銀天盤 七万TOP ○ストーリー


 電異の海に浮かぶイルザークの結界、萌えフィールド。

「……フン」

 それを遠方より眺める影があった。

 その名をぴえーる=おーぎゅす子。ミソロギアよりやってきた、暗黒龍の配下。竜牙三将の一人。

 可愛らしい外見とは裏腹に、暗黒龍配下の中でも随一のパワーを誇る猛者である。

「忌々しい八王家の結界だぎゅ。中に入れば奴等の法則に従って戦わねばならず、かといって外から破壊するには……」

 ぎゅす子は自らの掌に周囲よりマナを集め始めた。ミソロギアであればすぐに暗黒の輝きを放つはずの拳は、しかし僅かにその周りに闇を纏っただけで止まった。

「この世界、マナが薄すぎるぎゅ……」

 仮に何処かから力を集めて来ることが出来たとしても、あの結界を外部から破壊できるほどの威力は望み薄だ。となるとやはり、結界の中に入って敵方のルールに則って戦うしかないようだ。

「……ま、最後に皆殺しにすればいいだけのことぎゅ」

 そう呟いて自らを納得させる。結界は、役目を終えれば解かれる。内部で行われている力の錬成が終わった瞬間、その力をミソロギアに送られる前に、全員処理してしまえば特に問題はない。

 そうと決まれば、今は力を温存するべき時である。竜帥本部を遠く離れたこの地では、いかに竜牙三将とはいえ消耗も激しい。早急に拠点を確保する必要があった。

「と言っても、あまり結界の近くはぞっとしないぎゅ。どこか……」

 ぎゅす子は電異の海を見遙かす。

 映し出された星明かりが瞬く夜の海のような、天地もない高く遠く広がり行く世界。

 その中でもミソロギアの匂いのようなものを辿れば、イルザークの結界に戻ることはたやすい。見失う恐れのない目標のことはとりあえず置き、ぎゅす子は羽を広げた。

 ここは要するに、ミソロギアで言えば月の門の中のようなものなのだろう。星の瞬きは全てゲートの光。それを潜れば現界へ復帰できるようだ。どこか適当に距離を置いたゲートから、この世界の表側へ出ることを決める。

 しばらくの飛翔の後、ぎゅす子は条件に見合いそうなゲートを見つけた。外がどうなっているかはわからないが、例えガーディアンが配されていようとも、ぎゅす子の力を持ってすれば物の数ではないだろう。

「ここにするかぎゅ……」

 念のため竜気を展開した後、ぎゅす子は光の門へ入っていった……。





☆   ☆   ☆




「う、うわあっ!? なっ、なんだぁっ!? いきなりモニタから美少女が!?」

「何処かで聞いたような展開ぎゅ……」

「なんて非常識なんだ! 警察を呼ばないと!」

「待て。貴様何処へ行くぎゅ。この神殿は本日今より暗黒龍様の支配下となる。勝手な真似は許さないぎゅ」

「そ、そんな横暴な。人の部屋を占拠しようってのか!?」

「ぎゅっぎゅっぎゅ。下男がいれば何かと便利だから、貴様は生かしておいてやるぎゅ。感謝するぎゅ」

「断る! 死んでも暴力には屈しないぞ! そうだ俺は自由だ夢幻抱擁!」

「因みにぎゅす子はこのように、PCケースを握力だけで潰せるぎゅ」

「なんなりとお申し付け下さい」

「これで基地は確保したぎゅ。ぎゅっぎゅっぎゅ」


 どうなる京王稲田堤在住会社員!

 危うし、京王稲田堤在住会社員!


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