イルザークは困っていた。
成り行き上、ぎゅす子と共にバトルロイヤルに参加してしまったが。
彼女は萌えとか一体どんなアレなのかイマイチわからないのであった。
自分でわからない感情を他人に喚起するなど不可能ごとである。例えば、誰かを怒らせようと思ったら、とりあえず自分がされたら怒るようなことを仕掛けるのが手っ取り早い。笑わせたり、泣かせたりも同じだろう。
さてそれでは「萌えさせる」となったら? それをされたら自分が「萌えー」と思うようなことをすればよい。のだろう。たぶん。
では省みて、イルザーク自身はどんな時に「萌えー」と思うのか。
(わからん……)
しかし、なんとかしなければ。自分が萌えフォース精錬の足を引っ張るわけにはいかない。
「……こういう時は、とりあえず、模倣だな」
人真似の誹りは甘んじて受けよう。有効と思われる手法を、先人に習う。
そう決めたイルザークは、椅子を半回転させて立ち上がり、大きな姿見の前へ歩を進めた。
咳払いなどしつつ、鏡の中の自分へ片手を上げて。
「えー。あー。……こ、」
あと一歩。
「こっ、こ……」
もう半歩。
「こんにぃあー……。ぐふ っ」
イルザーク=ツォン=モエモエ。
なんつーか精神的に再起不能。
To be continued!