99/03/31
どうも世界が変だ

 明日から4月ですね。春本番のこの時期になって、東京は冷え込んでます。

 先日、BBSのほうでtakeさんが書いてくださっていましたが、太平洋岸のほうは、4月の上旬くらいまでは、花冷えで冬に舞い戻ることが多々あります。海や山は、まさに突然牙を剥いてきます。この時期アウトドアに繰り出す人は、くれぐれもお気をつけを。

 桜ももう7、8分咲きとなって、「花見で宴会だ!」と、浮かれたくなってくるところですが、世間を見渡して見ると、そうそう楽しんでもいられないような感じですね。

 遠くヨーロッパではコソボ紛争に対するNATOの介入、近場では日本海の自衛隊出動騒ぎ……他にも、世界中できな臭い動きが活発になってきています。

 NATOの件は、「人道弾圧に対する最終的な手段の発動」と、それらしい名目ではありますが、誰が笑うのか考えると、兵器産業、その他の関連産業ばかりではないかという気がします。

 日本海の捕り物劇は、拿捕せずにわざと北朝鮮に逃がして、危機感を煽り、軍備増強の布石に使うフレームアップだったような気がしてなりません。

 もうすぐ21世紀という今このとき、物質文明の恩恵にどっぷりと浸かってきてしまった我々は、次にどんなパラダイムを見出し、その実現に向けて、どんな具体的アプローチをしていけばいいのでしょうね?

――― uchida

 

 
 

99/03/27
先生→さん

 東京でもソメイヨシノが咲き始めました。

 今年は、怨念の花粉症も出ずに、穏やかに(足の持病は出てしまいましたが)春を迎えて、桜の美しさがとくに心に染み入ります。来週か再来週は、一年近く休載していた月刊オートバイの『ツーリングどんどん』が久々の再開(といっても単発になりそうですが……)となって、その取材ツーリングに行ってきます。国産のビックバイクもいろいろと出揃ったところなので、どれか一台借りて、グランドツーリングと洒落こもうかななんて思ってます。

 明日、神田三省堂で、ツーリングライダー賀曽利隆さんのサイン会があります。先日、本を買いにいったとき、案内のポスターを見かけたのですが、「作家 賀曽利隆先生」と墨字で書いてあった上に紙を貼って、「モーターサイクリスト 賀曽利隆さん」となっていました。

 賀曽利さんのリクエストで書き直されたのでしょう。

 権威を嫌って、常に在野の心で旅する賀曽利さんらしいなと、思わず笑みがこみあげました。明日は、そのサイン会に乱入しようかななんて思っています。

――― uchida

 

 
 

99/03/19
やっぱり、春っていいなあ

 すっかり春らしい陽気になりましたね。

 数日続いた天気が、今日は生憎の雨ですが、菜種梅雨は雨が上がれば、より暖かくなって、花もさらに咲いて、気持ちもうきうきしてきますね。

 今年は何故かもう一方の持病(グシュグシュデロデロのほう)が出ずに、春を乗り切れそうです。「この世から春なんかなくなってしまえばいいのに」と、この20年恨み言をいいながら過ごしてきたのに、今年は、「やっぱり、春っていいなあ」と、なんだかこれから小学校に入る幼児のように晴れやかな気分です。

 ぼくの人生が、あのおぞましき花粉症から解放されるなんて思ってもみなかったので、ほんと、得した気分です。テンプラ粉と油とストーブを持って、春の味を満喫しに、フィールドにでかけようっと!

