99年1月上旬


<1月1日・金>
◇ この日記もそろそろまる2年である。思ったより長く続いたし、まれにある見知らぬ人からの感想メールがくるのも、瓶に入れた手紙がどちらかへと流れ着いたような気分になって楽しい。今年も、無理せずのんびりと続けていこうと考えている。

○ 午前中は完全リラックス状態をつくろうと、音楽もかけず、日なたのソファで本を片手に手にうつらうつら。本は夏目漱石の「文鳥・夢十夜」(新潮文庫)である。文鳥の描写がかわいらしく、小動物を飼うのも楽しいかも知れぬなどとつい思ってしまった。文鳥に昔の女の面影をだぶらせる漱石を読みながら、ぼんやりとあてどもない思考をめぐらす。時が流れるのははやいものだ。

◇ というおだやかな午前中からうってかわって午後はアニメのビデオを堪能する。「クレヨンしんちゃん」の「暗黒タマタマ……」と「雲黒斎の野望」をレンタルしてきて見る。「雲黒斎」はこれで5度目か。合間に「イーハトーブ幻想 KENJIの春」も見て、河森正治のベストワークはこれだなと、あらためて確信する。


<1月2日・土>
◇ 午前中は2度寝ですごす。午後から、旧友の家にでかけてドリキャスでソニックアドベンチャー。あれもこれものてんこもりに、面白いけどやっぱりセガってあか抜けないなあという印象も。その後、飲みに出かけて旧友らで、カラオケまで。お決まりのコースである。

○ 途中、私の前の会社の後輩で、妹の高校時代の同級生で、中学時代は父親の教え子だったという因縁深い人物にも出会う。狭い町だなあ。それはともかく、元気そうでなによりである。 


<1月3日・日>
◇ 寝て起きて、東京へ。ひかりにはなんとか座ることが出来、そのまま新横浜をすぎるまでぐっすりと寝てしまう。手にはいちおう小松左京の短編集「時の顔」。巣鴨は初詣客で大にぎわい。

○ まるで誰かに荒らされたような部屋に帰る。事実、いつのまにかPSが強奪されている。そうした心理的に冷え冷えする状況に加え、物理的に温度が低く実に冷え冷えとしている。
 私の部屋は日当たりがきわめてわるくワインセラーというにはやや湿度が低すぎる空間である。だからものも腐りにくいらしい。が、そもそも外食ばかりの生活なので、生ものはほとんど部屋にないのだが。欠点は時々隣のロックにいちゃん(推定)が、エレキ(アンプなし)を奏でながら同じ曲(ある日は「夜明けのブレス」だった)を歌うことがあることだが、これとてほほえましいといえばいえないこともない。
 ともかく、そんな部屋なので、寒さの厳しい折に数日家を空けると、部屋そのものが冷え切ってしまって、暖房をいくらかけても暖まらないのだ。

△ 帰宅したら、録画しておいたアニメを見る。カレカノ2本、ビバップ「ガニメデ慕情」、星海の紋章1話。
星海は、地球人側の衣装がなんであんなに古風なんでしょうか? SFだから?(苦笑) 99年のアニメとしてはそのあたりにツメの甘さを感じるものの、トータルでは皮肉なしにいい青春SFアニメという感触。ただそのよさの何割かは、おそらく原作のものなんだろうけれど。というわけで原作を読むことを決める。カレカノ2本はあいかわらず好調だが、監督降板のウワサはどこへいけば読めるのかなあ?

