●渓流釣り日記 ●実践ヘラブナ釣りレポート


渓流釣り日記

大阪大学釣部OB Fuji
● 大和秘渓にアマゴ放浪

 奈良県と三重県の県境を南北に走る台高山脈は、大峰山脈と共に近畿の屋根を形成しており、
その東側に宮川水系、西側に吉野水系を抱え、まれにみる多雨地帯である。そのため各支谷は
急峻さを増し、絶好の渓流釣りが楽しめる。
 ここに紹介する大和谷も、大杉渓谷に代表されるような悪場が多いので、中級以上の方に勧め
たい。また単独行は避けるのが賢明であると思われる。
最上流ではかわいそうにもサビていた
 さて、実際のルートを説明しよう。バックウォーターから釣り上がると、遡行不能になり、地池谷
出合まで行くことができずに終わる。この間の釣りは大型が最も期待されるが、早期から入渓者
が多く釣り荒れも早と思われる。さらに奥に釣り上がるには、六丁峠越えの登山道か地池谷の奥
まで入っている旧トロッコ道を利用する。前者は約1時間で地池谷出合まで導いてくれる。
途中、橋が古くなり崩れている個所があるので注意すること。後者はすぐに前者と分かれ、右岸
沿いに水面よりかなり上方を通り、地池谷一ノ沢を過ぎたあたりで崩れてなくなっている。
 早期のポイントとしては、前記の道を利用し、大和谷下流の焼山谷出合付近と地池谷中流の
一ノ沢から二ノ沢にかけてが期待できる。3月頃の平均サイズは20センチ弱で、地池谷下流に
多くある滝壷を狙えば25センチ以上を手にすることもできる。
今ごろのアマゴは、まだ動作がにぶく、ミミズを目前に流してやる必要があり、ポイントを探る場合
少なくとも5回はミミズを流したい。
地池谷下流と大和谷のワキ谷ぐらいまでのアマゴはサビがとれて美しいが、3月6日現在、最上
流部のスギ沢などは50センチを超す雪が谷を埋めている個所もあり、アマゴはかわいそうにも
サビていた。
 地池谷出合付近の雪は消えかかっていたので、4月に入るとアマゴは活発にエサを追うように
なろう。
根気よくさぐれば尺物もファイト!
 数釣りを楽しむなら各支谷を攻めるのがよい。下流から焼山谷、ロクロ谷、ワキ谷、銚子谷と続くが
いずれも出合が滝となっており、高巻いて入る。
ロクロ谷は出合の滝が魚止めとなっており、苦労して入渓しても、アブラハヤの入れ食いを経験する
だけである。数釣りと言っても放流物も多く、アマゴの成長が待たれる。
 地池谷出合付近をベースに決め、本流をゆっくり釣り上がると、約1時間半でロクロ谷出合付近に
たどり着ける。
各個所で大岩が谷を埋め、豪快な渓相を作り好ポイントの連続を十分堪能できる。
途中一箇所左岸を巻く所があるが、困難ではない。さらに釣り上がると、約1時間半でワキ谷出合
まで行くことができるだろう。
私は過去この区間で尺物をルアーで仕留めたこともあり、尺物のファイトを期待できる。
ただ魚影はあまり濃いとは言えないので、根気よくさぐる必要があると思う。
 ワキ谷を過ぎると型は小さくなり、放流物を傷つけないためにもルアーは遠慮してもらいたい。が、
すぐに谷は急になり通称「くの字滝」に出会う。この滝は平仮名のくの字に似て面白い。
滝壷はルアーが振れる。
この滝の右岸を巻き、数分後、落差20メートルもある豪快な巴滝に出合い、しばらく立ち尽くすことだ
ろう。この辺りまでが健脚向きの1日のコースである。
ツキノワグマも同じ沢筋を行動する
 尚、この奥には大和谷随一の夫婦滝が見事な姿を呈し、その落差50メートルの雌滝とひっそり
と右奥の影に飛抹を上げている落差50メートルの雄滝が絶妙のコンビネーションを保っている。
一見の価値がある。
 台高山脈一帯は未だに人を寄せ付けない断崖などがあり、野生の動物に満ちている。なかでも
特に注目しなければならないのは、ツキノワグマの存在で、彼らも我々同様に沢筋を行動する。
私は大和谷のロクロ谷出合付近で遭遇したこともあるので、注意すべきである。
 地池谷は出合いから滝が続くが、高巻きも多く、いちいち竿を仕舞わなければならず、あまり合理
的ではないし危険も伴うので、前出のトロッコ道を利用し、一ノ沢あたりから釣ることを勧める。
落ち込みの連続で、瀬と呼べるような所はあまりないが、アマゴの魚信が深みから快く手元に
伝わる。釣り人としての最高のひとときである。
 遡行しながら釣ると二ノ沢の出合に着く。二ノ沢は出合から本流と並行して走っているので、
初めての方には出合と気づかれないかもしれない。
ここは二ノ沢側に入り、それから本滝へ抜け、滝の脇を直登する。
目前に穏やかな渓相が開け、崩れかけた橋が前方に見うけられる。このあたりのアマゴは3月には
まだサビており、4月から5月にかけて釣るとよいだろう。一ノ沢から釣り上がると、この付近までで
終わる。
 大和谷のアマゴは型の上でもう一つであるが、川虫にも恵まれており、尺以上に成長する可能性
が十分にあるので、みなさんに協力してもらいたい。
五万分の一の地図「大台ケ原山」で、磁石と共に必携品である。
くれぐれも気を付けてアマゴの引きを十分楽しんで満足して帰っていただきたい。
(週刊・釣りサンデー掲載)
※  この釣行記は、私の大学時代の時の内容であり、その後堰堤ができポイントや景観等が
  かなり変化している事を確認しております。
  交通アクセスや釣行計画は、充分調べたうえでトライしてください。
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