抗精子抗体について

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精子は女性のからだにとって、異物です.

したがって、夫婦生活により女性の体内に精子が入ると、それに対する免疫反応として、抗体ができることがあります.

これを抗精子抗体といい、原因不明不妊症の約 13 %に認められます.

抗精子抗体ができるのは、ごく一部のひとであって、どうして一部のひとにだけできるのか、その理由はよくわかっていません.

この抗体は血液検査でわかるのですが、頚管粘液、子宮腔、卵管内、卵胞液内にも出現します.抗体が精子の尾部の膜に結合すると、その一部に損傷が起き、それが細胞内 pH や浸透圧に影響を与え、精子は運動を停止するのではないか、と考えられています.

ですから、フーナーテストは不良、となります.

治療としては、昔は抗体価を下げるために、六ヶ月以上コンドームをつけて夫婦生活をして精子を遠ざけるようにするとか、ステロイドホルモンを用いる、頚管粘液を避けるために配偶者間人工授精(AIH)をする、などしていましたが、極めて妊娠率は低いものでした.

最近では、IVF-ET が第一選択となります.

抗精子抗体を持つ患者の IVF-ET での妊娠率は、他の原因による IVF-ET での妊娠率よりもかなり高い、といわれています.

その理由として、抗精子抗体の存在が、受精にはマイナスにはたらくが、いったん受精卵となれば、着床に関してはプラスにはたらくのではないか、という考えがあります.

妊娠の維持には、胎児に対する積極的な免疫反応が必要なのですから(習慣流産と免疫を参照)、説得力のある考えです.

でも、それについてわたしと神谷先生で議論したことがあって、結局、抗精子抗体の存在を除けば妊孕性のある健康な女性なのですから、受精卵さえ手に入れば妊娠率が高いのはあたりまえではないのか、という結論になりました.

わたしと神谷先生も数例の経験がありますが、抗精子抗体の患者の IVF-ET は、ほとんどが一回目で妊娠しています.

わたしの患者さんでは、一回目で妊娠して分娩後、すぐ自然妊娠したひともいます.抗精子抗体が強陽性のひとでした.抗精子抗体は抗体価の変動が激しいことが知られているので、一回目の妊娠で(原因はわかりませんが)抗体価が下がったのかもしれません.

いずれにせよ、抗精子抗体陽性の不妊症のひとにはただちに IVF-ET をおすすめします.

わたしは、不妊症で初診の患者で妊娠の既往のないひとには、全例抗精子抗体検査をしています.