第弐話
「書き捨て話って気楽でいいなあ」 −Sinple Story−
「……嫌なタイトルですね」
「そうか?」
「シオンさんは人の悪意には敏感ですからねー。被害妄想の気がある小動物のようにビクビク暮らしながら歳をとっていくんですね。……今何歳ですか?」
「……くっ」
我等がイズモの国の王、ミカヅキは、お供に隠密頭のシオンと小姓のホウライを連れてお忍びで町に出ていた。登場人物が三人以上になると書き分けが大変なのでこのパーティー編成だ。
「それにしても久しぶりだな。こうしてまた出番があるとは思わなかった」
「やっぱり、私たちあってのこのページなんですよ」
「「それはどうかなー」」
嬉しそうに言うシオンに薄笑いを浮かべて答える2人。
「結局、ドラゴンフォース2は買ってないしな」
「っていうかいつ出たんですか? アレ」
「拙者はしらんよ。全然話題にもならなかったし」
「身内で買った人います? 1買ってた柴三郎さんは?」
「あいつは最近「yu-no」に夢中だからなあ。あと「下級生」」
「じゃあまあ、あんまり知名度は高くないということで……」
「拙者らが割と何をやっても……」
「「クレームは付きそうにないですなあ」」
「あんたらまたゲーム世界壊すつもりかーっ!」
怒鳴るシオンを後目に、2人は「モーニング娘紅白出場おめでとうの歌」を歌いながら走っていってしまった。
「くそー。確信犯めー……」
荒い息のシオン。と、その後ろへ一人の人影が表れた。
「フフフ。御機嫌いかがですか? まだまぜーる?」
「は?」
「フフフ。突然ですが私の名は大戦略男(だいせん・りゃくお)。世界中の皆様に大戦略の面白さを知っていただくのが私の使命です」
「……はあ。それで?」
「フフフ。なーに簡単なこと。大戦略以外のシミュレーションゲームを駆逐してしまえば、みなさん大戦略をするしかなくなりますからねえ。理解しましたか?
では、わかったところで死ね!」
「ええっ?!」
不条理な展開に対応できないシオン。
「フフフ。私は大戦略に登場する兵器を召喚することができるのですよ! いでよ! 我が鋼鉄の下僕よ!!!」
呼びかけに応じ、時空を越えて現れる鋼の象形! その名は!
「フフフ。来ましたね。……特弐式内火挺カミ!」
「うわ渋ぅーっ! つーかなんで二時大戦? その上日本軍の、更に言うなら陸上兵器?」
「フフフ。それだけではありません。この内火挺カミは中盤戦以降登場のくせに経験値を積んでも上位兵器へランクアップできないという、まさに作る意味が何もない泣かせる中戦車なのです」
「だから何でそんなヤツを……」
「問答無用! 消えなさい!」
「くっ!」
時代遅れでも戦車は戦車。37mm砲の直撃を受ければ、生身では一撃で即死である。身構えたシオンだが、ファンタジー系SLGの忍者キャラに果たして勝ち目はあるのか……。
「Fire!」
かけ声と共に、歩いてきた大戦略男は、ステッキを振り上げ、シオンの頭をしたたか打った。
「いだ、いだだだ。痛い」
「フフフ。どうですか? このステッキの威力!」
誇らしげに言いながら律儀に開始線へ戻る大戦略男。
「……」
痛さに涙をこらえつつも、黙ってそれを見守るシオン。
「……」
双方しばらくの沈黙の後、シオンは戸惑った声をあげた。
「……それだけ?」
「「それだけ」とは?」
「いや、戦車……」
控え目なその指摘を、冷笑で返す大戦略男。
「ああ。フフフ。確かに私は兵器を呼び出すことはできますが、「操れる」とは一言も言っていません! 一言もね!」
「……操れないのね?」
「ええ! あなたは騙されたのですよ! 未知の力を恐れる自分の思い込みにね! なんと愚かな! くく。くくく。これすなわち自分の限界を自分で決める常識に縛られた人類の……」
高笑いをあげる大戦略男につかつかと歩み寄り、シオンは訊ねた。
「今までに格闘技の経験は?」
「まったくございません」
ひょいと、そのステッキを取り上げる。
「これ以外に武器は?」
「いいええ。私が軍事マニアだからって、偏見はいけません。普段から武器など持ち歩きませんよ」
「ふーん。それじゃあ……」
シオンの手の中でめきりと軋んだステッキが折れ飛んだ。にこやかな微笑を浮かべながら。
「お仕置きの時間かなー」
どこからか金属バットを取り出す。
「あー。戦時下での非武装市民への攻撃は……」
ヘルメットをかぶり、大きく振りかぶるシオン。
「国際条約によって……」
「どーでもいーから帰れーっ!!!」
その突っ込みは情け容赦なくフルスイングだった。
次回予告
この当時は大戦略に燃えてたのでしょう。
ドラゴンフォース2、面白いのでしょうか。あの後半のかったるさやいろんな武将を育てても無意味で最終決戦前でがっかりするところは改善されているんでしょうか。
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