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「スペイン。」
「何?」
「手をつないでいいとは言ったが腰抱いていいとは言ってねーぞこのやろー!」
「えーあかんのー?」
ええやん。デートやねんから。
そう言う距離が近いんだよ馬鹿!ああもうそんな甘い声出すな!
赤くなった顔を逸らすと、彼が照れてる、と笑った。

デートしよう。そう誘ってきたのはスペインだ。なあ、デートせーへん?次の土曜日。子供達、イタちゃんち泊まりやろ?
なあロマーノええやろ?よしどこいこか!うーん、俺久しぶりにロマーノんちあたり行きたいなあ。
と、俺の意見はどこ行った!くらいの勢いで、今日のデート、が決まってしまったわけで。

別に嫌なわけじゃない。二人ででかけるのは。ただ。
「ロマーノ。」
名前を呼ぶその声が、父親、モードのものじゃないから、かなり照れる勢いで甘い、というのが、照れて仕方ないだけだ。
「お昼は?パスタ?ピッツァ?」
「…パスタ。そっちじゃない、こっち。」
強制的に方向転換すれば、はいはい、店のチョイスはロマーノに任せますーとついてくるスペイン。
なんか、くすくす笑っているから、なんだよ、とにらんだら、いや?ととても優しいオリーブの瞳が見返してきて、少したじろいだ。

「幸せやなあって。」
ロマーノがこうやって、そばにいてくれるだけで。

ああ、ちくしょー、その口縫い付けて二度としゃべれないようにしてやりたい!
そう思いながら、真っ赤に染まった顔をトマトみたい、と笑う馬鹿に頭突きしてやった。



一番奥までつながったままで、ちゅ、ちゅ、と、神聖なものに触れるようなキスを落とす。
「ロマーノ。」
呼べば、とろんとした瞳がこちらを見る。
夜闇の中でも輝く、アンバー。
「…ロマーノ、灯りつけたあかん?」
「…嫌、に、決まってんだろ…!」
「えーやって。」
今絶対絶景やのに、見えへんのもったいないと思わへん?
言ったら、べっちんと背中叩かれた。痛い。

「ロマーノひどい…。」
「ひどいのはどっちだ馬鹿!こんのKY!」
「えー。そんなことないと思うんやけど…。」
だいぶましになったと思う。昔に比べれば、喧嘩もちょっとは減ったし。
相手が言いたいことも、ちょっとはわかるようになった。…まあ。相手は唯一。ロマーノに限り、なんだけど。

「どこがだ馬鹿!だいたいおまえは昔っから、あ、ちょ、こら、」
「んーロマーノ、話後でええ?」
言いながら、ぐ、と腰を押し付ける。このへん、が弱い、っと。
「あっ!ん、も、っのやろ…っ!」
あとでおぼえてろよ、って。ロマーノが言うのは、ええよってことやん。小さく笑って、その肌にキスマークをつける。
その肌の色は、知っている。昔から変わらない。子供のころから、ずっと。
触り心地のいい肌。最初は頬だけだと思っていた。それが、本当は全身そうなのだと、知ったのはかなり後になってから。
でもやっぱりこの、頬の感触は好きだ。するり。撫でると、涙目が見上げてくる。

「…スペイン、」
名前を呼ぶその口を、塞ぐ。そうしないと、ダメだ。きっと。耐えられない。
甘く呼ぶその声だけで、俺を虜にしてしまうのだから、ロマーノは、ずるい。
「ん、んん、んあ…っ!」
「ロマーノ。」
愛してる。そう囁いて、その瞬間に、中を締め付けてイった彼女と同時に、一番近いところで、達した。

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