〜八ヶ岳(2899m)周遊紀行〜 | 、、、、、 | 手をのばせば冬の大三角 |
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北国から届く深い冬の便り、太平洋側のカラカラ天気、厳しい寒気団に すっぽりおおわれた日本列島‥‥。 限りなく冴え渡った大気のもとに一年でいちばん美しく星の輝く冬将軍の季節。 新しい年を久しぶりに、八ヶ岳で迎えることになりました。 八ヶ岳は大別して、北八ヶ岳と南八ヶ岳に分かれ、前者はピタラスロープウェイを 利用すると初心者でも簡単に北横岳山頂に立つことができます。 そして後者は阿弥陀岳、赤岳、横岳、硫黄岳と荒々しい岩稜が連なり、冬の岩登 りのメッカとなります。 八ヶ岳は信州のなかでも、もっとも私の好きな山であり、最高峰赤岳は、もっとも お星さまに近くて、何より富士山が幻想的に見える。 裾野には八ヶ岳牧場が広がり、学生のころ憧れた野辺山天文台があり、JR小海 線(こうみせん)では、UCCのロゴ入りの赤い高原列車がコトコト走る。 数年前までは、お気に入りのペンションで、アツアツのシチューをいただくのが 八ヶ岳を訪れる楽しみのひとつでした。 今年は雪山登山が目的でしたので、諏訪ICで下り、食料の調達をして登山口の 美濃戸口へ。 美濃戸口バス停横で、登山届けに記入して、駐車場〜行者小屋(ぎょうじゃごや) まで約4時間の登り。 テント一式分軽くなったとはいえ、缶詰やカメラ器材は軽量化できず、ドベタで 山小屋へ辿り着きました。 |
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山小屋は、冬期のみ個室利用可能で、部屋の窓から見上げると、冬の夜空を君臨 するオリオンがその勇姿を見せています。 このオリオン座のベテルギュースと、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン この3つの明るい星を結んでできるみごとな正三角形を“冬の大三角”といいます。 子供の頃は、オリオン座の三ツ星がことのほか大好きで、願い事が叶うよと教えら れるままに 「ミンタカ、アルニラム、アルニター」 と呪文のようにつぶやいていましたっけ‥‥‥。 サッシの窓が凍りついてキラキラと冷たい光を放ち、冬の賑やかな星座と窓のイミ テーション銀河が合成して異次元の世界を創り出しています。 本当に手をのばせば届きそうなくらいすぐ近くに感じられ、星明かりと雪明かりで なかなか眠りにつけませんでした。 |
翌朝、行者小屋を出発。阿弥陀岳〜中岳〜赤岳まで2時間50分の登り。 赤岳山頂でコーヒーを沸かし、軽い昼食を摂りました。 赤岳山頂小屋に1泊の予定でしたが、午後から天候が崩れるという情報を 得て、文三郎尾根から行者小屋まで1時間40分の最短コースで下山する ことに。 3時頃から青空が灰色に変わり、強風に乗って雪が舞いはじめました。 2泊目も山小屋の夕食はお正月のせいか、豪華メニューでもてなされ、 夜中には信州名物“おやき”もストーブで焼けて、思いがけず個室ならではの 贅沢をさせていただきました。 1月3日の夕方から降り積もった大雪で、4日の朝は登山ルートを探しな がらの下山となりました。積雪の多いところでは腰まで埋もれる始末、雪と 挌闘しながらも3時間で下りることができました。 車に積もった雪かきをし、赤岳鉱泉直営の「太陽館」で温泉に浸かり、ランチ はキジ料理で。 BGMにオルゴールの奏でる八ヶ岳美術館に立ち寄りました。 温泉は身体の休養、美術館は心の休養にいいですね! |
