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 [A-c 粘着力(c)と摩擦角(φ)の設定]

  (内容)
1..
摩擦角と粘着力を調べる
2土質試料のサンプリング
3.土質試料の剪断試験によるc、φの設定
4.断試験種類の選択
5.地盤資料の活用

6.
7.







A [土質の基礎知識] 
   [A-c. cとφの設定]

    A-c-1.摩擦角と粘着力を調べる

A-a、A-bで、砂と粘土の構造の違いと強度について、ある程度理解できイメージがつかめたと思う。次に、力学的な特性である摩擦角(φ)と粘着力(c)の値はどのように求めるのかを説明しよう。

ある地層の摩擦角や粘着力を知る方法には、

@  土質試料を直接採取して力学試験を行う方法
A  間接的な手段で地盤の状態を調査し、その結果から推定する方法


がある。
また、計画初期に行う概略検討や小規模工事計画などの場合には、

B 既往の調査資料や統計的に分析したデーターから数値を設定する方法

もある。

(この項終わり)



A [土質の基礎知識] > [A-c. cとφの設定]

    A-c-2. 土質試料のサンプリング

摩擦力や粘着力を調べるには、Ac-1であげた方法のうち@採取試料の土質試験が理屈の上では一番よいことになる。しかし、土質の試料採取にいくらかの問題がある。結果を利用する立場の技術者にとっても、この点を認識しておく必要がある。

まず砂の場合であるが、砂は土中では安定していても、その小部分を試料として地上に取り出すときに構造が崩れてしまう。土質の構造からも分かるように、周辺の拘束がなければ不安定である。器のようなものを用いて崩れないように注意しても、土質が地中にあった状態のままで、乱さずに採取することは意外に難しい。粒子の詰まり具合をそのまま維持しないと摩擦角は変化してしまい、正確な値が得られない。そうした支障がないように深い地中から試料採取をするには、かなり高度な技術が必要となる。

1964年(昭和39年)に起こった新潟地震以来、大地震のあるたびに液状化による被害が大きく取り上げられるようになり、その後液状化現象に関して、メカニズム、予測方法、対策方法などの研究が盛んに行われるようになった。
このことも影響して、砂質土のサンプリングの必要性が高まり、採取技術の新しい提案なども行われているけれど、現状では従来から行われていた凍結サンプリングが一般に採用されている。この工法は特殊な装置を必要とし、時間も費用もかかるので、必要性の高いときでないと実施されない。したがって、通常の建設工事では、砂質土の不攪乱資料による土質試験を行うことはあまりなく、特殊な場合に限られる。


粘土は、構造をみると砂に比べて繊細でひ弱に感じられる。事実、粘土は普通のサンプリング作業時にわずかな外力が加わっても攪乱されて強度が低下するおそれがある。とくに、軟弱粘土層では、ボーリングによる地中応力の解放が原因で乱されることもある。
粘土の場合は砂の場合に比べると不攪乱資料の採取技術は進んでおり、土質試験によって粘着力を求めることは、通常よく行われている。しかし、この場合でも関係者は、試験室への持ち込みや保管などの後作業も含め、試料の取り扱いを慎重に行わなければならないことはいうまでもない。

(この項終わり)



A [土質の基礎知識] > [A-c. cとφの設定]

   
A-c-3. 土質試料の剪断試験によるC,φの設定

以上のように試料の取扱いに技術的な問題があるが、より正確に地盤の性状を把握する必要のある場合には、採取した試料による一連の土質試験を実施する。土質試験のうちでφやCすなわち剪断強度に関わる試験には、

@ 直接剪断試験
 A  一軸圧縮試験
 B  三軸圧縮試験

がある。

@の直接剪断試験の原理は、下図に示すように試料に鉛直方向の圧縮力を与えた状態で水平に剪断力を加えて行き、剪断強さを求めようとするものである。試験は一種類の土質について3個以上の供試体を試験し、その結果からCとφを推定する。

 

(図) 直接剪断試験

 

Aの一軸圧縮試験は、粘性土に適用する方法で、円筒形の供試体にコンクリートの圧縮試験のように力を加えて粘着力を求める。この原理を1章で説明したモールの円で示すと次図のようになる。すなわち、主応力面は水平と垂直の二方向にあって、水平方向には拘束がないので鉛直面に働く応力は0、また水平面に働く応力は荷重による応力qになる。

 

(図)一軸圧縮試験とモールの円

 

したがって剪断破壊荷重をqとすると、粘着力C

C=q/2

となる。

Bの三軸圧縮試験も、一軸圧縮試験と同様の円筒形供試体を用いた圧縮試験であるが、これを水圧による圧力室の中で行い供試体に側方から等圧力を加えた状態で剪断破壊を起こさせる。

