ぐるっと東北 夏の旅


 今回の東北旅行は、深田久弥の著書「日本百名山」を片手に登山とキャンプが目的の旅でしたので、
御紹介する観光スポットも独断と偏見で選びました。
よく知られた観光地とまたパック旅行では駆け足で通りすぎてしまうような穴場をミックスして新しい東北
の発見をして頂けたらと思っています。

 1日目。鳥海山家族旅行村キャンプ地に着いたのは 夕暮れがせまっていました。
「鳥海山」は山形県と秋田県の県境にまたがる円錐型標高2236mの単独峰です。他に樹氷で名高い
蔵王、出羽三山の一つ月山(がっさん)、朝日岳があります。
この山形県では将棋の駒で有名な天童市で、駒に自分の名前を彫ってもらえるキーホルダーがお土産
に最適。
 翌朝、鳥海山をあとに秋田県の男鹿半島へ。秋田ときけば夏の東北4大祭りに数えられる
秋田竿灯、冬のかまくらそして男鹿の年中行事「泣く子はいねぇが〜」のナマハゲにキリタンポ鍋。
この秋田に世界的に知られている藤田嗣治画伯の作品を集めた平野政吉美術館があるのをご存知で
しょうか。夏訪れると池のハスの花がとても見事に咲いています。


 ここからJR五能線沿いに青森方面へと日本海を左に見ながらドライヴを楽しみます。地方を訪ねて
面白いのは無人駅でユニークな名前の付いている所。
津軽線の「せへじ」五能線の「へなし」など。また十二湖駅のお隣松神駅は、JR貨物のコンテナ1両を
改造した黄色とオレンジの屋根のコントラストが夏の青空に映えるペンキハウス風。
この近くには断崖美の日本キャ二オンや不老不死温泉があります。
 泊まったのは十二湖リフレッシュ村。比較的新しいキャンプ場でサウナや温水プールも完備されて
いて、とても気に入りました。受付で手続きを済ませ、兵庫県から来た事と時間がないので
「貴方のおすすめは?」と尋ねてみたところ
「それなら是非、青池へ」と教えられ、十二湖の代名詞ともなっている青池を散策しました。ブナ原生林に
囲まれ、青いインクを落としたような幻想的な湖は、吸い込まれそうで時が経つのを忘れてしまいます。
 また、世界最大級のブナ原生林が広がる白神山地は世界自然遺産に登録されています。
白神岳〜十二湖縦断の登山コースもこの近くです。
 十二湖リフレッシュ村をあとにして私たちは深浦〜千丈敷を通り、午前中には津軽国定公園の麗峰・
岩木山へ到着しました。リフトを利用すれば1時間足らずで頂上に立つこともできます。
津軽・岩木スカイラインの裾野に広がるトウモロコシ畑の鮮やかなグリーン。アップルロードを通って
弘前市内に入りました。ここで弘前城散策と昼食を。
夏の風物詩は何と言っても「ねぶた祭」。台車上に組上げられた勇壮な武者像が橙に浮かび、まさに
゛真夏の夜の夢″


 午後から津軽半島の最北端「竜飛岬」へ。この風の岬、三厩(みんまや)は年平均風速毎秒10m以上
という日本有数の強風地帯で、初夏ですと海岸付近に自生する紫陽花の群落が彩りを添えてくれます。
自然が作りあげた造形のローソク岩、カブト岩などの奇岩が多く、義経伝説も残っていましたよョ。
「せっかく金木町まで来たのだから」
旅の相棒の強い要望で太宰 治の生家・斜陽館を見学しました。
トタン屋根の多いこの東北でこれだけの造りのお屋敷は、当時の裕福な暮らしぶりがうかがえます。
入り口には喫茶コーナーも。

 そして青森と十和田湖の中間にそびえたつ八甲田山へとドライヴは続きます。
まずは有名な酸ガ湯温泉へ。混浴の千人風呂は総ヒバ造りで¥400支払えば入浴のみもOKです。

登山ルートの最短コースは八甲田ロープウェイを利用して酸ガ湯(すがゆ)へ下りる3時間45分。
酸ガ湯キャンプ場は使用料が大人¥150とリーズナブル。(オートキャンプですと車1台+テント1張で
¥5000が相場なんですよ)
 翌朝、どんよりと曇った空から雨がポツポツと降りだし、八甲田の山々は真っ白いガスに包まれ、その
全容を見渡すことは出来ませんでした。
 この八甲田をあとに、写真家・前田真三氏が新緑と錦秋の奥入瀬渓谷美を紹介したことから一躍観光
のメッカとなりました奥入瀬渓流〜十和田湖を通り、お歳暮ギフトに欠かせない小岩井農場へ。
面積2600ヘクタールと、民間では日本最大級の牧場が岩手県にあったのを、皆さんはご存知でしたか?
゛南部富士″の愛称をもつ岩手山2039m。小岩井農場は、この岩手山の裾野に広がり、
まきば園ではプラネタリウム館やSLホテルが人気を集めています。
岩手山麓国民休暇村キャンプ地から登山道の入り口があり早朝スタートすれば夕方には下山も可能
です。
 そして忘れてならないのが、国宝建造物第1号の指定を受けている天台宗東北大本山の「中尊寺金色
堂」。「奥の細道」で松尾芭蕉が詠んだ「夏草や兵ものどもが夢の跡」は、平安時代ここ平泉に黄金文化
を築いた藤原氏三代を偲ぶ句です。
この平泉を起点に、一関温泉郷やJR北上線の「ほっとゆだ」は、駅内に温泉があることで有名ですよね。
時間が許せば是非訪ねたい花巻の宮沢賢治記念館。

ロンドンのガス橙をイメージした外灯にベンチ。入り口の伝言板には
「下ノ畑ニ居リマス」と書かれてありました。
 黄昏の中にうかぶ木立のシルエットは童話の世界へといざなってくれます。坂道を下れば、野菜を両手
いっぱいにかかえた宮沢賢治がそこにいるようでした。


 夏の終わり、残暑見舞のカードに混じって1通の葉書が届きました。遠く東北からの便りでした。
そこに差出人の名前はなく、葉書の裏には八甲田の山の絵とただ一言、
「日本百名山 健闘を祈る。 酸ガ湯温泉キャンプ場」
と書かれてあったのです。
私は「遠くからようござった」と笑顔で迎えてくれた管理棟のおじさんを思い出しました。
一人¥150のキャンプ場代で1枚¥50のハガキ代を思うと申し訳ない気持ちと‥‥‥また、その1枚の
葉書が今回の東北の旅を、より素晴らしいものにしてくれたことはいうまでもありません。
 百名山完登の折りには報告を兼ねて是非もう一度訪ねてみたいと思います。
END
「旅先で見つけたとても素敵な出会いシリーズ」・東北編