―  SF小説 3・シャーロック・ホームズの宇宙戦争 


 前回に続いてお気に入りのSF小説を紹介する。

 前回のは、正統派のSFだったので、お題でもう分かると思うが、今回は変化球でいく。

 シャーロック・ホームズの宇宙戦争、作者:Wellman父子(アメリカ)、多分1975年発表、日本・創元SF文庫 1980年。

 ウェルズの宇宙戦争の時代設定が、シャーロック・ホームズが活躍した時代設定と重なる、というところから、「もしも」ロンドンに火星人が来襲した時にホームズがいたら、という設定で、ついでに「失われた世界」のチャレンジャー教授も出てくるという、ウェルズファン・ドイルファン・ホームズファンの皆からたたかれそうな本なのだ。




この文庫の表紙イラストは、本文の内容と大きく違うところがある!
という事は、イラストレーターは本の中身を知らず、また
出版にあたって、イラストのチェックもされなかったという事か?


 ところが、ネタをゴチャマゼにしただけかというと決してそういうことではなくて、結構いけるのだ!

 例えば本家の「宇宙戦争」を今読むと所々違和感を感じるところがある。
 それは「宇宙戦争」が、今でいうハードSFだからだと思う。
 当時の科学技術で語られている部分のいくつかは、今読んでみれば素人でも「それはないでしょ!」と感じてしまうのだ。
 こちらの「宇宙戦争」は、最新技術で語られているかというと全然そんな事はなくって、そもそも技術的な事の解説なんてする気は無いようだ。
 状況の設定がSF的だけれど、その状況下での人々の行動がいたって普通に進んでいく。

 チャレンジャー教授、ホームズ、ワトスン、これらの登場人物がそれぞれの立場で行動し、最後に一緒になって火星人に立ち向かうのである。
 これが、非常時下でなんともマッタリと進んでいって、とても良い!
 しかも登場人物がハチャメチャな割に原作のストーリーが大事にされているのだ。
 私はこれを読んでいると落ち着いてくるので(?)、一時は出張時の愛読本にしていたくらいである。

 SFが嫌いな人でも、それほど抵抗は感じないと思う、読みやすいSF(みたいな)小説だと思う。


 尚、火星人が着陸したイギリスの町、サリー州ワーキングの町の一角には、巨大な火星人の地上用の乗り物が放置されている。(オブジェが作られている)
 本を読まなくてもそれを見れば、私が本の表紙を「違う」といった意味が分かるはずだ。

 映画の「宇宙戦争」(2005年、トム・クルーズ、ダコタ・ファニング)も、思ったより原作に忠実に描かれている。





2015.08.27.    ................トップページへ