※男女共に裸のため注意。SSつきイラスト2枚。
※絵部屋と文章部屋両方に同時UP。














【沈黙】

◇◆◇◆◇




沈黙が降りている。
雨音だけが聞こえている。
私は仄暗い部屋の中から、窓に伝う雨の跡を眺めている。

眠っていたひとが起き上がった気配がした。
ひたひたと、裸足の足音がこちらにむかってくるのが聞こえ、背後で止まった。
ああ、このひとは何を言おうかきっと迷っている。
微かな息づかい。
けれどもそのひとの口から、零れる言葉はなかった。
振り向きもしない私の態度を、拒絶と受け取ったのかもしれない。
違うか。
彼女もまた、知っているだけ。

約束は交わさない、交わせない。
だから、沈黙が降りている。
雨音だけが聞こえている。

◇◆◇◆◇




沈黙が降りていた。
雨音だけが聞こえていた。
窓からの微かな光をぼんやりと映す床の上に、わたしはぺたりと座っている。

背中越しの沈黙を、彼の拒絶だと思えるくらいなら、
最初からわたしはこのひとに惹かれていなかったろうと思う。
この沈黙は、おざなりな言葉で偽りの夢を紡げないこのひとの正直さだ。
離れたくない、離れられない。
でも、わたしは自らの意思で別の道を行く。
これが矛盾していない想いだと言葉で証明するのが難しいなら、何も言わなければいい。

約束は交わさない、交わせない。
だから、沈黙が降りていた。
雨音だけが聞こえていた。

◇◆◇◆◇

微かに触れ合った肌からぬくもりが伝う。
沈黙が降りている。
雨音だけが聞こえている。



◇ Web拍手 ◇


お触り同盟の企画に投稿した作品。
「未完のセレネイド」のイメージでトロワ設定。
女王と違って補佐官なんだから辞めてしまえという選択肢をあえて選ばない二人。

2009/10/11






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