----------  おむかえ  ----------


 息子が2歳前後の頃だと思うが、私は会社からの帰りに途中の乗り換え駅で、乗る電車の時間をメールすることにしていた。

 夕食の準備の都合があるからと妻に言われたからだが、そうすると、時々妻が子供と一緒に駅まで「おむかえ」に来てくれた。(子供をつれて、といっても、子供と一緒に歩いているといつ着くか分からないので、抱っこが多かっただろうと思う)

 息子は改札口から結構離れたところで、一生懸命に人の流れを見つめている。

 改札を出た私を見つけると、満面に笑みを浮かべて、なにやら「キャハハハ!」と叫び(笑い)ながら、かけてきて飛びついてきた。


 
ちっちゃい子が奇声を発し、途中の人にはおかまいなしに私に向って一直線にかけてくると、乗降客は少ない駅だったが、それでも息子とぶつかりそうになって身をかわし、何事かと振り向く人もいた。

 私としては少々気恥しくもあったのだが、それ以上にうれしかったし、ありがたいことでもあったのだ。

 しかし、時は風のように流れ去ってゆく。

 この幸せな時間はいったい何回くらい味わえたのだろうか、 子供の成長は早く、それほど長く続いたことではなかったと思う。

 しかし、この風景を覚えている限り、むすこの、大抵のことは許してやれるような気がするのである。

 親は、子供のために色々消耗していくけれど、きっと子供は、十分なお返しを先払いしてくれているのだろう。



 小学校に入った今でも、たまには「おむかえ」に来てくれる事がある。

 しかし最近は、駅近くのコンビニでお菓子を買ってもらおう、などという下心が見え隠れするようになってきたが、それでもやはりうれしい事に変わりはないものだ



2008.03.18.    ................トップページへ