- Church -
彫像
: ガーゴイルは、そこに倒れた彫像を見つけた
それは、まぎれもなく自分と全く同じ姿をしたものであった。
人間が、なぜ魔物の像を作ったのか?
我々は憎まれる対象ではなかったのか?
『お前は以前、人間により大切にされた時がある』
ガーゴイルの意識が語りかけた。
それはひとつのキーワードとなり、ガーゴイルの意識をかけめぐった。
失われた記憶の再生は瞬時にして完了した。
『人間の価値観の変化が今の自分につながっている。』
あまりにも、もろいその姿はガーゴイルの意識に変化を与えた。
『人間とは何と悲しいものか・・・。』
そして、彼の意識は『優しさ』と『愛』に目覚めた。
スイッチ : 突如、教会の鐘が鳴り響く。
その時、スケルトンの意識に電撃が走った。
鐘の響きと共に、スケルトンの意識の中に光りが生じ、それはしだいに輝きを増していった。
『これは・・・この光りは!』
鐘が鳴りやんだとき、スケルトンは自分自身を知った。
肉体もなく、ただ骨のみで動くことのむなしさを。
人間の無念さが己を生み出したのである。
スケルトンの意識に人の無念さを想う気持ちが生じた。
それこそが『優しさ』と『愛』である。
スケルトンは弔忌鐘を手にいれた。
彫像 : その時、ハーピィの目に、ガレキの中の1つの彫像がうつった。
それはガレキの中にあって、まさに奇跡としか言えないほど無キズであった。
まるで何者かに守られたかのようなその彫像は『母子像』であった。
周囲の荒れはてた光景と、その『母子像』は異様な対比を見せていた。
かえってそれが『母子像』の存在を目立つものにしている。
ハーピィが、それに注目したのも何ら不自然な事ではない。
本来、ハーピィは卑劣なものであるがこの『母子像』はなぜか意識の奥底に訴えるものがある。
それは、今までとは全く違った感覚・・・
しかし、なぜかなつかしい・・・
そう、私は確かに覚えていた・・・。
ハーピィの意識は今、その深淵から湧き上がる光に満ちていた。
魔物としてのハーピィ本来の意識は、当初この突然変異の新しい感覚を拒否しようとした。
しかし、本能は拒否できようはずがない。
それは理解する、しないではなく、本来ハーピィが持っていた意識なのだ。
魔物としての存在自体により徐々に抑制され、姿をけしていただけなのだ。
今、ハーピィの意識に『優しさ』と『愛』が戻ってきた。