「はいシーくんもうちょいかがんでー。…うん、それキープね、アリシアは帽子さわる振りして顔隠さない!」 声を張り上げながら、ファインダーをのぞく。 シーくんは白もこフードのついたダッフルコート。耳はついてないけど、テーマは白うさぎ。金色の髪がほとんど見えないのはちょっとめったいないかなあと思うけど、フードのかわいさがハンパないので問題なし。そして、大きな赤い時計を持ってもらってる。うん。かわいい! しかしまあ、シーくんはかわいいまんまでよかった!うちの男共みんなすくすく育っちゃってかわいくないったらありゃしない。まあリリーは別格だけどどっちかというとかっこいいし、ルキーノもかわいいけど、でもこうかわいい〜!って頭撫で撫でしたいタイプじゃなくて、ちょっと遠くから見てたい美人さんタイプだし。 だからこーいうタイプは貴重なのよねえ。うんうん。緑の目も大きいままで! 対して、妹のアリシアは、美人で、どっちかといえばかっこいい。すらりと長い手足と、強い意思を持ったまなざし。けれど、どこかあどけない、かわいらしい顔つき。彼女はなにも言わないけど、女の子にももててるみたいだし。やっぱ似合うなあ、黒スーツ。白の開襟シャツを着せて、赤いスカーフ巻いて、ちょっとななめに黒のシルクハット。うん、超かっこいい帽子屋のできあがり! 長い金髪は、赤いリボンで後ろでくくってもらっているから、前からは見えないけど。それはそれでGOOD!紫の瞳が、す、と細められるのがちょっと、私でもどきっとしちゃう。驚かしたりして、きょとんとした表情のときはかわいいーと思うんだけど。 「ベアトリクスー、ちょい、左、ああ、いきすぎ、そこ!ジャストそこ!ルキーノ…あくび…いや、目が潤んでオッケー!そのまんま視線外!こっち向けない!レジーナー、もう1ポーズちょうだい!」 ど真ん中に座らせたのは、白いTシャツの上に、青いワンピース姿のベアトリクス。めったにはかないミニのワンピースに、照れてるなあ、ごめんね、ベアトリクス。でも絶対似合うって思ったとおりに似合うから!お兄ちゃんに言うのはやめてね!私怒られちゃう! 長い髪はそのまま流して、ワンピースと同じ色の、カチューシャ。そして、胸に抱えた、赤と黒と、白の、本。ああ、眼鏡外してるからって眉寄せないでようもったいない!彼女はもちろん、アリスだ。茶色の髪に緑の瞳だから、ちょっとイメージ違うかもしれないけど、周りが全員金髪だからなあ。一人別世界、な感じは出てると思う。ちっちゃいし。かわいいし。一番小さくて年下、でもやっぱり、大人びた表情をするから、美しく、見えるし。 ベアトリクスの肩に手を置いているのはルキーノだ。紫のシャツに、黒いパンツ。紫はやりすぎたかなあと不安だったんだけど、まあ似合う似合う。こういうとき美人なのって便利よね。やる気ないのが全面に出てるけど、テーマはチェシャ猫だから問題なし! 男子勢の中では高い方の身長。けれど、美人な顔立ちのせいか、大きなオリーブ色の瞳のせいか、そのガキっぽい性格のせいか、あまり普段は大きく見えないのだが。黙ってりゃ問題ないのよ、うん。 よく焼けた肌の上に、紫がエロチックな印象を与える。チョコレート色の髪もね、いつもそうやってわざと乱してるならいいのに。寝癖丸出しじゃかっこわるいわよ!まったく…。 その後ろで、足を組んで椅子に座っているのは、レジーナだ。椅子の肘掛けに、肘をついて、手をあごに添えて。……なんかもう、女王様だなあ。すっごいなあ。 髪は彼女のお母さんとおそろいのセミロング。ちょっとレジーナの方が長いかな?それくらい。瞳は、柔らかい緑。優しい色なのに、なんか、眠たげで胡乱げで、世界を見下しているように見える。いいなあ。綺麗ね。ほんと。 黒と赤のゴシックなドレス。ティアラも似合う似合う!ああもうこれ以上無いくらい理想って感じ!ああ、髪と目の色は惜しいかなあ…黒の方が…でもこれもあり! 