の1.33倍の距離の目盛りをふっておいて下さい。レンズの距離目盛りは、あくまでも陸上の距離を基準としていますから、水中では1.33倍にした目盛りが正解となります。
私も水中カメラを始めて半年ほどでこの壁にぶつかりました。陸上で使う巻き尺を水中へ持ち込みましたが、水中で計算するのがいかに大変なことか。そして、一度使った巻き尺は塩で錆びてしまい、三度目には使い物にはならなくなってしまいます。
そこで、いっそのこと1.33倍の目盛りを打った棒を持ち込もうと釣具屋を探していたところ、ありました。
昔は鯨の髭を使っていた釣竿の先ですが、現在はなんとグラスファイバーを固めた物が安く売られているのです。
釣り好きな人に聞いたところ、これをガラスの破片で丁寧に削って、自分の目的とするしなりまで細く削り込むのだそうです。
さっそく中でも一番長い物を手に入れ、先端に目印のフサを付けさらに自分のレンズの最短距離の1.33倍の長さにマーカーを付け、あとはよく使いそうな距離にマーカーを付けて完成です。
これを使い始めてからようやくピントが合い始めました。また、新たに自分の距離感にいかに誤差があるか。正しい距離がどのくらいなのかを把握出来るようになりました。ピントでお悩みの方は、ぜひ試してみて下さい。
次にレンズの画角についてです。よく水中での標準レンズは35mm だと言われますが、これにもちゃんとした理由があります。
陸上での標準レンズは50mmです。では、水中で見える被写体は1.33倍に拡大(望遠レンズ寄りになる)されるのですから、50割る1.33では、37.59398・・・となり、一番近いレンズは35mmとなります。逆に水中での16mmレンズは、16掛ける1.33で陸上での20mmレンズに、20mmレンズは28mmレンズに相当する事になります。
私の個人的好みですが、陸上で使うレンズで私が最も好きなのは28mmレンズです。これと同じ画角を水中で再現するには、20mmレンズが最も近いレンズとなります。
このように、水中では屈折率によりレンズの画角も変化する事を頭に入れておいて下さい。
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