○ 渋谷でバババっと本を購入した後、知人宅へでかけ7年ぶり?に素人麻雀。終電で帰宅。


<1月4日・月>
◇ というわけで、昨日買った「フィギュア王」で、唐沢俊一氏のコラムを読む。もちろん永山薫氏のページで読んだコトの顛末についての、いささか卑しい野次馬的興味がその動機である。例えば、わざわざ永山一派と名指しされた人物と唐沢氏はサイバンやってるなあ、とか、最後がイニシエーションの話題で終わっているのも、問題の「国際おたく大学」唐沢原稿を思い出すなあとか。なんで一派なんて刺激の強い表現を使ったのか、邪推はいりまくりで読んでしまうのは、第三者の特権ってやつでしょう。それはともあれ、唐沢氏はどのように訂正をいれるのであろうか。
 あと、ショタ的解説でいえば、永山氏は「男は射精の快感を理解しているが、女性の快楽は体感できない」という部分も重視していたような記憶があるのだが、もっとも、そのへんの議論意見については詳しくないので、ことのなりゆきを見ながら勉強でもしましょうか。

○ ところで、やはり気になるのはショタの語源。くだんのコラムでは唐沢氏の説である、80年の「太陽の使者 鉄人28号」の正太郎を起源に持つ、が再び紹介されていた。ファンロードの編集長K氏が造語したという説を採用している私としては、唐沢説の根拠が気になるのである。

○ 「クローズアップ現代」でミステリ系女性作家の特集。服部真澄、桐野夏生、篠田節子、高村薫。篠田氏は、予想以上に文学少女みたいな方なんですねえ。漫然とインタビューをしているので、番組が深まらない。しかも、早坂暁らしき人物がいちいち各人の総括をするのが2度手間というか、全く無駄であった。

○ 昨日から「快楽と救済」(梁石日・高村薫 日本放送出版協会 1500円)「これが答えだ!」(宮台真司、飛鳥新社 1300円)読了。


<1月5日・火>
◇ 帰省疲れというか、カゼがやっと完全になおろうとしているのか、ともかく眠くてしょうがない。枕が変わると眠れないタイプのボクにとっては、中途半端に治った風邪を帰省して完治させるのは難しいらしい。いまはだいぶ元気になって酒もおいしく飲めているのだが。それから、このページを読んでいる大叔父へ、それほど飲み過ぎていないのでご安心を。

○ 「りぼん」のふろくに、秋本治の書き下ろしがついているとはどういうことだ?? なぜオレがりぼんのふろくを読んでいるかということはさておき、やはりこれはおおきな謎なのである。ここ数号ジャンプを読んでいなかったが、そこに答えがあるのか?
 内容は「こち亀」15ページと、少女コマンドー……ではなくて、「ネットエンジェルいずみ」53ページ。
ネットエンジェルはなんつーか、パソコンの妖精と協力して悪いウイルスを退治するという最近の少女マンガにありがちなお話。ただ、こち亀でやっているデジタル系のネタの延長で、まあリアルといえばリア見えないこともない。ルにとはいうものの、少女マンガの基本的な話法をコピーしているのは、職人芸としてみごと。ただあえて苦言を呈するなら、主人公はあそこまで完璧ではなく、多少ドジなほうが読者の感情移入をそそると思うのだが。これではあくまでも少女マンガの(笑えない?けど楽しい)パロディにしかならないような気がする。

○ 「火星旅団ダナサイト9999」をみる。主人公の名前からして台場哲郎というのはわかりやすい。とはいうものの、東京ファンタの大画面でみたらそれほどオモシロクはなかっただろうな。いびきをかいて寝ていた人がいたというウワサの「アレクサンダー戦記」ほどでないにしても。だがなあ、有紀レイ(螢でないのが、ポイントね。でも、どんな漢字なんだろう)の胸は今風だが松本テイストでない。むしろ酒乱の森木雪(このネーミングもわかりやすい)という、はじめてアニメで描かれた松本庶民派美女のほうがイイ感じである。だから、オレは松本梨香演じる彼女を見ながらテレビ版「漂流幹線000」を夢想するのであった。    


<1月6日・水>
◇ いろいろ書こうと思っていることを忘れてしまうのは、30男の宿命なのだろうか。とりあえず、「広告批評」で、幸福と不幸の誤植としか思えないものがあったことを書いておく。ピアスの「悪魔の辞典」からの引用で「幸福−−他人の幸福をながめることから生ずる快適な感覚」ってことはないでしょう。

