B型肝炎のキャリアーについて

[ おしゃべり 伝言板 | 不妊症 Q&A | 診療案内 | 体外受精のあゆみ | 発表論文 ]

[ ホーム ]


血液検査で、HBs 抗原が陽性といわれた場合、ウイルス肝炎の原因である HBウイルス(B型肝炎ウイルス)が肝臓にいることを意味しています.しかし、多くは肝炎の症状を示しません.このようなひとを HBウイルスキャリア(保菌者)といいます.HBウイルスキャリアは、日本では 1 %弱の頻度であって、けっしてまれなものではありません.

HBs 抗原が陽性、というだけでは病気ではありませんし、肝機能検査で異常がなければ全くふつうの生活をして結構です.

検査の解釈

HBs 抗原とは、たとえていえば HBウイルスの表面のかけらのようなものです.それに対して免疫ができてくれば、HBs 抗体というのが陽性になります.

HBs 抗原陽性であれば、つぎに HBe 抗原の検査をします.これはいうなれば HBウイルスの本体そのもので、これが陽性なら強い感染力がある、といえます.これに対して免疫がついてくると、HBe 抗体が陽性となり、感染力が下がってきます.

検査の結果として、いくつかのバリエーションがあります.

・HBs 抗原陰性かつ HBs 抗体陰性・・・・HBウイルスは存在しません.また、感染したこともありません.

・HBs 抗原陰性かつ HBs 抗体陽性・・・・HBウイルスは存在しません.過去に感染して、免疫ができた(治癒した)状態です.

・HBs 抗原陽性の場合

1.HBe 抗原陽性かつ HBe 抗体陰性・・・血液中に多数の HBウイルスが存在し、感染力がきわめて強い.出生した児には(児に何もしなければ)95 %以上に感染し、HBウイルスキャリア率は約 85%です.

2.HBe 抗原陰性かつ HBe抗 体陽性・・・1.のひとに、免疫がついてきた状態です.児に何もしなくても感染は 30%以下、一時的に 6-7%にHBs抗原陽性となりますが、ほとんどは一過性で HBウイルスキャリアになるのはまれです.

3.HBe 抗原陰性かつ HBe抗体陰性・・・1.と 2.の中間の状態.血液中の HBウイルスがかなり減少し、免疫がつきつつある状態です.児への感染率も、 1. と 2.の中間くらいになります.

出生児の感染防止処置

母体の HBs 抗原が陽性の場合、健康保険で出生児へ感染防止処置を行います.

まず、抗 HBsヒト免疫グロブリンを生まれてから 48 時間以内に大腿部に注射します.また、生後 2ケ月にもこのグロブリンを注射し、HBワクチンを生後 2、3、5ケ月に上腕に皮下注射します.なお、HBe 抗原陰性の場合(上記の2.の場合)二回目のグロブリンを省略しても良い、とされています.

生後 6ヶ月目に検査を行い、十分なHBs 抗体ができていなければワクチンの追加接種を行います.

感染防止処置をした場合の児への感染率

感染防止処置により、出生時の産道感染はほとんど防げますが、残念なことに胎内感染が約 5%くらいあります.しかし、HBウイルスには催奇形性はないので、それに関する心配はありません.胎内感染の場合、HBウイルスキャリア率は約 20-30%です.その子どものうち、約 10%が 20-30 才頃に肝障害を起こすことがあります.すなわち、HBウイルスキャリアの母体から生まれた児のうち、将来肝障害を起こす確率は約 0.15%以下です.あまり心配しないほうがよいでしょう.

母乳哺育は可能か?

HBウイルスキャリアの母乳を検査すると、HBs 抗原が陽性のことがありますが、母乳栄養児と人工栄養児とのあいだでキャリア化に差が認められず、母乳を禁止する必要はありません.