――― uchida

 

 
 

99/03/11
振り返る作業

 本日、STEP13まで全てリライト完了してアップロードしました。

 もちろん、これでおしまいというわけではなくて、これからも新しい内容を盛り込んで更新していくつもりですが、とりあえず、単行本用の原稿としてはこれで仕舞いという感じです(まだ『はじめに』が残っていますけど……)。

 全体を書きなおしてみて、たとえば環境ホルモン汚染の話題や、新しい化学繊維素材のことなど、この数年で変化したことがたくさんあることに気づきました。漫然と日常を過ごしていると、変化したことにも気づかないまま流されてしまいます。こうして、ときどき総合的に振り返る作業をすることで、また新たな気持ちになることができます。

 予定よりだいぶ早くリライトが済んだので、ゴールデンウィーク前には、本として出せるかもしれません。詳しいことが決まったら、またお知らせします。

――― uchida

 

 
 

99/03/05
歩行困難

 先日から、ちょっとした事情で歩行が極めて困難な状況にありまして、仕事場でおとなしく原稿を書いております。尿酸値の高い方は要注意……といえば、様子がわかる方もおられるかと思います。

 ぼくは、運動の後の五臓六腑にしみわたるあの清々しい液体をこよなく愛してきましたが、ぼくの深い愛への返礼が、よもや、このような仕打ちとして返ってこようとは……それでも愛することを止められない哀しい男なのです。

 と、関係ない話になってしまいましたが、持病のことはさておき、快調にリライトを重ねております。

 今日はstep9とstep10をアップしました。ようやく終点が見えてきたという感じですが、まだ、本にするにはイラストやら写真やらが必要な上、そのキャプションも書かねばなりません。幸い、もう一つの持病(春になるとグシュグシュデロデロのみなさんおなじみのやつですね)は今年は軽いようなので、この勢いで早いとこ書き上げ、歩行困難も蹴散らして、いろいろ溜まった憂さなんぞを晴らしに、フィールドへ飛び出したいと思います。

――― uchida

 

 
 

99/02/28
二輪乗り

 昨日の夜は風が強かったですねぇ。オートバイで仕事先から帰ったのですが、吹き飛ばされそうになりましたよ……重心の高いオフロードバイクで強風の中を走るのは、えらくスリリングです。

 でも、このところ自宅と仕事場との間の20kmあまりをオートバイで通勤しているのですが、気分が変わっていいですね。「やっぱり、自分は二輪乗りなんだなあ」なんて、思いを新たにしています。

 サイトの更新のほうも、なかなか快調に飛ばしています。この調子でいけば、三月上旬に入稿して、ゴールデンウィーク前には本になるといったスケジュールも夢ではないのですが……。がんばっていきますので、応援してくださいね!

 ところで余談ですが、DTIのシステムが変わって、アクセスカウンタのデザインが変わりました。前のは青枠で全体とトーンが合っていたので気に入っていたのですが、今度のは緑枠で、サイトのデザインから浮いてしまいました(サイトの『デザイン』なんていえるほど気合いが入っているわけでもないんですが……)。

 もうだいぶ春めいてきたし、いっそ、サイト全体をグリーン系で統一してしまおうかとも思っています。

――― uchida

 

 
 

99/02/27
チキサニ

 本日まで快調にリライトを重ねています。口調なども統一したので、読みやすくなったと思いますがいかがでしょうか? 

 ずっとずぼらしてたのに、本になると思ったら気合が入るのだからゲンキンなものですね。でも、サイトを更新することがそのまま仕事に反映されるというのは不思議なものです。

 ライターという職業がら、e-mailで原稿を送るというパターンには慣れていますが、趣味の一環であるページを更新することがそのまま原稿のアップになるというのは、初めての体験です。

 このところ忙しくて、仕事をいくつも抱えているのですが、その合間に、けっこうな時間を割いてサイトの更新をしていると、仕事をさぼって趣味に精を出しているような後ろめたい気がします。正真正銘の仕事なのだから、胸を張っていればいいんですけどね……。

 このサイトが本になることになったので、二匹目のどぜうを狙おうと、書き溜めておいた小説も公開することにしました(笑)。もう3年前にアップしていたのですが、いろいろな版元の間をたらい回しされているうちに、日の目を見ずにお蔵入りと成り果てた原稿です(そんなのばっか……)。

 ゲーム業界に首を突っ込んだシナリオライターが経験するアルタードステーツといった内容ですが、これを書き上げると同時に、ぼく自身が、ゲーム業界でシナリオを書くことになったというシンクロニシティのような経験をもたらした作品です。

