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いやいやいや、待て待て待て。深呼吸ひとつ。 「…じ、冗談、ですよね…?」 おそるおそる尋ねると、じっとまっすぐに見つめられた。 真剣な瞳に、え、まさか、本当に?と焦ると、彼はゆっくり口を開いて。 「はい。」 ………ええ…っと…? 私は冗談ですよね、って聞いて、その答えがはい、なんだから… 「…冗談なんですか…」 「冗談ですよ。」 そんなに焦った顔しないでください。 くすくす。笑い声に、ひどいです!と怒鳴る。ほんとに心臓止まるかと思ったんだから! 「なんでそんな…。」 「盗み聞きなんてしていたあなたが悪いんですよ。」 あ。やば。ばれてたんだ。 えへへーごめんなさーいと謝れば、はいはい。と優しい苦笑。 …でも、よかった。 本当、だったら、どうしようかと思った。 ああでも、私ってやっぱり欲張りなんだなあ。 彼のそばにいれるだけで十分、とか思ってたつもりだったのに、本心は違ったみたい。 他の誰かより、ずっと、彼に近い存在でいたい。誰にも渡したく、ない。 自分でも気付かなかった独占欲。…恋人でもないのにね。そう思うと少し寂しいけど。 「話は別にあります。」 「は、あ、そっか。はい。」 そういえば、話がありますって言われたんだっけ。さっきので全部吹き飛んでた。 「何ですか?」 首を傾げると、小さく笑う彼。 「あなたの独立が決定しました。」 ………。 「前からずっとあった話だったんですが。やっと決まりまして。」 これであなたも一人前です。そう言われて、ちょっと、考えて。 「…わかりました。」 そう答えると、おや。と意外そうな顔をされた。 「なんですか?反対する理由も、ないじゃないですか。」 にこ。笑えば、そう…ですね。と彼はうなずいて。 …独立、か。彼と一緒にいれないのは寂しくなるけれど。 でも。 ちょうどいい、かもしれない。きっかけは、掴んでおくべきだもの。過ぎていったらチャンスは掴めないから。 よし。そううなずいて、笑った。 手のなかに、いつのまにか現れた冷たい感触。 『鍵のかけら』を手にいれた! 次へ |