GM「そして洞窟の奥底にたどり着いた君達は宝箱を開けた。中には昏々と眠りつづける1人のドワーフ」
PC「ドワーフ!? とにかく起こしてみよう」
GM「魔法で眠らされているみたいだ」
PC「じゃ、ディスペルマジック」
GM「ドワーフは目を覚ますとガバっと飛び起き叫んだ。『このダークエルフめ! 成敗してくれる!』ってね」
PC「???」
キツネにつままれたようなプレイヤー達。
私は隣のテーブルでこのやりとりを聞いていて、感慨深げにつぶやいた。
「もうこのネタがわからないプレイヤー達ばかりで、テーブルが組まれるようになったんだなぁ」と。
ドワーフの宝シリーズ。
これはPW郎選手が「ある事件」をきっかけに、毎年やるようになったシナリオの事だ。
その「ある事件」とは・・・。
事件は、DASH!創設当時までさかのぼる。
DASH!に、まだ初期メンバーくらいしかいない頃。
そのころ我々は、けんゆうさんのマスターで、SWのキャンペーンを楽しんでいた。
壮大なキャンペーンであった。
なんたって、ある事件を解決して「国家的英雄」になったかと思ったら、次の話では国外逃亡する羽目に陥る逆賊となり、最後はドラゴンを倒して国を救ってしまったりするような波乱万丈の物語。
これは個性的なプレイヤー達と、その思うが侭の行動を許してくれた、けんゆうさんの自由度の高いマスタリングの賜物であると言えよう。
しかしこの「自由度の高さ」が、大きな問題と、後に続く伝説を生んでしまうのであった。
そう「ドワーフの宝」の伝説である。
PC間の火種は、PW郎選手の「ダークエルフやっていい?」と、けんゆうさんの「いいよ」という、わずか0.5秒ほどの会話で点火された。
このダークエルフ。当然のように、同じパーティー内のドワーフと対立関係にあった。
ダークエルフ自体には「同じパーティー」などという考えはなく、パーティーとは付かず離れずの関係を続けていたのだが、そこはキャンペーン。他(ドワーフ以外)のプレイヤー達は、なんとか同じパーティーとして行動しようと、いろいろ気を使っていた。
ある女性キャラを演じていた人物など、無理矢理「そのダークエルフに、ほのかな恋心を抱いている」などという設定を付け加え、パーティー崩壊を阻止しようとしたほどだ。
ドワーフにしてみれば、勘弁して欲しかった事だろう。
他のプレイヤー達がダークエルフを近づけようとすればするほど、自分はそいつを追い出すようにプレイせねばならないのだから。
そして、ついに決戦の時がきてしまう。
逆賊として国外逃亡を計らねばならなくなった時、ついにドワーフの堪忍袋の緒が切れたのだ。
ドワーフから見れば、そのダークエルフだけが、国外逃亡の必要のある逆賊だった。
ドワーフにしてみれば、そのダークエルフさえ斬れば、それで国外逃亡などせずとも解決する問題だったのだ。
ドワーフは愛用の戦斧を振りかぶった。
パーティーで1、2を争う戦闘力を持つドワーフと、パーティーでもっとも高度な魔法を操るダークエルフ。
他のPC達ができる事は、ただその決戦を見守る事だけであった。
ましてやその決戦が、わずか1ラウンドで決するなどと、予想できる訳がなかったのである。
「じゃ、スリープ」
ダークエルフは、即座に宣言した。
精霊魔法のスリープ。
それは、誰かに解呪されるまで、永遠に眠りつづける魔法。
パーティー内にそれを解呪できる者はいない。
呆然と見守るメンバー達を無視して、ダークエルフは眠ったドワーフを担ぎ上げる。
そしてあろうことか、ドワーフの身を洞窟の奥にあった大きな宝箱に放り込むと、しっかりと蓋を閉めてしまったのだ。
誰もが呆気にとられていた。
まるで悪い夢を見ているかのようだった。
あまりの出来事に、我々は冷静な判断力を失ってしまっていた。
そうに違いない。
なぜならば、誰もドワーフを助けることなく、そのまま国外に逃亡してしまったのだから。
そしてドワーフは宝になった。
危険なダンジョンの奥底に眠る、文字通り永遠に眠りつづける宝物に。
後世の冒険者が発見してくれる事を、ただ待つだけの身になったドワーフは、こうして伝説となったのである。
「どこかのダンジョンの奥底に、とんでもない、想像を絶する宝物が眠っている」と。
彼は今も眠りつづけている。
そしてたぶん、永遠に。