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「んん…。」
寝返りをうって、ゆっくり目を、開ける。

ふああ、とあくびを一回。…それから部屋の中を見回す。…私の部屋、だ。オーストリアさんの家にある。見慣れた。
……見慣れた?

………。しばし考えて。あれ、だって、私、縁談、とか。
考えれば考えるほど遠くなっていく記憶。代わりに上がってくるのは、昨日オーストリアさんと交わした会話、とか。二人で聞きにいったコンサート。とか。
…あれ?この感覚って…。

「…まさか……夢、だった、の?」
呟くとなんだか、それがリアルに感じられて、深くため息をついた。
なんだ…夢かあ…。
それにしては長い夢、だった。ついでに疲れた。くたくただ。
ああ、でも。彼が出てくる夢見れたのは、幸せかなあ。

ふふふ。と笑っていると、こんこん、とノックの音。
「ふぇ、はい!」
慌てて答える。変な声が出た。
うあー…と思っていると、くすくす、とドアの外から笑い声。
『おはようございます、ハンガリー。』
うわあオーストリアさん…!今の聞かれた…!!
『朝食ができましたよ。降りてきてください。』
「すぐ準備して行きます!」
叫ぶ勢いで言って、とりあえずベッドから飛び起きた。



とりあえずスピード優先で彼に会ってもいいレベルまで準備して、階段を降りる。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
その笑顔が、見れることがとてもうれしい。なんだかほっとしてしまった。
「今日は遅かったですね?」
「すみません…。なんだか、ずっと夢を見てました。」
長い夢を。


言いながら座る。おいしそうな朝食の用意に、ぐう、とおなかがなった。ああもう正直なんだから!
もう一度すみません、と言うと、いえ。と微笑んだ彼が夢、ですか。と呟いた。
「では、申し訳ないことをしたかもしれませんね。」
「はい?」
なんでですが?首をかしげると、彼は肩をすくめて。
「そんな表情をするんです、きっと、覚めたくない夢、だったんでしょう?」
…そんな表情って、優しい顔で笑ってます。だそうです。うーん…覚めたくない夢、か…。
もうすでに、あまり中身を覚えてはいないんだけれど。
でも。


「…覚めたくない夢なんて、ないです。」
「はい?」
「あなたがいてくれる『現実』に敵う夢なんて、ないです。」
笑って言うと、頬を赤くした彼が、視線をそらして咳払いをした。照れてる。かわいい。



「…ありがとうございます。…私も、同じ気持ちですよ。」
「ありがとうございます。」



『夢よりも望む現実』End!


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