 ファイルが大きくて、一気に公開するとDTIの割り当てディスクスペースを上回ってしまうので、週刊か月刊か、そんなペースで連載の形をとっていこうと思います。よろしかったら、この『チキサニ』も御贔屓にしてください。

 ちなみに、この題名『チキサニ』は、アイヌ語で『ハルニレ』のことです。アイヌの創世神話では、天から降りてきた疱瘡の神様とハルニレとの間に生まれた人間がアイヌの祖先といわれています。何故、その題名がついたのかは、本編のほうで……。

――― uchida

 

 
 

99/02/20
世界を覆う秘密結社の陰謀

 step2の改訂版をアップロードしました。おおもとのデータは95年頃書いたものですが、4年も経つと、さすがに内容が古くなっている部分がありますね。なにしろアウトドア用具の技術革新には、めざましいものがありますからね。

 夏のシーズン前には、このサイトを本にしたいので、なんとか頑張って新しい内容を盛り込みつつ、来月中には改訂を終わらせたいと思います。

 そういえば、先日、新型パソコンのレビューを書いたのですが、こちらはまた、アウトドア用品の技術革新どころではありませんね。なにしろ、三ヶ月前に出た新製品が、すでに型落ちという世界ですから。

 ぼくは、主にノートパソコンを担当したのですが、A4オールインワンタイプは限りなくデスクトップに性能が近づいていて、B5サブノートはますます薄く、しかもハイスペックになっています。これを書いているVAIOのPCG713なんて、「何、150MHZのCPUって? そんなのインテルは作ってたの?」といった感じです。これも買ってちょうど一年しか経ってないんですよ! 

 事務所にデスクトップを入れたのですが、これはK2−300MHZで、信じられないスピードでアプリケーションが立ちあがります。これを経験すると、もはや150MHZに戻れない。これはもう、世界を覆う秘密結社の陰謀としか思えません(^_^;)

――― uchida

 

 
 

99/02/13
リライト

 ようやく公言いたしましたとおり、ページリニューアルをアップロードしはじめました。第一弾はSTEP1です。

 言い回しを統一して読みやすくしたのと、最近までに変化があった内容の見直しを行いました。

 自分の原稿を時が経ってリライトするなんて、普段の仕事では経験しませんが、とても新鮮でした。いい中年になると、4年前なんて昨日のように思えるものですが、「なんだか、乱暴な書き方してるなあ」とか、「表現が甘いなあ」なんて、今よりも未熟だった自分を見詰め直しております。

 これが、12年前に書いた本となったら、どんなに恥ずかしいことでしょう? だけど、それもリライトして、体裁整えて再版してみたい、なんて野望を抱いたりして……。

 これから、月に3〜4章のペースでリニューアルしていくつもりですので、ご期待ください!

――― uchida

 

 
 

99/02/12
リニューアル

 今、記事のリニューアルに本格的に取り組んでいます。もうすぐstep1がアップしますので、出来次第アップロードします。

 ベースになった記事を書いたのは、4年前ですが、あらためて読み直してみると、グッズなどは技術革新でどんどん進化しているし、自分の考え方も微妙に変化していて、表現を変えてみたいことが多々でてきたり、そのときどきで気ままに書き足したもののトーンが本編に合ってなかったり……いろいろ目についてきて、けっこうリライトに時間かかってます。

 なんだか、他の仕事も忙しくなりつつあって……でも、今年は、年頭の誓いを守って、ジャカスカ更新していきますからね。

――― uchida

 

 
 

99/01/30
単行本化

 年頭に、「今年はページの更新を頻繁に行うつもりです」なんて宣言しておきながら、早、一月が経とうとしています。

 妙に、仕事以前の段階のことで空回りしたり、流行りのインフルエンザにやられて一週間を棒に振ったりと、今月は、どうもよろしくありませんでした。

 そんな中、一筋の光明は、このサイトの単行本化の打診をいただいたことです。その話しは、ほぼまとまりまして、夏のシーズン前の発売に向けて、もうすぐ編集作業を開始しようと思っております。

 そうなると、嫌が応でもサイトのリニューアルをしなければなりません。これで、年頭の宣言をきちんと実行できると、へんな風に胸をなで下ろしている次第です……いや、「尻に火がついた」といったほうが正確かな?

