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はっと目が覚めて、瞬いた。深呼吸一回、体を起こす。
…周りを見渡すけれど誰もいない。当たり前、よねえ。
よく知る自分の家。でもどこか、知らない場所のようでもある。どうして?
「…あれ…?」
記憶を辿ろうとすると、もう少し、で届く前に逃げられて曖昧にしか思い出せなくなっていく。知ってる。この感覚、は。

「……夢?」
思わず呟いて瞬く。夢を見ていた、気がする…どんな?
ベッドにもう一度体を沈めて考えるけれど、ぼんやりとした記憶しか残っていない。詳しく思い出そうとすると逃げられる。

「…不思議な夢だった気がするけど…。」
呟いて起きあがる。まあ思い出せないものは仕方ない。とりあえず顔を洗ってご飯を食べて、そうだ、今日はケーキを焼いてみよう。うまくできたら。
「…オーストリアさんのとこ持って行こうかな。」
うまくできたらだけど。さあ何回やり直すことになるかしら。小さく苦笑。
それでも、甘くて苦しいこの気持ちのために、がんばりたい。諦めるのは、嫌。まだオーストリアさんの隣にいたいから。

「よし!がんばっちゃおう!」
んー、と伸びをして、勢いよく体を起こした。


『明日の甘い香り』End!


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