○ 最近悩む(苦笑)のは、好きとすごく好きは違うということ。所詮、オレが好きといっているのは「好き」にすぎない。「すごく好き」というのは、もっと強度のある感情なのだ。だから「すごく好き」に触れると、オレは跪くしかないのである。オレは表面をなでているにすぎ、ないし、そこから先にいくにはどうすればいいのかといえば、チキンランに耐えることしかないと思う。ブレーキを踏まない勇気というのは、だいぶ前にも誓ったけれどなかなか難しい。今日も一日終えて、いろいろ反省の垢を落としているのだった。
 あー、念のため、恋愛の話ではないので深読み禁止。
  
○ 個人的年賀状の多くが「結婚しました」というのが多くて幸せそうでなによりとおもいつつも、なんだか独身が減っていく寂しさを味わった年始であった。昨年の目標は、「現代美術」と「テクノ」だったが、どちらも結局手つかずのままである。というのも、結局自分を変化させるほどの量を摂取することができなかったからだ。まず、量がないと自らの指向は形成されない。このあたりが課題である。今年の目標は結局、「映画」と「本」の大量摂取となりそうなので、音楽と美術はずっと「趣味の趣味」の域を出そうにない。

△ テレビで八代亜紀が「絵と歌以外は才能ないです」といっていたが、確かに商才(「八代茶屋」)はなかったよなあ。

○ ネットの上のアグレッシブな意見交換とはいえ、「和平交渉」が不発におわるのは野次馬として残念なものである。(極私的感想なのでリンクはしない)


<1月7日・木>
◇ 去年から気になっていたこと。年を取ると、忘れたと思っていたことを急に思い出すのだ。
先月の「日経エンタテインメント!」で、「ハッピー・マニア」の次は「ご近所物語」がブレイクするかもという記事が載っていた。しかし、連載終了して、メデイァミックス(というかアニメ化)も一度終了しているのに、この記事ってまさかエイプリルフール企画でもないと思うのだが、ナニを根拠にこんな記事が掲載されたかがまったくよく分からない。
 いまは一服状況とはいいつつもまだ根強い人気がありそうな「CUTiE」読者と、「ご近所物語」の主人公達はけっこう近いところにいるとは思うし、このあたりが日経エンタ!(別の雑誌と間違えそうな略称だなあ)の読者の年代とそれなりに重なっているということも想像に難くはない。
 すると考えられるのは、「ご近所」のドラマ企画が進行中というセンだろうか。青春群像劇だからキャスト的にも話題を集めるのは簡単だろう。確かにこれならこれで原作が再度ブレイクという可能性もあるとは思うのだが……。というわけで、今年前半は、「ご近所」の動向をチェック……か?
 しかし、この話題を書こうと思ったら雑誌が見つからない。事実誤認があったら申し訳ない。

○ 伝言ダイヤルで出会った若い娘に、睡眠薬を飲ませていた(と思われる)男が逮捕された。カネかカラダかはわからないが、ヒトの欲望の基本は変わりはしない、ということだろう。そして、ついクスリを飲んでしまった女性にもなんらかの欲望があり、それをつつかれたからこそ、こんなご時世にクスリを飲むなんて言うリスキーな行為をしてしまったのではないだろうか。
 どちらも愚かというのも当たり前すぎるぐらい愚かしいのだが、ヒトはそんなにかしこくもなれないのだとやはり思う。では、ヒトは賢くなれるのだろうか?と大げさなことすら考えてしまうのだが、それについての現時点での個人的な答えは「賢くなるのではなく慎重になるだけである」ということかな。本質は変化せず技術が身に付くだけなのだ。
 
◇ 仕事が終わって8日明け方に帰宅。今日は昨年から読んでいた「日本の近代9 逆説の軍隊」(戸部良一、中央公論社 2400円)をやっと読了。ちゃんと赤エンピツひきながら書けばよかったかも。続けて「星界の紋章I」(森岡浩之、早川書房 500円)も読了。テレビだとここいらで4話ぐらいかな。13本なら概ね計算があいそうだけれど。感想はとりあえず3冊読み終わったら書くつもり。