 とにかく、そんなわけで、二月に入ったら、サイトのリニューアルと、単行本用のアレンジを並列してやっていきますので、どうぞ、ご期待ください。版元や発売日時など、はっきりしたら、また発表します。

――― uchida

 

 
 

99/01/15
38回目の誕生日

 今日は関東地方にも雪の予報が出ていましたが、なんとか持ったみたいですね。

 思い返すと、昨年もその前年も東京は大雪だったような気がします。

 じつをいいますと、今日はぼくの誕生日です。気がつくともう38歳。「少年老いやすく学成り難し」、まさに実感です。そういえば、三つ四つの頃までは、ぼくの誕生日になると、女性はみんな晴れ着を着て祝ってくれているのだと思ってました。来年からは、「成人の日」が一月の第二月曜になるとか。ぼくのバースデイを日本中で祝ってくれるのも、今年が最後でした。

 二月に入ったら、このサイトにもよくいらしてくれるtakeさんの住む栃木県は栗山村に雪見酒しに行きたいと思ってます。スノーシューでも履いて、バージンスノーの奥鬼怒の山に登り、秘湯に浸かって疲れを癒そうという寸法。参加希望の方がいらしたら、BBSのほうに書き込んでください。

――― uchida

 

 
 

1999/01/01
あけまして
おめでとうございます

 昨年終盤は、仕事がたてこんだり、事務所開設のドタバタなどあって、このページの更新がおろそかになってしまいました。

 ようやく、今になって、ほっと一息ついて、じつに二ヶ月ぶりに、このコラムなぞ書いております。

 このページを見てくださって、いろいろご感想やご要望を寄せてくださった方々がたくさんいました。mailではご返事を差し上げたのですが、そのご意見などをなかなかページに反映できるところまでいっていなくて、申し訳なく思ってます。

 今年は、仕事も遊びも、地に足をつけてやっていきたいと思ってます。このページの更新も、頻繁に行っていくつもりです。

 今年は、いよいよ2ndミレニアム最後の年、あのノストラダムスの予言の年でもありますね。

 たしか、「ノストラダムスの大予言」という本が出版されたのが、20年以上前、ぼくが高校生の頃でした。あの頃は、自分が中年になって1999年を迎えるなんて、はるか未来のことだと思っていましたが、いつのまにやら、「少年老いやすく……」で、目の前に来てしまいました。

 でも、38歳なんていうと、いい老いぼれだななんて、当時は思っていたのですが、不思議と、今のぼくは、気力も体力も充実しています。

 昨年は、初夏になまった体を引き締めるべく、万歩計を腰にぶら下げて一日1万歩のノルマを意地になってこなしました。そのおかげで、体重はピークの頃より10kg近くも落ちて、フットワークも俄然軽くなりました。

 7月にオートバイ事故を起こしたものの、肘の骨折だけですんだのも、シェイプアップのおかげ。都内での仕事に飛び回るうちに、やはり拠点を構えて仕事しなければと、年末には、神宮前に事務所を構えることとなりました。

万事、天の邪鬼なぼくには、ノストラダムスの予言は最高の吉兆かもしれないなんて、年明け早々ハイテンションであります。

なにはともあれ、今年もよろしくお願いしますm(__)m

――― uchida

 

 
 

98/10/25
山は冬

 ここ数日、すっかり秋めいた日が続いていますね。そろそろ暖房機なんぞも引っ張り出そうかななんて思ったりして……。

 しばらくハードスケジュールが続いていたので、久しぶりに山に行こうと思って、ネットサーフィンしてましたら、北八ヶ岳の麦草峠に近い八千穂山荘のホームページを見つけました。