「はい全員もうちょいだからがんばる!ほらルキーノ疲れたって顔しない!」 「イザベルー、緊張しすぎだって、もうちょい笑って、ほらにこーって……いやちょっと待て!そのままでいい!いいから!時計見て!そうそう、おっけー!困った表情がナイス!」 まるでどきどきとデート相手を待ってるみたいな!よし!シャッターを切る。あ、あ!上の方見上げるのもいい!いい!時計見上げてる、みたいな! イザベルは本当に美人さんになった!焦げ茶色の髪、やっぱ伸ばしてよかったのになー、短くないと仕事の邪魔だからって切っちゃったのよねー。もったいなあい!瞳はほんとに綺麗なオリーブ色だし。きらきらしてるし。灰色のコートと深緑タータンチェックのミニスカ。ミニスカ嫌いだからやだって言ってたけど、似合うんだもん着せないと!ねえ。ああ、美人なのになあ、ほんとに美人なのに。本人は全然気付いてないみたいだけど。こんなに綺麗なのに。どうしてまだ私なんかって言うんだか。 「これいける!表紙いける!え、やだ?却下!ああもうイザベルはそろそろ自分に自信持ちなさいよもったいない!!」 「リリー、そのまま目線外して。おっけー、もう1ポーズ。…あ、それダメ。まっすぐこっち見ちゃだめ。せっかく綺麗にポニーテールにしたんだから!」 リリーと写真撮影するのはとっても楽だ。だって考えてること、伝わるし。感じるし。何回も付き合ってもらってるから慣れてるし。それに、リリー美人だから、撮りがいあるし! パパとママ両方譲りの金色の髪と、青い大きな瞳。長い髪をリボンでまとめあげると、後ろ姿が昔のパパにそっくりらしくて、ママはたまに懐かしそうな顔をしてる。 すらりと長い手足。デニムと、黒のブーツ、細身のジャケットがよく似合う。我が弟ながら、かっこいいわねえ…あれ、これって、おんなじ顔してる私の自画自賛にもなるのかしら?うーん…でもリリーはリリーよね。うん。 「おっけーおっけー!じゃあリリー、次ワンピースねー。女の子メイクに直してきて!」 「ガヴィ、手、ポケットに入れてみて、片手でいいから。…それで、ほら、恋人が来たのを見つけた!」 途端に華やぐ表情。思わずどきりとしてしまうそれに冷静にシャッターを切る。ったくもう、相変わらず女の子泣かせなんだから…。 ガヴィの見目のよさは、確かに昔からだ。金髪に青い瞳。身長の低い小さな少年は、名前の指すとおり天使にしか見えなかった。 それが、成長期を迎え、ぐんぐん背が伸びて…今では、絶世の美男子、だ。彼的には、父さんみたいになりたかったな、らしいが、あそこまでむきむきにならなくて逆によかったらしい。清潔な印象を与える、短い金髪と、とろりと甘い青い瞳。精悍な顔立ちと、適度な筋肉のついた体。おまけに聡明で、根っからのフェミニスト!天は二物を与えずってどこが?という感じのこいつは……まあすさまじくモテる。 今だって、シンプルな黒のハイネックと、ロングコートを組み合わせた、だけ。 ただそれだけ、なのに、ファインダー越しにでも、ぞっとしてしまうくらい、きまっている。 でもまあ、ちっちゃいころから知ってる私にとっては弟なんだけど。思って、肩をすくめて。 「さあてもう一枚行こうか!つぎはー…後ろ向いて後ろ!」 「ケイ、次髪の毛かきあげてー…あ、そっちだめ逆の手逆の手、…そう、おっけー。」 ふむ。ケイのそろった髪を乱すだけで、やっぱりイメージ、かわるなあ。 迷彩柄のダウンジャケットに、デニム。…普段着慣れてないからか、そわそわしてるのが難点だけど、そういう格好も十分似合う。着ればいいのに。…無理矢理着せようとしたら逃げるかしら。 すっとした顔立ち。黒い、揃えられた髪。ケイは、女の子って言っても通じると思う。黙っていれば。 けれど、その体格はやっぱり年々男らしくなっていて。リリーみたいに女の子の格好がとても似合う〜とはいかないんだけど…でも、別の意味で似合いそうだけど。