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「ん、ん…」

ゆっくり、と瞳をあけると、目の前に澄んだ空色の宝石が見えた。見間違いようのない、色。
「…ドイツ、」
思わず頬を緩めると、おはよう、と低い声。
「おはよ。」
腕を伸ばして首を引き寄せると、両頬にキスを一度ずつしてくれた。同じことをし返して、そのむきむきな胸に擦りよる。
当たり前にそれをしてから、はっとしてごめん、と離れた。こっちのドイツにはしないようにしてたのに…!

慌てていると、おかしそうな笑い声。
「何を謝ってるんだ?」
いつものことだろう。さらっと言われて一度瞬く。いつも、の、こと。

ドイツの向こうに、本棚が見えた。…その中に、写真立て、がひとつ。写っているのは、ドイツと俺と、日本。そう、久しぶりに遊んだ時に撮った、…あれ?でも、それは。たしか。…向こうのはず。

「…俺、帰ってきた…?」

思わず呟くと、何だ、どこか旅する夢でも見たか?と言われた。
夢。…そうかも、しれない。

「うん、…すっごく長い夢だった〜…」
ほう、とため息をついて、胸に頭を埋める。そうか。優しい声。頭を撫でる、変わらない大きな手。
なんだか泣きそうになって抱きつくと、抱き寄せてくれた。
「泣くな。ただの夢だろう?」
「…っただのじゃ、な…っ」
「…悪かった、言い直す。…頼むから、夢にまで嫉妬させないでくれ。」
おまえの心を占めているのは俺一人で十分だ。そんな風に言われて、びっくりして顔を上げると赤くなった頬。

「…涙は止まったか?」
「う、ん…」
ならいい。ぼそっと言って離れていこうとしはじめる、大胆なんだか照れ屋なんだかわからない恋人を引き止めて、安心して、俺夢の中でもドイツのことしか考えてなかったよ、と囁いて唇にキスをした。



『君でいっぱい!』End!


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