 そのトップに、「麦草峠積雪、チェーン必要!」の文字。ミドシップのMGFで、麦草峠まで行って、その先歩けばラクチンなんて考えていましたが、ノーマルタイヤのライトウェイトスポーツでは、ちょっと難しいようです。

 里は、いよいよ本格的に秋だなんて思っていたら、しっかり、山の上では冬が始まっているんですね。北八ヶ岳は真冬にクロカンツアーすることにして、今回は、どこか他でお茶を濁そうかなんて日和ってます。

 7月に事故に遭って、そのままスローモーの保険屋のせいでショップのガレージに眠ってしまっていたXR600がようやく修理に回りました。来月初旬に行われるデザートレースUAEチャレンジに出場する吉友寿夫さんのショップで、リニューアルの予定です。彼がレースから戻ってから着工なので、来月半ばになってしまいますが、寒風を衝いてダートを走りまくりたいと思ってます。

 山からも、オフロードバイクからも、少し遠ざかってしまって、どうも人間が腐っていたような気がします。昔の目標を思い起こして、ヒマラヤへ行ったり、海外のエンデューロレースに参加していきたいと思ってます。

――― uchida

 

 
 

98/10/11
インキュベーター

 ここ二、三日気持ちのいい秋晴れが続いてますね。

 三日前の晩、ふと夜空を見上げたら、すばらしく青空がきれいでした。夜に青空って、変かもしれませんが、明るい満月が浮かぶ空は、実際に深い青空に見えたのです。西から東へ流れる雲は真っ白で、昼でもない夜でもない、まるでこの世でない不思議な空間にいるようでした。

 自然のリズムにしたがって人々が生きていた頃、昼間は体を動かして活動し、夜になると、静謐な月明かりの元で、様々なことを考えていたのでしょう。月は、世界中の様々な文化の中で、知恵の象徴としてあらわされています。

 物質文明が猖獗を極めた20世紀は、月明かりを忘れ、ひたすら太陽に近づこうとしていたのかもしれません。これからは、叡智の輝きである月明かりを思い出し、静かに自分と向き合うことが大切に思えるような、そんな時代にしていく必要がある、そんなふうに夜風に吹かれながら思いました。

 昨日、大田区産業プラザで開催されたフォーラムに参加してきました。シリコンバレーで、ベンチャービジネスを支援するIBI(International Business Incubator)を主催するバーバラ・ハーレイさんを講師に、シリコンバレーがソフトウェアビジネスを中心に成功した理由を伺い、日本でベンチャービジネスを生み出すにはどうすればいいかを語り合うという催しでした。

 ハーレイさんは、シリコンバレーでのビジネスの起業は、“Easy to fail”であり、“Low risk high return”が特徴であると語られました。「失敗するのが簡単」「ローリスク、ハイリターン」といったことですね。「失敗するのが簡単」というのは、アイデアを起業に結びつけるのが簡単にでき、それで失敗しても、再起するのも簡単という意味です。「ローリスク、ハイリターン」は、そのままですね。リスク少なく起業できるから、Easy to failであり、成功すればhigh returnであるということです。

 可能性のあるビジネスをインキュベーター(卵をかえすという意味)と呼ばれる支援組織やベンチャーキャピタルが援助し、それを積極的に盛り立てて、事業としての成功に導く。それを彼らは、眉間に皺を寄せたガチガチの仕事人間としてでなく、ビジネスも人生を豊かにするためのイベントであるとエンタテイメント的にとらえて、みんなで、そのエンタテイメントをクリエイトしていくという形で臨んでいます。

 「状況の変化に対して、フレキシブルで、楽しく、やりがいを持ってみんなが取り組む」そんなビジネスのあり方が、今のシリコンバレーの隆盛を招いたのでしょう。ビジネスも人生にとって大切な一部であると考えれば、ただのこなし仕事として一日の大半を無気力に生きるなんてことはできないはずです。

