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「ん、ん…。」
眉を寄せて、ゆっくりと目を開けると、そこには、何故かひきつった顔をしたオーストリアさんのどあっぷ。
「……おーすとりあさん………?」
「……おはようございます。」
「おはよーござい、……ます……!?」

うわあ!と思わず声を上げる。寝ぼけ頭が一気に覚醒した。
何でオーストリアさんがいるの!!
「す、すみません…ただ起こす、だけのつもり、だったんですが…。」
そう言いながら、彼は体を起こして。…顔が赤い。……ん?ただ起こすだけのつもり、だった、って、……何?

「…え、と?」
何を。聞きかけて思い出す。
起きて、すぐ。感じた、感触。


唇に。


「………っ!!!」
声も出せずに悲鳴をあげた。
「す、すみません!」
「…いやあの、別に…。」
朝から心臓に悪いけど。それだけ、だし。うん。
ちゃんと覚えてないのがすごく残念とか、それくらい、……ああでもやっぱりもったいないかも!!
「…では、朝食の時間なので。」
「へ、はい!はい!すぐ起きます、はい!」
慌てて返事をしたら、下で待ってます、と彼は歩き出して。

「ああ、ハンガリー。」
「はい?」
「何かいい夢を、見ていたんですか?」
「へ?」
「いえ。笑っていたので。」

寝てるとき、とても幸せそうな顔をしていたと、そう言われて思い出す。
…長い夢。すでにもう、夢の中のできごとで、あまり詳しくは思い出せないけれど、でも。
つらかったりくるしかったり楽しかったり。…まるでもう一回人生歩き直した、みたいな。
「ええ、いい夢。でしたよ。」
笑ってみせると、じゃあ余計にすみません。と謝られて、何がですか?と首を傾げた。

「起こしてしまって…。」
「……いえ。起こしてもらえて、よかったです。」
「?いい夢、だったんでしょう?」
「ひみつでーす。」


王子様のキスで目覚めるなんて、お姫様みたいな経験できたから、よかったんです。なあんて。
言ったら彼は、きっと、困り果ててしまうだろうから。
えへへ。と笑って、それだけにすることにした。


『おとぎばなしみたいな』End!


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