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いやいやいや、待て待て待て。深呼吸ひとつ。

「…じ、冗談、ですよね…?」
おそるおそる尋ねると、じっとまっすぐに見つめられた。
真剣な瞳に、え、まさか、本当に?と焦ると、彼はゆっくり口を開いて。


「はい。」
………ええ…っと…?
私は冗談ですよね、って聞いて、その答えがはい、なんだから…

「…冗談なんですか…」
「冗談ですよ。」
そんなに焦った顔しないでください。
くすくす。笑い声に、ひどいです!と怒鳴る。ほんとに心臓止まるかと思ったんだから!
はああ、と深くため息ひとつ。ああもう…

…でも、よかった。
本当、だったら、どうしようかと思った。
ああでも、私ってやっぱり欲張りなんだなあ。
彼のそばにいれるだけで十分、とか思ってたつもりだったのに、本心は違ったみたい。

他の誰かより、ずっと、彼に近い存在でいたい。誰にも渡したく、ない。
自分でも気付かなかった独占欲。…恋人でもないのにね。そう思うと少し寂しいけど。



「話は別にあります。」
「は、あ、そっか。はい。」
そういえば、話がありますって言われたんだっけ。さっきので全部吹き飛んでた。
「何ですか?」
首を傾げると、小さく笑う彼。

「あなたの独立が決定しました。」


………はい?


いつのまにか手の中に、現れた小さな金属の欠片が、床に落ちた。

『鍵のかけら』を手にいれた!


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