 人生は、前向きに、自分で楽しくアレンジしていかなければならない。そのためには、ビジネスにも喜びを見出し、ともにそれを楽しめるパートナーとコラボレーションし、より豊かなものにしていかなければならないでしょう。

 だけど、エコノミックアニマルとしてこの半世紀を過ごしてきてしまった日本が、そんなふうに価値観を転換するのは、非常に難しいことであるように思います。

――― uchida

 

 
 

98/09/22
横浜シルクホテル

 先日、横浜の山下公園の側にあるシルクホテルを訪ねてきました。

 かつてはニューグランドホテルと並んで、横浜を代表する老舗のホテルでしたが、ニュージャパンの火災後、消防法が改正されてホテルとしての業務を停止しました。

 それから15年あまりも放置されていたものを、『人築夢街』という街興しの会社を経営されている杉原郁夫さんがみつけ、オーナーであるイギリスの会社を説得して、SOHO向けのオフィスとしてリニューアルしたのです。

 「古い建物は、人の温もりを感じさせるんですよ」と、杉原さんが言われるように、最近の妙に明るい無機質なビルとはまったく違って、足を踏み入れるなり、ホッと安らぐ気がします。

 ライアル・ワトソンやコリン・ウィルソンは、花崗岩にはその場で起こった事象を記録する『場』が存在するんじゃないかと言っていますが、天然石や天然木をふんだんに使ったこの建物の中にいると、長い歴史の中で刻まれた様々な人間の営みに包まれている気がしてきます。そういったものが、温もりにつながるのでしょう。

 6階から10階部分がオフィススペースになっており、海側の部屋からは、ベイブリッジが眼前を拝めます。当日は、抜けるような秋の晴空で、蒼い海には幾筋もの船の航跡が引かれ、とても日本とは思えないロケーションでした。各フロアには、ゆったりした共用スペースがあって、ここからは、さらに横浜のMM21の白亜のビル群が望めます。他にも、インターネットの専用線が各部屋に引かれ、会議室やポストなども用意されていて、しかも、坪3000円〜6000円というリーズナブルなリース料で、SOHOには、まさに夢のような場所です。

 ぼくなどは、ほんの少し余裕があれば、すぐにでも入居申し込みしてしまいそうなところでした。ところが、そんな恵まれた環境の中にあっても、けっこう軋轢があると聞きました。

 「ここにくれば、仕事のコネクションを紹介してもらえそうだ」とか、「仕事のネットワークを含めて、ホスピタリティとして面倒みてくれると思ったから入居したのに」といった不満が出ているというのです。

 杉原さんや、そのサポートをされている峯吉さんは、一生懸命、入居者同士の交流会や勉強会をアレンジしているのに、それにアクティヴに参加もせずに、不満をぶちまけている人がいたり、SOHOクラブという組織をそのために作っていて、その会費の使途に疑義をいだいたりしている人がいるとか。

 杉原さんは、同じように、日本中で眠っている建物をSOHOやベンチャー事業者のためによみがえらせて、それを繋いだネットワークを作ろうと考えられています。彼は、諸々の人と人との繋がりを、単なるリンクから、それぞれがしっかり自分の価値観とスキルを持った人同士が協同で活動する『コラボレーション』という観念を強調されています。

 ぼくがまだ青臭い二十代序盤の頃、浅田彰が思想界に華々しくデビューし、「構造と力」、「逃走論」で、不毛な連帯は止めて、個人個人が独立して自由に生きろとアジテーションしていました。既成の価値観に固定されることなく、常に疑いを持ってシフトしていくということは、古臭い言い方をすれば、「求道」と言えるかもしれません。でも、それは、ぼくには真理のように思えました。

 アナーキズムというと、無定見な無政府主義や快楽至上主義、方法論でいえばラジカルなテロリズムなどと混同されますが、それは大きな間違いで、人が個として独立し、他人の自由を尊重し、他人と協調して住みよい世界の創造に向けて努力していくことだと思います。

 人が生み出したシステムが、「人に奉仕するシステム」という本来の目的から転倒して「システムのために奉仕する人」となってしまったとしたら、人としての当然の権利として、そのシステムを廃止してかまわないと思います。

 話しが、少し脱線してしまいましたが、杉原さんが言うコラボレーションとは、まさに、そういう独立した個人が違いを尊重しながら、よりよい社会を創造するという共通の目的に向かって、力を合わせることにほかならないと思います。

 あなたの周囲に、ほったらかしになっているスペースはありませんか? もしあったら、そこをコラボレーションの拠点にしてみませんか?

