「これが彼らの最後の冒険となる」
これ、けんゆうさんがプレイした、真・ウィズのPRでのお言葉。
この6月「話し合い」は、「衰退」という暗めのお題がついていたんだけど、まさかその言葉が、あんな形で真実になろうとは・・・。
GM「今回は皆さん、この中からキャラクターを選んでください」
GMが出してきたキャラクターシートを見て、口々に歓声があがる。
そりゃそうだ。
クラスは、サムライだのロードだの忍者だの。装備は、ムラマサだのカシナートだのプレートメール+3だの。オマケにレベルは32だの33だの。HPなんて、軒並み150台。魔法も使い放題。
テーブルについたプレイヤー4人組は、大喜びでキャラを選んでいた。
「すげぇ! こんなレベルのキャラが使えるなんて! もしかして今回は勇者とか英雄とかの設定?」
とか言いながら。
確かに「勇者」とか「英雄」だったかもしれない。
けど困ったことに、それらには「元」の但し書きがついていた。
「なっ!? なんじゃこりゃぁぁぁッッッッッ!?」
プレイヤー達は、ようやく気がついた。
もらったキャラクター達の特性値が、1や2ばかりなのを。その年齢が、軒並み90歳台なのを。
GM「いや、今回のお題は、衰退だから(笑)」
・・・そういう問題だろうか?
今回のシナリオは、お姫様の病気を治す薬を、ある冒険者から買い取ってくるお話。
なんでもプレイヤー達が暮らす国で大地震が発生し、国の騎士団は壊滅状態。
お姫様が病気で、その薬を持ってる男の素性もわかったって言うのに、どうしようもないほど人手が足りない。
で仕方なく、老人会の慰安旅行で助かった元・英雄4人組。サムライのガロワ(93)とアリス(95)、ロードのマリアンヌ(94)、そして忍者のタイガー(92)。この最強最老ジジババパーティーに、お声がかかったらしい。
ガロワ「先々代の国王様には、返しても返しきれぬほどの大恩がございます。かならずや姫様のお薬、手にいれてご覧にいれましょうぞ!」
先々代ってあたりで、すでに妖怪じみてる集団なんだけど、さすがにその妖怪ジジババパーティーも、「その冒険者は、すでに街を出て旅立ってしまった」と聞いた時には、焦りを隠せなかった。
真・ウィズでは、90歳を越えたキャラは、1ヶ月ごとにどれかの特性値が1点下がってしまう。
そして特性値が、どれかひとつでもゼロになると、老衰で死んでしまうのだ。
つまり特性値が1とか2しかない我々は、まさに「棺桶に片足どころか、腰までどっぷりイッちゃってる」状態。下手すりゃ、あと1ヶ月でお迎えがきてしまうと言う訳。
マリアンヌ「余命いくばくもないわしらが、若い冒険者に追いつけるのだろうかのぉ? 薬を買い取って戻ってくるまで、わしらの命がもってくれればよいのじゃが・・・」
タイガー「いや、旅の間に怪物や寄ってくる追いはぎどもを一掃し、レベルアップしてしまえばいいのじゃ!」
ガロワ「そうだ! 殺せ! 殺すんじゃ! 15の頃より戦場に出て、早や78年。しょせんわしらの歩みし道は、血塗られた道よ!」
アリス「これこれ、興奮すると心の臓に悪いぞ」
とりあえず王様に馬を借りて、冒険者を老い始めた・・・もとい、追い始めた一行。
街道すじの旅篭で冒険者の噂を聞きつけ、人気のない古い屋敷に忍び込み、地下で見つけたテレポーターで飛ばされたりしながら、徐々に冒険者との距離を詰めていく。
途中で遭遇した怪物達には、イニシアチブを確実に奪われたり、特性値が低すぎて魔法をぜんぜん抵抗できなかったり、足腰が弱くてムラマサで斬り伏せる距離に近づくのが大変だったりしながらも、近付きさえすれば一刀のもとに斬り伏せられる武器の威力と、使い放題の魔法と、AC10なら200%を越える命中率の飛び道具で、なんとか切り抜けることができ、ようやく冒険者に追いつくことができたのであった。
あぁ! しかし何と言う皮肉!
ジジババパーティーが追いつけたのは、その若い冒険者が足を止めたからであった。
彼は先に進むことができなかったのだ。
その部屋にいる化け物に、命を奪われてしまっていたから。
ティルトウェイトが乱れ飛び、ゴルゴのような忍者の飛び道具が襲う。
しかしその化け物は、今までに出会ったすべての怪物の頭を、スイカのように粉砕してきた忍者の攻撃にも耐え、逆にティルトウェイトでジジババパーティーを苦しめる。
ガロワ「くそ! ムラマサで斬り伏せる距離まで近づけんわい!」
タイガー「移動力アップの魔法を集中させて、それで近づくんじゃ!」
ガロワ「よし! 皆の者! わしに力を貸してくれ!」
マリアンヌ「我が魔力よ! 彼に届いて!」
アリス「私も魔法をかけるわ! えぃ!」
ガロワ「おぉ! 神よ!」
神の領域に達したサムライは、一気に化け物との間合いを詰め、必殺のムラマサ三連撃を喰らわす。
ガロワ「うりゃぁぁぁッッッ! 178ポイントのダメージ!」
ついに化け物は倒され、死んでいた冒険者も魔法で生き返らせる事に成功した。
冒険者「ありがとうございました。この薬でよろしければ、お礼に受け取ってください」
タイガー「ありがたく受け取っておこう。ところでお主も名のある冒険者のようだが、我が輩の目から見れば、まだまだ未熟。本日より師匠と呼び給え。弟子にしてしんぜよう」
冒険者「・・・あ、いえ、私には冒険者としての仕事がありますので・・・」
タイガー「弟子にしてしんぜよう」
冒険者「あ、いや、その・・・」
タイガー「わしに残り少ない人生の生きがいをくだされぇぇぇッッッ!」
冒険者「・・・師匠と呼ばさせていただきます」
こうして姫の薬と、「生きがい」という素晴らしい宝物を手にいれた一行は、街へと帰っていくのであった。
めでたしめでたし。
だが、これだけで話は終わらない。
神の祝福か、悪魔の囁きか。
街に帰ったジジババパーティーに待ち受けていたのは、
「それじゃレベルアップだね」
というGMの言葉であった。
タイガー「これが最後かもしれんのぉ」
最後の贅沢とばかりにスイートルームに泊まり、それぞれの部屋に消えていったジジババ4人組。
次の日の朝、弟子を取ったばかりのタイガーが、部屋から出てこない事に気づく。
一同「タ、タイガーッッッ!」
特性値のレベルアップの際、最後のひとつでファンブルを出したタイガーは、幸運度の特性値がゼロになったことで老衰を迎えていた。
その死に顔は、今日から始まる弟子との新しい生活を夢見ていたのか、溌剌とした笑顔であったという。
合掌。