この試験によるφとCの求め方を下図でモール円を用いて説明しよう。
三軸圧縮試験の場合は、水平方向からも荷重が加わる。そして、供試体内の水平面に働く応力は鉛直荷重であり、また垂直面に働く応力は側圧(水平加重)になる。同一種類の土質について、側圧σ
を変え、A,B,C,3回の圧縮試験を行うと3つの破壊荷重値が得られ、図のような3種類のモール円が描ける。これらの円に外接する直線(包絡線)を描いてみよう。すべての円に接するように正確には描けなくても、最も近い直線を選ぶようにする。これが1章でも説明した破壊包絡線である。この包絡線が縦軸(剪断応力軸)を切る点の値Cが粘着力、水平となす角度φが摩擦角と推定(設定)することができる。



      (図)三軸圧縮試験とモール円

 

三軸圧縮試験の経過をこのグラフに当てはめてみると次図のようになる。まず、供試体にσ3 の側圧を加える。この時、鉛直荷重はまだ加えてないので、σ1=σ3であり、モールの円は現れない(描けない)。載荷を始めるるとσ1が大きくなってモールの円が出現し、載荷に従って次第に大きくなり、やがて破壊線に接する。このときに供試体が破壊するのである。
そのとき供試体の主応力面剪断応力は、
τ=σ
tanφ+C 
であり、これが破壊剪断力に達したからである。

 

(図)三軸圧縮試験の経過とモール円



A [土質の基礎知識] > [A-c. cとφの設定]

A-c-4.剪断試験種類の選択

以上、3種類の剪断試験について述べた。このうち、直接剪断試験は操作が簡単だが、試験の経過に従って滑り面積が減少すること、滑り面に働く剪断応力が均等にならないことなどの問題があり、簡易試験として位置付けられてる。この方法によれば成形の難しい乱された砂でも剪断容器の中に充てんして試験することができる。データの信頼性、精度は低いのだが参考値を得るために行われることもある。

一軸圧縮試験は、摩擦角が小さく粘着力が支配的な粘性土の場合に行うことが多い。この場合、その土質に対して一軸圧縮試験が適しているかどうかは、経験的に判断する。下図によってもう少し説明を加えよう。一軸圧縮試験は、摩擦角を初め無視している試験である。実際はわずかながら摩擦角φが存在していて、a図のような状態で破壊しているかもしれない。しかし、φを無視してb図のように考えるのである。



    
        (a)             (b) 

          (図) 一軸圧縮試験結果の判断

一軸圧縮試験は、装置、操作とも比較的簡単であり、供試体も少なくてすむので、粘性土では最もよく使われる試験なのだが、この点をよく認識しておかなければならない。

三軸圧縮試験は、摩擦角も無視できない粘性土を扱う場合や、より慎重に検討を行いたい場合などに実施することが多い。一軸圧縮試験に比べ、装置も複雑で試験には時間を要する。また供試体もひとつの土質に対して3個以上が必要となる。試験を外注する場合の費用で比較すると一軸圧縮試験の数倍を要する。
下の表に三種の試験の比較表を掲げる。

   

(表) 3種の試験の比較表 

   


[A 土質の基礎知識] > [A-c. cとφの設定]

   A-c-5地盤資料の活用

1)サウンディングによるC、φの設定

つぎに、土質試験によらない、いわば間接的な手段によるC、φの設定方法を説明しよう。
この間接的な手段とは、ボーリングのロッドの先端に抵抗装置を取り付けてこれを地中に挿入し、貫入や回転によって原位置で土質性状を調べる方法を指す。この方法は、サウンディングとよばれ、最もよく行われるものとして標準貫入試験がよく知られているが、そのほかスウェーデン式貫入試験オランダ式二重管貫入試験ベーン試験などがある。

これらの試験では、それぞれの試験によって得られる固有の試験値があり、その値から間接的に摩擦角や粘着力を推定する。
たとえば、標準貫入試験では、先端に規格のサンプラー(土質を採取する装置)をつけたロッドをボーリング孔の中に試験対象地層まで貫入させておき、地上でロッドの頭に
63.5sの重錘を落下高75pで自由落下させて衝撃を与える。このときサンプラーが30p貫入するまでの打撃回数を記録し、その回数(これをN値という)から摩擦角や粘着力を経験式によって推定して求める。
同様に
オランダ式貫入試験では、ロッド先端のコーンと呼ばれる円錘形の装置を圧入させた時の抵抗値が指標になる。また、スウェーデン式貫入試験では、スクリュー状の先端装置を回転によって規定の段階的荷重を加えて加圧による貫入深さを剪断抵抗値と考え、これがN値と同様の意味を持つ測定値になる。

