02/01/05
今年は...
昨年の世界は、新しい世紀の幕開けとしては、なんとも凄惨な事件ばかり相次ぎ、先行きが思いやられるような年でしたね。予測のつかないようなことが次々に起こる、そんな傾向は、今年はさらに加速していきそうな気がします。日本は、「空前の大不況」とか「IT不況」なんて、相変わらず「経済大国」という言葉が羽振りをきかせていた前世紀の夢から抜け出せずにいますが、世界は、確実に今まで人類が経験したことのない新しい波に飲み込まれようとしています。
INFORMATION TECHNOLOGYは、「IT不況」なんて言って寝ぼけている死んだ国のことなどおかまいなしに、どんどん発展しつづけています。情報の集約度とアクセススピードはかつて錬金術師や宗教家が思い描いた全能の知性に肉薄しているし、見えないところで、新しい関係性が築かれつつあります。
ぼくがこのサイトを開いて、今年は5年目。最初の3年間は、ごく限られた人だけがアクセスするマニアックなコミュニティにすぎなかったものが、この2年間で、どんどんアクセスが増え、メーリングリストなどのコミュニティも創発的に発展してきています。そして、ぼく個人にとっては、このサイトは、単なる趣味や道楽の域をはるかに越えて、自分のライフスタイルそのものに関わってきています。もちろん、その中には、表現者としての仕事も含まれています。
wwwが登場する以前の世界では、個人の発想や見解が社会に広がるためには、情報の卸売り産業ともいうべきメディアの介在が必要でした。まず、特定のメディアのおめがねに適わなければ、自分を表現したくとも、なかなかアピールすることができなかった。ところが、wwwは、まどろっこしい情報卸売り産業の手など経ずとも、個人がどんどん世界に向けて情報を発信することを可能としました。しかも、万人向けに中和された表現でなくとも、「わかる人にわかればいい」というわがままがいくらでもききます。
前世紀、ぼくが仕事をしていたメディアでは、「アウトドアライター」だとか「二輪ジャーナリスト」といったレッテルを知らぬ間につけられて、雑誌や本に紹介されてしまいました。だけど、ぼくが今までに一度だって「アウトドアライター」だったり「二輪ジャーナリスト」だったりしたことはありません。アウトドアも二輪もぼくのライフスタイルの一部に過ぎず、しかも、それは自己実現、自己表現、あるいは自己満足といったほうが適切かもしれませんが、そういったことのためのツールにしかすぎません。ぼくにとって大切なのは、登山や二輪に乗るという行為を通して、その向こう側に見える世界の像を鮮明にして、それを伝えたいということなのです。山や二輪に限らず、旅も読書も、さらに「日本山岳修験学会」なる団体に所属して、いろいろ探求しているのも、ぼくにとってまったく同列のことなのです。
そういったことを今まで理解してもらうのは、とても難しかったのですが、wwwでは、たちまち、大勢の理解者が現れてくれました。そして、ぼくと同じように、周囲からなかなか理解されずにいた人たちも大勢いることを知りました。
2001年までの段階は、同じ感覚を持った人たちの存在を知り、互いにエールを送るところまででしたが、今年からは、必要な部分で力を合わせ、社会に対するインパクトを与える段階にきたと思っています。その第一弾として、昨年から開始した「レイラインハンティング」を独立したサイトとして立ち上げ、これにコラボレーションしてくれる個人、企業のみんなと、面白いことをしていこうと思っています。
この世界は、まだまだ不思議や未知なものに溢れています。また、太古の人たちがあたりまえのように感じていながら、現代のぼくたちが忘れてしまっていることもたくさんあります。例えば、平安京に秘められた恐ろしく周到な結界、日本神話に隠された「大いなるモノ」の存在、世界各地の「土地」が持つ魂や意思...そういったものをwwwを通して、興味を持つみんなと探っていきたいと思っています。ぼくにとって、アウトドアや二輪は、そんな探求のために必要なスキルだったのではないかと、ふと思った年頭でした。
――― uchida
|