夜、実家から電話があった。今思えば酒が入ってたとはいえ、親父の言ってた事は何てことない内容だった。はいはい、と軽く聞き流せばよかった。なぜそれが出来なかったのだろう?まず親父がキレた。続いて俺がキレた。相手は母親に代わった。俺はひたすら屁理屈をコネまわし、母親を困らせた。必死になだめる母親。俺の怒りは収まらず、ついに直接当事者の祖母と話す事になった。やめとけばよかった。祖母は落ち着いていた、なんて事はなかった。原因は誤解と拡大解釈だった。何故きづかなかったんだろう?俺のせいで傷口は確実に大きくなった。
分析してみた。親父の言いたかった事は今ならよくわかる。ゴッドマザーの機嫌は絶対に損ねてはいけないのだ。でも俺はそんなに悪いか?俺は自分なりにやっている。金をせびった事もない。年に2回帰省もしているし、親戚にも挨拶に行く。人に言えないような仕事をしているわけでもない。唯一つ悪い事があるとしたら、地元にいないという事だけだ。そうか、今回の件は「地元にいない」事を指摘されたように思えた。なるほど、そこに負い目がある俺は完全に図星をつかれたんだ。俺がキレた原因はどうやらそれ。そりゃ俺だって出来れば地元で仕事したいし、結婚して子供も欲しいよ。それは簡単には行かないし、今を一生懸命だから今の俺がいるんだよ。
どうしたらいいんだろう、としばらく考えたが答えは出ない。俺は今のところ自分の意思で地元に帰るつもりはない。クビにでもなれば別だが。だから正直親戚に対しての負い目は全くない。ヒデ風に言えば、「自信と誇りの選択」だからだ。だが、俺のせいで両親が親戚から何か言われるのは耐えられない。
そこまで考えて、もう一度電話すると母親が出た。正直に悩みを打ち明けた。すると、「あんたの好きなように生きなさい。それより、帰って来た時何食べたい?メール送っといて」との事。瞬間、悩んでたのがアホらしくなった。やはり、あの祖母と30年近く暮らしてきた人は凄いと思った。
恐らく、多くの人はなんらか背負ってるものがあるだろう。その重さも人それぞれだろう。でも確実に言えるのは、背負ってるものがある人が強いという事だ。俺は何も背負ってない人には絶対に負けない。なんかB級ヤクザ映画みたいで痛いけど、本当にそう思うよマジで。一回しかないんだから、淡白には生きたくない。