<1月8日・金>
◇ というわけで目覚めたら昼過ぎ。会社に行く前に秋葉原に立ち寄って、必要なケーブル類を買った(はずが、ぜんぜんマシンに合わないことが後で発覚)。ついでに、ハービー・ハンコックのCD「スピーク・ライク・ア・チャイルド」なぞを思いついたように購入する。

○ 明け方に、帰宅して録画しておいたビバップを見る。その内容はまあいいとして、録画終了時間間近の「星界の紋章」の番組宣伝にビックリ。といってもたいしたことはないのだけれど、ラフィールに「そなたも加入するがよい」といわれれば、なかなかにクルものがある。というわけで、今日は「紋章」の2巻をかなりのところまで読んだ。読み切ってもいいのだけれど、明日は在宅勤務なのでさっさと寝てそなえることに。


<1月9日・土>
◇ 寝て起きて、昼前から在宅勤務を始めるが煮詰まり仮眠。再び起きて再トライ。とりあえずコンプする。それから、ダーティー松本先生も時折使っているというウワサの巣鴨駅前の白札屋に出かけて夕食。うーん、やはり和民のほうが美味しいなあ。そこで「星界の紋章II」読了。

○ 酔っぱらった後にレンタル店で借りてきて「アンドロメディア」鑑賞。途中で寝てしまうが、別に後悔はしない。うーん、70年代後半の大林宣彦だったら、もっと技術的な間違いはいっぱいあったと思うけど、もっとアイドル映画としてコテコテに仕上げてくれただろう。ベタなお話のわりには、そういう「濃さ」が伝わってこないのは、シナリオ上の問題もさることながら、三池崇史とアイドル映画の相性がそうとう悪いということなのだろう。脚本協力には当然ながら、三池組?のNAKA雅MURAの名前もあった。

○ 夜はアニメ「星界の紋章」の第2話。1話よりいい感じだし、ラフィールの声がよかったのでそれだけで80点はあげましょう。原作は、会話のシーンになると、設定の説明以外の部分でもちょっと冗長なやりとりが続く傾向があって、そのあたりがいかにも初長編という印象があるのだが、シナリオ化でのそのあたりのはしょり方はよかったんじゃないでしょうか。でも、演出にもううちょっとリズム感があってもいいかも。
 
○ そのあと「クレヨンしんちゃん 電撃ぶたのひずめ大作戦」を見る。さすがにこのシリーズも息切れしている感じはある。今回の欠点は、しんのすけがそれほど活躍しないこと。ななのだが、それでも見所はちゃんとあるので俺的には「可」ではあるのですが。寝る前は買い込んできたアニメ雑誌と「噂の真相」。


<1月10日・日>
◇ 思いついたように、部屋の片づけと掃除をする。久しぶりに足のないベッド(←万年床ともいう)をあけて、不要な雑誌を捨て、コロコロを絨毯にかける。途中から疲れてペースダウンするが、まあ概ねの目的を達成する。

○ 「噂の真相」でNAKA雅MURAのインタビューを読む。詩人ですか。それほど器用なタイプではないと思ってたんですが、そこまでギリギリの感情がこもっている言葉をいえるあたり、相当マジメな人なんだなあ。もしかすると、生きていることがツライタイプ(別に自殺志願者という意味ではない)かもしれない。「私には言葉もなかった」という永江朗氏の結びの一言に、私も言葉がなかった。

△ 午後はマンガをまとめ読み。「少女ケニア」(かわかみじゅんこ、宝島社 857円)、「伊藤潤二恐怖マンガコレクション15 死びとの恋わずらい」(伊藤潤二、朝日ソノラマ 552円)、「タイムスリップ」(山岸涼子、文藝春秋 619円)、「道玄坂探偵事務所 竜胆」(花村萬月・市東亮子、秋田書店 524円)。「ガンフロンティア」(松本零士、秋田書店 562円)は途中まで。

○ 居酒屋で夕食後、帰宅して昨日の仕事の残りを片づける。