ART と先天異常

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ART と先天異常について、虎の門病院産婦人科部長、佐藤孝道先生は、「産婦人科治療」98年3月号で、以下のように述べています.

「・・・ART 後の出生児に関するデータは多数ある.しかしそのほとんどは、

1.適切な対照群(遺伝的な背景の差、年令の差、生活環境の差などを考慮した対照群)がない.

2.治療に複雑な要因(たとえば治療法が一定しない、治療法を選択する基準が複雑、不統一など)が関与する.

3.先天異常にかかわる診断基準(たとえば、誰がどの時点で診断するかによって異常の頻度は大きく異なる)が不統一.

などの理由で、ART が先天異常の増加につながらないと結論できるものにはなっていない.一方、増加させるという確たる証拠もない.たぶん増加させないのではないか、というのが一般的な考えである.・・・」

また、同じ号で自治医科大学産婦人科助教授、荒木重雄先生(札幌医大の大先輩です)は、Plachot らの論文(下図参照)を引用し、以下のように述べています.

「・・・Plachot らは、ART において染色体異常の頻度は、採卵した卵の 32%、精子の 8%、また、体外受精で得られた胚の 37%、その後の胎芽、胎児の段階で淘汰を受け、新生児では 0.6%程度と報告している.これは受精から出産までの過程で染色体異常を淘汰する大きな力が働いていることを意味する.・・・」

私の考えでは、そもそも染色体異常の受精卵は着床しないし、したとしても流産に至るので、生まれた児の染色体異常の確率は ART による妊娠も自然妊娠も変わりがないのではないか、と思っています.ただ、両親のどちらかに染色体異常がある場合は、確率が変わってきます.

参考までに、欧米のデータですが、自然妊娠における母体年令と出生児(流産を除く)の染色体異常の確率の一覧表を以下に載せます.

一般に、羊水穿刺による染色体検査で(感染などで)流産する確率は、1/200 以下と言われていますので、35才で染色体検査で流産する確率と染色体異常の児が生まれる確率が同等となるわけです.

そういうこともあり、羊水染色体検査は 35才以上が適応となります.

Plachot らによれば、ARTによる染色体異常の頻度は、新生児で 0.6%、すなわち 1/167 くらいですから、35才以上の不妊症患者にとって、ART による染色体異常を云々してもあまり意味がないわけですね.

母体年令

ダウン症候群

すべての染色体異常

母体年令

ダウン症候群

すべての染色体異常

25

1/1250

1/500

40

1/100

1/60

30

1/950

1/400

41

1/80

1/50

31

1/900

1/400

42

1/60

1/40

32

1/800

1/300

43

1/50

1/30

33

1/600

1/275

44

1/40

1/25

34

1/500

1/250

45

1/30

1/20

35

1/400

1/175

46

1/25

1/15

36

1/300

1/150

47

1/20

1/10

37

1/225

1/125

48

1/15

1/10

38

1/175

1/100

49

1/10

1/5

39

1/125

1/75