平安情瑠璃物語(竹宮惠子、小学館 505円)


 天馬の血族も確かに面白いけれど、作者がベテラン故に書き慣れている感じがあって、スリリングさがないのは事実。それ以外の近作も、歴史を題材にした作品が多くて、情動以上に理性が働いてる感じがして、ああ人はこのようにして枯れていく(悪い意味ではない)のね、とかおもっていた。まあ、こんなのはファンのわがままなんですが。
 ところがこれは違った。確かに時代物だけど、濃い。プロットだけみるならむしろ王道だけれど、語り口がイヤらしいし、そのイヤらしさを時代物という設定が裏打ちしているのがさらにいいい。特にこのエロ味は、まだまだ枯れておらんぞ!(別にこんな言葉遣いではないと思うが)という作者の叫びにも見えて、オールド・ファンとしてはかなり燃えた、というわけです。もしかするとオレ的インパクトでいうなら「疾風のまつりごと」よりも上かも。