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、、、、★、、、、、、、、、、 | 富士見高原のスキー場をぬけ、小淵沢IC〜韮崎ICまでドライヴを 楽しみました。 この韮崎辺りから眺める八ヶ岳の秀麗さはみごとなものです。 国道52号線を南下し、早川町〜早川渓谷沿いに “奈良田の里”へ向かいました。 南アルプス白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)の登山口のあるところ です。この奈良田の里に山岳写真家・白旗史朗の記念写真館が あります。昨年の秋、大阪で白旗氏とお話する機会に恵まれ、是非 一度訪ねてみたいと思っておりましたので、八ヶ岳から足をのばす ことに。 北岳は日本第二の高峰(3192m)であり、つい4日前には雪崩の 遭難事故の発生した所です。 白旗史朗記念写真館は、広河原から南アルプス白峰三山を縦走した 登山客が奈良田の下山口へ辿り着いた時に、ほっと一息入れるのに 一番ベストな場所であたたかく向かえてくれているようでした。 山岳写真家としては先駆者ともいえる白旗氏が、まだ無名だった頃、 東京の新宿駅から中央線に乗り、持っているお金すべてで南アルプス 行きの片道切符を買って何度も通いつづけたという奈良田の里。 観光の波に汚染されることなく、今尚、当時のままの姿を残している ようですね。 |
オートフォーカスの一眼レフカメラが主流になり、日本人一億総カメラマンといわれるこの時代ですが、 マニュアルカメラを使いこなしてこそ、はじめて「趣味はカメラです」と言えるのではないかと思います。 こと風景写真に関して言わせていただくとすればマニュアルでなければ名作は撮れないと思いますし そういう意味において、一期一会の作品と、この写真館で出会えたことはとても素晴らしいことでした。 |
奈良田を後にして八ヶ岳の東側に位置する野辺山へと向かいました。 清里のおとぎの国を通り、JR最高地点駅へ。 高原の野菜畑を走り、滝沢牧場の近くにポツンと建つドーム型の一軒屋。 カナダのログ・コテージを真似て造ったという赤杉のペンション。 数年前までは、よく訪れた地です。 懐かしくてポストの前まで駆け寄ってみると、個人名義の表札がかかって いて、もうそこがペンションでなくなったことを意味していました。 一年に一度しか利用しない私のところへ『ペンション閉業の挨拶状』 が届いたのは大阪から兵庫県のニュータウンへ引っ越した、あわただしい 年の秋の終わりでした。 『オーストラリアへ移住します。お元気で。』 という短いコメントが記されていました。若い女性に圧倒的な人気のある清里の メルヘンチックな華やかさとは対照的に、のどかで静かで、どこか牧歌的なこの 田園風景とそして何よりオーナー夫妻の作るカナディアン・ファームの田舎料理 の味は絶品でした。 なかでもシチューは宿泊客がこぞっておかわりをするほど美味しかったです。 オーナー夫妻は早春〜晩秋までペンションを営み、冬期の3ヶ月間は海外旅行 をして暮らしていて、サラリーマン生活を送っている人にとっては、喉から手が 出るほど羨ましいライフスタイルに映ったことでしょう。 私たちは、この八ヶ岳で森の生活を楽しみました。 カヌー、イワナの燻製作り、ブルーベリーのジャム作り、高原野菜のオリジナル ピクルス‥‥。光害のない、星が降るように見える場所がベスト、として選んだのが 東大電波宇宙観測所のあるこの野辺山だったのです。 ポスターにもなった緑の中を走る赤い高原列車は、バイパスの開通にともない今では 絵のような風景も伝説化されてしまいましたけど、 手をのばせば届きそうな満天の星空は今もあの時のまま。 天候にも恵まれ、無事に雪山の登頂を果たし、念願の写真館も見学でき、とても 素敵なお正月旅行となりました。 オリオン座の三つ星が西の空へ傾きかけた頃、車は駒ヶ根SAにさしかかりました。 渋滞もなく、真夜中の快適なドライヴです。 |
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そして、いつの日か我が家のポストに一枚のエアメイルが届くのです。 『ペンションを始めました。こちらへお越しの節は御利用くださいませ』 そんな文面の短いエアメイルが、いつか‥‥きっと。それまで私のオーストラリア旅行はお預けなのです。 Hello、南半球のお星さまは綺麗ですか? |