…抵抗するだろうしなあ。意外と力持ちだったりするのよねー。ううむ。 まあそういう悪巧みは後でリリーとかに協力してもらってするとして。 今はこの撮影に集中しなくちゃ。 「今度は、ダウンの前開いて。…そう開くの!肌見えるとか当たり前でしょ見せてんだから!」 「マックス、ソファ座って足組んで。…偉そうにしないの、彼女の家にいるんだから優しく!」 ぶつぶつ文句言わないのよ、ったく! マックスったら、髪型までこっちの指定に従わないのよ!ったくもう…いつか丸坊主にしてやる。ああでも、それはあまりにもったいないか。こいつの髪はきれいだ。灰色がかった茶色。…ならまあ仕方ないか。 めんどくさいだのなんだの言いながら、ポーズ指定に従ってくれてるのも事実だし。次は。そう問うように紫の瞳がまっすぐにこっちを見る。 チャコールグレーのVネックロングTシャツから、鎖骨が見える。下はシンプルなデニムだ。あんまり着飾らない方が、似合う。あ、今髪かきあげたのよかった。シャッター間に合わなかった! 「今のもっかい!は?何したっけって無意識!?もー!」 「マリア、お盆持ってきてテーブルに置くー…はいよし!」 マリアもほんとに撮りがいがある。きらきら輝く明るい茶色の長い髪。琥珀みたいな瞳。元がよすぎるから、何着せたって似合うしかわいい。それに、笑顔が完璧なのだ!笑ってーって言ったらすぐ笑ってくれるし。何もしてなくてもかわいいのに、その笑顔浮かべられたらもう! その上性格も完璧、だ。優しいし心配りできるし。ちょっと天然さんだけど。だからか、声かけられる回数がかなり多いらしい。…まあ本人の天然でのらりくらりと回避か、鉄壁の弟ついてるから悪い虫はついてないみたいだけど。 こうやって何回か撮らせてもらってるけど、今日はその中でも会心の出来。白のタートルネックに、赤のミニスカート。チェックのニーハイで絶対領域つき!こんな彼女家にいたら萌え死にそうだなあとしみじみ思う。にこ、とかわいい笑顔。 「あー、その顔いいなあ!よし、おっけー!じゃあマリアこれで終わりで!おつかれさま!」 「エリー、恥ずかしがってないでこっち向いてよー、ね?」 ちょっと露出度高い服着せたらこうなんだから、もー…外見に反して、彼女は本当に奥ゆかしい大和撫子だ。 だって普通じゃん、アーガイルのニットのワンピース。確かにえりぐり広くて肩まで見えちゃってるけど、確かに下になんにも着せてないけど、ミニ丈だけど、普通だよ。リリーだって着るし。(さすがに足の太さが目立つから、レギンスははくけど。)なのに何でそんな恥ずかしがるかなあ。 クッション抱えて顔埋めたってかわいいだけだってー…。エリ以外とちっちゃいし。こう、きゅん、とくる感じ。金髪が、黒いクッションに広がる。うん。綺麗。でも、そのエメラルドの瞳も撮りたいんだけどなー。顔上げてくれないかなー。 「エリー、エリー、おいしいクッキーあるんだけどなー、お茶うけにぴったりだと思うんだけどなー……よしそのまま顔上げといて!いい子!」 「サラ、サラー?こっちむいてー背中向けてないでさあ、ほらー。…そんな嫌なの?撮られるの…。」 苦笑して、背中を向けるサラを眺める。サラの二番お気にのカメラを彼女に向けながら、苦笑。あーあ。リリーのばか。だって。…本当に嫌いなんだよなあ、写真撮られるの。 こっち向いてー。言うと、彼女が首を横に振るのに合わせて、ロングパーカーの紐がゆらゆら揺れた。柔らかいオレンジのそれと、デニム生地のミニスカが合う。似合ってるのに。かわいいのに。美人なのに。私の妹がかわいくないわけないのに! こうなったら耐久戦、とその金色の髪をじっと見つめる。しばらくすると、うかがうようにこっちを見る、最近お気に入りの赤いフレームの伊達眼鏡と、その奥の紫。 「はい撮りましたー。え?消せって?やだー。これもお仕事です!」 戻る |