アイスランド語の実例
 

最大の日刊紙Morgunblaðiðのオンライン版・2003年6月7日付けより

Námsferð til Japans fyrir bestu ritgerðina

Japönsk stjórnvöld bjóða nú íslenskum ungmennum í annað sinn að þreyta ritgerðasamkeppni og eiga þess kost að komast í tveggja vikna heimsókn til Japans. Var slík samkeppni haldin í byrjun árs og sendu 186 einstaklingar inn ritgerð. Þrjár stúlkur voru valdar úr þeim hópi með viðtölum og fóru þær utan í mars.(以下略)
 

発音(カタカナではかなり無理があります)

ナゥムスフェルズ ティル ヤーパンス フィーリィル ステュ リートゥゲルジナ

ヤーペンスク スティォトゥンベルトゥ ビョウザ ヌー イースレンスキュム ユングメンヌュム イ アンナズ スィン ア スレィタ リートゥゲルザムケヘプニ オ エィガ ス ストゥ ア コーマストゥ イ トゥベッギャ ヒクナ ヘィムソゥクン ティル ヤーパンス。
バール スリーク ムケヘプニ ルディン イ ルユン アゥルス オ センデュ 186 = hundrað áttatíu og sex (ヒュンドラズ アゥフタティーユ オ クス) エィンスタークリンガル ン リートゥゲルズ。
リャゥル ストゥールキュル ボールュ ルダル ウール セィム ホゥピ メズ ズテールュム オ フォゥル サィル ユータン イ ルス。
 

日本語訳(かなり意訳です)

最優秀論文には日本留学

日本政府はアイスランドの若者を対象に、2週間の日本滞在のチャンスが与えられる論文コンテストの第2弾を行う。今年の初めにも同じコンテストがあり、186人が応募し、このうちから面接を経て3人の女の子が選ばれ、3月に旅立った。
 

ウルド・スクルド・ベルダンディー

 実は僕は古アイスランド文学・神話にも、『ああっ女神さまっ』にもまったくうといので、言語学的なことだけ書きます。
 この北欧神話で運命をつかさどる3女神の名前は、古アイスランド語ではUrðr, Skuld, Verðandi、現代アイスランド語ではUrður, Skuld, Verðandiと書き、発音は「ルズル、スキュルト、ルザンディ」です。
 ところで、アイスランド語を始めるとすぐに出てくる基本単語として、語源はドイツ語のwerden、オランダ語のwordenと同じ、verðaという動詞が出てきます。意味もドイツ語やオランダ語と同じで「~になる」、つまり英語で言えばbecomeの意味を表します。さてこの動詞verðaですが、現在分詞はverðandiで、過去形は複数でurðum, urðuð, urðuとなります。というともうだいたいわかりますね。ベルダンディーはbecoming、つまり「現在なりつつあるもの」、すなわち現在をつかさどり、ウルドはbecame、つまり「すでになったもの」、すなわち過去をつかさどる女神というわけです。
 また英語のshall(正確にはshould)に語源的に対応する助動詞としてskuluがありますが、この助動詞は北欧語では「~するつもり」、「~することになっている」、「~しなくてはならない」などの未来の意味で英語よりも広く使われます。これから派生した名詞skuldは、現代ゲルマン語ではいずれも負債や義務を意味するようになっていますが、本来は「来るべきもの・定められたもの」という意味がもとになっていることは明らかです。というわけで未来を表す助動詞から派生したスクルドは未来をつかさどる女神なのです。
 urðurの末尾のrは何なんだ、とかあまり細かいことは気にしないでください。僕も知りません。
 

2003年6月10日更新

 
トップページへ