春埜山捜索てんまつ記


 まずは無事発見されてめでたしめでたしです。

ヘリがぶんぶん、なんだ?

春埜山(8k) その日9時ごろからでしょうか、春埜山周辺をヘリが何台もブンブンブンブンいます。ちょうど草刈りしながら、でも気になる。

 山すそぎりぎりまで降りたり回ったり(写真赤線)。火事だと困るので望遠鏡でみて見ましたが、消防用ではなさそう。どうもマスコミ関係のヘリのよう。

 春埜山は東海自然歩道も整備されていて、確かに奥まってはいるけれど遭難するような山ではないよな。。。と思いつつお昼に。

 お昼には同報無線で前日より2人戻らないの連絡。NHKの県内版のニュースで名前とヘリからの撮影がでた。(おっ、消防団。団長がいる。いったい誰が。。。って、住職!?)。春埜山の住職は、この地区のお寺の住職だったのが、焼けてしまってからまあいろいろあって、今年正式に春埜山の住職になったばかり。

 つまり、地元にも縁の人なので、自治会長に電話したら、既に午前から行った人もいるそうで、午後から有志で捜索に加わることになった。集まったのは16人くらい。山歩きに慣れているとはいえ、平均年齢60歳以上だから、ちと心配。

 午後2時ごろ現場につく。っていっても、僕は初めて登ったので勝手が分からない。「TVからみると奥の院のほうだな」という話を手がかりに奥まで行く。捜索現場は、東海自然歩道の入り口で、ある程度整備されている。他の人はずんずん登っていったり、山すその方に回ったりしたが、僕は、状況が分からないので警察の無線の近くで待機することにした。

 お昼頃山に入る。服装は半そでの軽装、長靴。(ならそう遠くへは行ってないはず。)
何か掘るのかくわを持っていった。(そうするとあっちの方向?)
2人で入ったようだ。(2人一緒にでてこれないのはおかしい?まさか熊か猪か?)
携帯はたまたま置いて出たが、一人はタバコを吸うらしい。(烽火があがるかも)

 警察犬が入っているということでその情報を確認してからと思った。というのも、人がいっぱいだと警察犬が迷うことがあるからだ。前の日の夕方から夕立が結構降ったから、匂いも足跡も流れちゃったかもな。。。

 もう一人若い兄貴がきたので、山に入ることにした。山は道があって思ったより歩きやすい。木があるから滑ってもすぐとまるだろうし。でもちょっと雨宿りしていると上からでは分かりにくいなあ。。。熊笹がある。これに分け入ったらまずいなあ。。。一山越えた峠のところまで歩く。風が強い。そこからは道が細くなっていた。

 天候が崩れそうなのと、時間の加減で戻るように頼まれた。この山に詳しいわけでもなく、どこを探したらいいか皆目見当がつかないので戻ることにした。

 戻ったが、他のメンバーも見付ける事が出来なかった。焦りがややただよっていた。

発見から救助まで

 翌日は親父が志願して、少数精鋭で参加することに。消防団は第2分団全員出動。僕は気になったが仕事をすることになる。途中、救急車と消防のサイレンの音がしたので、見つかったかなと思ったが、連絡のしようもなく、ただ祈るしかなかった。

 後で聞いた話では、現場では大きな動きがあった。8時より捜索開始であったが、その8時に一人が自力で下山したらしい。それが田河内というかなりの距離があるところであった。前日から住職と別れて、一晩かけてたどり着いたらしい。

 その人の案内で地元で猟師もやる山に詳しい人が入り、住職のだいたいの位置も分かった。迷った人はホツで左に曲がったと言ったが、猟師はいや右だといって、その方向に下っていくと、はたして沢で水を飲んで上に登ってくる住職とばったりあったらしい。

 親父がいうにはまさに奇跡。というのも山は広く、背丈ほどある熊笹のおかげで、3mも離れれば見えなくなる。沢に下りたらあがってくるにも難儀なので、そこまで探すとなるともっと時間がかかったはず。

 担架が下りていったが、住職の80kgの巨体をみてすぐ帰ってしまったそうだ(っておいおい)。ヘリで吊り上げることになったが、松を倒すことになって手のこでやったそうだ(ううたいへん)。ヘリを無線で誘導するが、沢の下のほうから上がってこない。発煙筒も15mはある木の上まで煙が抜けるほどでない。しからばと、スギの生の葉をいぶって、烽火をあげたそうだ。

 ヘリがやっと気がついて、近寄ってきた。そしてロープで吊り上げて救助。さて、帰りをあがってきたが、親父が「おい道をずれてる」と気がついたそうだ。1m隣を歩いていて分からないそうだ。50人くらい歩いても熊笹はしなるだけで、戻ってしまって道にならないのも一因だ。

 親父が帰ってきたのも夕方だった。もう行けって言われても行きたくないとは親父の弁。場所によっては木はあるから怖くないが、三角のてっぺんを歩くようなところもあるらしい。

近くの山だからってなめたらあかん

 将来のためにここで気がついた点をあげておく。

 軽装:軽装で歩くにはやはり短い距離でやめとかないとね。たぶん歩きやすいからつい歩きすぎちゃったと思う。それと目的の場所から考慮すると、かなり歩く距離がある。捜索の人も、スパイク付き足袋靴じゃなきゃとか言ってたし。

 時間:お昼から登ったと言うけど、既に曇ったりして、僕らは雨フルまで仕事しようなんて言っていた。しかも3:30ごろ夕立がきて、家に戻ったとき、ああ春埜山には雲がかかっていると思った覚えがある。

 天候:標高800mという条件は丁度雲がかかることが多い。霧ではなく雲。1m先が見えないくらい。歩く速さが違って2人ばらばらになったらしく、山は空が見えないから天候の変化にも気がつかず、お互い探してそれで迷ったらしい。

 携帯:置いてったらしい。町内の全ての山で使用できるわけではないが、山にこそ携帯が必要だと思う。

 タバコ:まじめな人で山でタバコを吸ってはだめと思ってわざわざ置いてったらしい。烽火をあげられなかったのはこのため。

 熊笹:ここらには暖地なので熊笹の群落はめずらしい。山登りをする人は、熊笹の中を歩くのは厳禁である事をご存知だと思う。熊笹は道が出来ないので、戻ることもできなくなる。発見するのも大変。

 迷う:迷ったら動いちゃいけない。あるいは沢に下りたらいけない。動けるなら上に行って、尾根沿いに下りるか、見渡せるところに出ること。

 食料:水と飴、くらいはね。

 詳しい人:今後、消防団にも地元の人にも山に詳しい人が少なくなっていく。警察や消防ではちょっと手に余る。山仕事で入ったことがあったり、猪を追いかける猟師なら分かるのだが。こうした事態に対処できにくくなる。うーむ、問題。