ベーン試験は粘性土層に用いられ、下の図に示すよう先端が十字形の羽根を持った装置を対象土層に貫入させておいて、これを回転するときの抵抗モーメントから理論的に粘着力を求めようとするものである。

              

(図)ベーン試験

これらの方法は比較的短期間で経済的に結果が得られることから一般によく行われおり、その中でわが国では標準貫入試験が最も普及している方法といえよう。
標準貫入試験は、広い範囲の土質に適応できることや、連続的な土質試料採取と並行して実施できることなどが長所とされている。
そして、さらにもう一つ大きな利点がある。それは、すでに全国各地で実施されていて非常に多くの試験結果が得られており、それらを用いた統計的なデータや研究成果が蓄積されていることである。このことをもう少し説明しよう。

サウンディングは、どちらかといえば地盤の相対的な強さを調べる手段なので、これから摩擦角や粘着力を正確に求めるには無理がある。しかし、サウンディングで得られたN値のような指標と、摩擦角や粘着力などとは相関関係があるので、このことを利用して摩擦角などが推定できるのである。この関係を統計的に精度よく求めるためには、まず大量のデータが必要となる。さらに、推定式に影響を与える要因は、土質の種類、粒子の分布や形状、深さ、地下水、地域による土質の特殊性、試験の方法による誤差などがあり、非常に複雑なのでこれを合理的に分析・処理しなければならない。実用に使えるよい関係式を得るためにはデータの量だけでなく、多くの研究も必要なのだが、そうした成果にもすでに豊富な蓄積がある。

このように、過去に行われた実績が多く、そのデータを用いた研究が盛んに行われたので、間接的な推計方法とはいいながら、ある程度信頼性のある方法として認められている。データの一例として、N値と内部摩擦角の関係をまとめたものを下図に示す。
また、実務に利用できる関連データやC推定方法
は、本講座の原本の巻末付録等に示されている。

              

(図) N値とφの関係データ

このようにサウンディングの結果からc、φを求める方法は簡便で経済的である。だが、正しく活用するには、上記のような関係から導かれた値であるということを認識して検討する必要があろう。
実際の設計や工事の際には、標準貫入試験の結果からc、φを求めることがしばしば行われる。しかし、粘土層の場合にはこの調査と並行して代表的な地点で不攪乱土質試料を採取し、一軸圧縮試験によって粘着力を求めれば、N値から求めた値を修正して判断することができるので、正確かつ効率よい方法といえよう。実際このような方法はよく行われている。

2)計算に用いるCとφの決め方

φとCを設定するための調査方法を述べてきた。次にもう少し実務的な段階でのφとCの決め方を説明する。

乱さない土質試料の試験を実施した場合は、これによって得られた結果は最も信頼できる値と考えてよい。しかし、注意しなければならないことは、試験値には必ず誤差が伴うということである。採取した場所、サンプリングの方法、試験方法などによって実際の値に対する偏りが生じるし、また必ずデータのばらつきによる誤差を伴う。データの数が十分ある場合は、統計的手法に従い平均値と分散値による推定の考えに基づいて行うのがよいであろう。
データ数が少なかったり、地盤が複雑だったりするときには、試験値だけに頼るわけにはいかない。そのような場合には、先に述べたサウンディングの結果から
c、φを推定する手段が役に立つ。
また、既往のデータも補足的に利用できる。その地域の地盤資料があればこれも有用である。こうした資料は、近年多く蓄積されており、それらの一部は、『建築基礎設計のための地盤調査計画指針』(日本建築学会、1995)に掲載されている。

ここで、既往のデータを用いるときに注意しなければならないのは、それらのデータがまとめられた背景や状況である。
資料によっては限定された地域のものかもしれないし、外国のデータの場合もある。また、行った試験方法や条件が記されていることもある。このような点にも注意を払って利用することが必要となる。


3)φ、c設定の仕方のまとめ

設計などを検討用のφとCの決め方を以下にまとめる。

@  不攪乱資料が採取できるなら、土の剪断試験によってφとcを求める。この場合、資料の採取に伴う問題点や、土質試験値の意味などを認識しておくと、より適切な判断ができる。また、ボーリングに伴うサウンディングの結果や資料を採取した位置、深さ、工事計画との関係なども考慮して、総合的な判断のもとに決定する。

A  サウンディングで得られた値から経験式などによって決定する。この場合、近隣の地質調査資料や既往の資料・文献などが入手できれば、これも参考にして検討する

B  地盤調査をする余裕のない場合(基本計画時など)は、既往の資料を参考にして設定する。このとき、資料の背景にある状況、条件なども調べ、検討物件との整合性を判断する。


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