――― uchida

 

 
 

98/09/19
パタゴニアとカイラス山

 先日の台風一過では、空気が澄んで気持ち良かったですね。空の深さが秋を実感させました。

 3000mクラスの山岳の稜線から、今頃の秋空を見上げると、息を呑むほど深く、大袈裟でなく宇宙との一体感を抱かせるものです。

 最近、山に対する郷愁が日に日に深くなっている気がします。三十代も終盤を迎え、何かが変わりつつあるのでしょうか? とくに、パタゴニアとカイラス山が頻繁に心に浮かびます。

 10代後半から20代前半、憑かれたように山に登っていました。あの頃は、ヒマラヤやパミール、ヒンジュークシュといった峰峰が恋の対象で、自分は一人きりで、自分の思い通りの人生を歩んで行くんだと、確信していました。

 あれから10数年が経ち、気がつくと、ぼくは東京の片隅に埋没していました。普通の人よりは変化に富んだ人生を歩んできたかもしれません。でも、それは、自分がイメージした自由な人生からはかけ離れていたような気がします。

 パタゴニアの風に吹かれるか、カイラスを巡礼すれば、あの頃の自分を取り戻せるかもしれないと、心のどこかで感じているのでしょうか? それとも、これが、中年の危機というやつでしょうか? 昨日はやたらに具体的なことを書いたと思ったら、今日はまた感傷的なことを書き連ねている……なんだか、危ない奴ですね。

――― uchida

 

 
 

98/09/18
硬派な靴は足が痛い?

 このところ、俄かに仕事が忙しくなってしまい、ページの更新が滞りがちです。

 メーカーさんにでも協賛していただいて、このページ自体を仕事にしてしまうと、簡単かな……なんてね。そういえば、アメリカでもっとも大きい、ということは世界でいちばん大きいアウトドアのチェーン店であるREIが、東京の郊外に大規模な店を出すそうです。ぼくは、アメリカに行ったときは必ず店を覗いてみますし、通販のほうは頻繁に利用しているので、その直営ショップが身近にできるというのは、期待大です。

 先日、台風5号が関東直撃したかと思ったら、今度は6号が九州を脅かしそうですね。異常気象というのは、そのときかぎりの突発性のものではなくて、傾向として続く現象らしいですから、もしかしたら、毎週、台風が日本列島を通過なんてことになるかもしれません。

 先日、登山靴のオーダーメイドで有名な巣鴨のゴローへ雑誌の取材で行ってきました。20年近く前、大枚4万円を握りしめて門を潜り、本格的な登山靴を作ってもらってから、そのメンテナンスなどで、度々足を運んでいるお店です。

 ちょっと頑固でとっつきにくそうな森本さんは、山はもちろん、オフロードバイク乗りでもあり、いろいろと話しが盛り上がりました。最近、テレビなどで紹介されたこともあり、足に馴染む健康靴といった認識でアウトドアシューズのオーダーに来て、履いてみると、硬いといって苦情を言うお客さんが多いそうです。

 アウトドアシューズに真っ先に求められるのは、堅牢性ですから、たとえオーダーメイドとはいえ、足に馴染むまでは、硬くて、軟弱な足には痛いもの。靴も道具ですから、馴染むまでにはしばらく時間がかかるのは当たり前です。そういう道理が、最近の日本人にはわかっていないみたいですね。

――― uchida

 

 

 


BACK NUMBER >>>

HOME